【完結】秘め事

あい

文字の大きさ
上 下
16 / 26

じゅうご

しおりを挟む
いつもは待ち遠しく思うランチの時間が。
今日ほど来ないで欲しいと願ったことはない。
それでも時は無情にも過ぎていき。
12時が来てしまった。
皆それぞれお昼休憩に入る。
ちらっと里中君を見るといつも通り今日も社食っぽい。

「加藤さん。」
「はい。」

私がまごまごしていると部長からお声がかかった。

「お昼終わってからでいいんだけどこれお願いしていいかな?」
「分かりました!」

部長ありがとうございます!
すぐやります!
お昼なんて私行かなくていいんです!
庄司さんの連絡先は知らないから早速智子にランチお断りのメールを。
きっとこれは一番正解なパターンだ。
お昼休憩終了10分前に頂いた仕事が終わり。
急いでパンを一つ食べる。
お腹は満たされないけど。
上手くやってのけてほっとした感覚はある。

「彩音ちゃん。」
「はい。」

ほっとしていたら橋本さんから声をかけられた。

「これ庄司から。」
「え?」
「今日ランチ一緒に行けなかったから。そこのお土産だって。」
「えっ。」
「上手くいってるみたいだね。」
「そ、そんなんじゃないです!」
「そんな照れなくても。」
「いえ。あの。」

庄司さんからお土産のクッキーを頂いてしまった。
お腹すいているからありがたいけど。
もらっちゃって良かったのかなぁ。
ランチ行けなくてほっとしてしまっていた自分がすごく嫌になる。

「お疲れ様でした。」
「お疲れ様~。」

1日が重かった。

「彩音。」
「ん?」
「もういいよね。」
「え?」

そう言って里中君が手をつないできた。
確かに会社から数駅離れた電車の中。
知り合いはほとんどいないと思う。
改めて手をつなぐとなると恥ずかしい。
恥ずかしくて顔があげられなくてずっとつないでいる手を見つめてしまう。

「あ。降りなきゃ。」

駅についてドアが開いて降りようとしたけど。
つないだ手は力強くて。離してくれる気配が全くない。

「さ、里中君?あ、ドア閉まっちゃったじゃん。」
「たまには見送って。」
「え?」
「三つ先の駅だから。」
「分かった。」

いつも先に降りるのは私。
別れ際は名残惜しいもの。
三つ先の駅まで後少しこうしていられるのも悪くないし。
たまには私が見送ろう。

「この駅初めて降りた。」
「じゃ~初めて俺んちにも来る?」
「え!?」
「ふっ。そんなに驚くこと?」
「え、だ、だって。」
「心の準備がとかやめてよ?」
「えっ。」
「行こう。」

冗談?それとも本気?
心の準備なんて…全然出来てない。
っていうか待って。
そういうことなの?

「ど~ぞ。」
「お邪魔します。」
「その辺適当に座ってて。」
「あ、うん。失礼します。」

初めて入る里中君の部屋。
整ってる。

「ん?なんかいい匂い!」
「昨日の残りで悪いけど。」
「わぁ~美味しそう!ビーフシチュー?」
「そう。」
「いっただっきま~す!ん!美味しい!」
「良かった!」
「すごいねぇ~ちゃんと自炊してるんだね!」
「毎日じゃないけど。」
「美味し~!」
「ふっ。お昼食べ損ねてたからお腹すいてるかと思って。」
「ありがとう!」
「ちょっと部屋着に着替えていい?」
「あ、うん。」

ネクタイをほどく首筋と手。
ワイシャツのボタンをはずす手。
だ、ダメだ。
意識し過ぎて一つ一つのしぐさにいちいちドキドキしてしまう。

「見過ぎ。」
「えっ。み、見てない見てない!食べてるの!」
「可愛い。」

そう言ってはだけた上半身のまま近づいてきてキスをする。

「い、今食べてるのにぃ。」
「おいしい。」
「ちゅっ。ちゅ。」

ビーフシチューと里中君のキスが。
止まらない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【完結】お願い その手で私を

あい
恋愛
どこのパーツよりも手が大好き。 そんな手フェチの奈美が恋をした相手はもちろん。 理想的な手の持ち主。 手から始まり、過去と未来との恋を結ぶ物語になっています。 少女漫画好きの初心者が描いている漫画風小説です。 温かく見守って頂けると嬉しいです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...