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じゅういち
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「加藤さん。これ頼まれてた資料です。」
「え?」
里中君に資料なんて頼んだ覚えないんだけど。
ん?付箋。
“どうしたの?具合悪い?”
そういうことか。
社内では付き合っていることを隠したいと言った。
こんな私と付き合ってるなんて里中君に申し訳ないし。
何より5個も下の子と付き合ってるなんて。
言えない。
それでひっそりと付箋でメッセージ。
体調は悪くない。
ただ魚が…ひっかかっているだけ。
いや。やめよう。
私はそういうしおらしいタイプじゃなかった。
いつでもどんな時でもそつなくこなす。
「部長チェックお願いします!」
「お~さすが彩音ちゃん仕事早いね!オッケ! 」
「ありがとうございます。」
うん。
これでこそ私だ。
もうこの部署に来てから偽っていた姿もだいぶほころびもでてきてしまっている。
やっぱり私は可愛げがある女の子よりそつない女なんだ。
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様~。」
よし。今日の分のお仕事終了。
お昼食べ損ねたから早く帰ってご飯食べようと少し急ぎ足で帰路につく。
「どこかいくの?」
後から追いかけてきた里中君に捕まった。
「別にどこもいかないよ。」
「なんか急ぎみたいだったから。」
「そんなことないよ。」
「じゃぁ一緒にご飯でも。」
どうしよう。
お腹はすいているけど里中君と一緒に食べる気持ちになれない。
「付箋の返事なかったけど。体調は?」
「…。今日は家帰って早めに休むね。お疲れ様。」
「待って。」
「なに?」
「具合よくないなら心配だし送る。」
「大丈夫。」
「けど。」
「ホントに大丈夫だから!」
なんでこんなにもやもやしているのか。
なんでこんなに早く離れたいのか。
自分でもよくわからない。
「ちょっと。ついてこないでよ。」
「…。」
「大丈夫だって言ってるでしょ?」
「俺が大丈夫じゃない。」
「なにそれ。」
そのまま無言でついてくる。
「無事ついたので。お疲れ様。」
「家入らせて。」
「え?あ、今日はちょっと散らかってて。」
「玄関だけでもいいから。」
「でも。…わかった。」
ずるい。
真剣なその目に見つめられると。
逆らえない。
“バタン”
ドアが閉まった瞬間に始まるキス。
こうなること分かってた。
「ちゅ。ちゅっ。」
「ん。」
何も言わずに。
優しく強く攻め込んでくる。
そして。
「あっ。」
持っていかれる。
「彩音。」
「…。」
座りこんでうつむく私を覗き込みながら。
「好き。」
その一言で急に熱いものが込み上げてくる。
全身が火照ってるのがわかる。
「彩音。」
その声で名前をよばれるだけで。
「ぐぅ~。」
「ん?」
「…お腹すいた。」
「あは。なんだよそれ。」
「だって…。家に何もないから。やっぱり外に食べに行こう。」
良かった。
途中で途切れて。
あのままじゃきっと色々溢れすぎてしまってた。
28歳。年上の女には言葉には出来ない思いがたくさんあるのです。
「え?」
里中君に資料なんて頼んだ覚えないんだけど。
ん?付箋。
“どうしたの?具合悪い?”
そういうことか。
社内では付き合っていることを隠したいと言った。
こんな私と付き合ってるなんて里中君に申し訳ないし。
何より5個も下の子と付き合ってるなんて。
言えない。
それでひっそりと付箋でメッセージ。
体調は悪くない。
ただ魚が…ひっかかっているだけ。
いや。やめよう。
私はそういうしおらしいタイプじゃなかった。
いつでもどんな時でもそつなくこなす。
「部長チェックお願いします!」
「お~さすが彩音ちゃん仕事早いね!オッケ! 」
「ありがとうございます。」
うん。
これでこそ私だ。
もうこの部署に来てから偽っていた姿もだいぶほころびもでてきてしまっている。
やっぱり私は可愛げがある女の子よりそつない女なんだ。
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様~。」
よし。今日の分のお仕事終了。
お昼食べ損ねたから早く帰ってご飯食べようと少し急ぎ足で帰路につく。
「どこかいくの?」
後から追いかけてきた里中君に捕まった。
「別にどこもいかないよ。」
「なんか急ぎみたいだったから。」
「そんなことないよ。」
「じゃぁ一緒にご飯でも。」
どうしよう。
お腹はすいているけど里中君と一緒に食べる気持ちになれない。
「付箋の返事なかったけど。体調は?」
「…。今日は家帰って早めに休むね。お疲れ様。」
「待って。」
「なに?」
「具合よくないなら心配だし送る。」
「大丈夫。」
「けど。」
「ホントに大丈夫だから!」
なんでこんなにもやもやしているのか。
なんでこんなに早く離れたいのか。
自分でもよくわからない。
「ちょっと。ついてこないでよ。」
「…。」
「大丈夫だって言ってるでしょ?」
「俺が大丈夫じゃない。」
「なにそれ。」
そのまま無言でついてくる。
「無事ついたので。お疲れ様。」
「家入らせて。」
「え?あ、今日はちょっと散らかってて。」
「玄関だけでもいいから。」
「でも。…わかった。」
ずるい。
真剣なその目に見つめられると。
逆らえない。
“バタン”
ドアが閉まった瞬間に始まるキス。
こうなること分かってた。
「ちゅ。ちゅっ。」
「ん。」
何も言わずに。
優しく強く攻め込んでくる。
そして。
「あっ。」
持っていかれる。
「彩音。」
「…。」
座りこんでうつむく私を覗き込みながら。
「好き。」
その一言で急に熱いものが込み上げてくる。
全身が火照ってるのがわかる。
「彩音。」
その声で名前をよばれるだけで。
「ぐぅ~。」
「ん?」
「…お腹すいた。」
「あは。なんだよそれ。」
「だって…。家に何もないから。やっぱり外に食べに行こう。」
良かった。
途中で途切れて。
あのままじゃきっと色々溢れすぎてしまってた。
28歳。年上の女には言葉には出来ない思いがたくさんあるのです。
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