【完結】秘め事

きゅう

はい。
ってなぜあそこでYESと言ってしまったのか。
良かったのかなぁ。
ホントに良かったのかなぁ…。

確かに里中君が真剣に気持ちを伝えてくれているのは伝わったけど。
嬉しかったけど。
恋愛とかお付き合いにだいぶブランクが有りすぎて不安でしかない。

駅で待ち合わせして一緒に会社に行ったり帰ったり。
たまに一緒にランチしたり。
休みの日に会ったり会わなかったり。

ん？なんかこれ今までの生活とほとんど変わってなくない？
むしろ付き合う前の方が色々あったような…。
キスだってあれ以来してないし。

「と、友達の話なんだけどね。釣った魚にエサをやらないタイプなのかも。」
「え？」
「思いの外釣れちゃったけどもういいや的な。」
「その子考えすぎなんじゃない？」
「そうなのかなぁ。」
どんなに考えてもモヤモヤが消えないから。
思いきって智子に友達の相談として聞いてみたけど。
考えすぎなのかなぁ？
だって前まではあんなに困るぐらい求めて来てたのに…。
智子みたいに恋愛上級者になりたい。
私には明らかにスキルが足りなさすぎる。


お休みの日のたまにのデート。
スーツ姿を見慣れていると。
私服姿を見るだけで新鮮。
そんなことを思ってドキドキしているのは私だけ？

「あ。ごめんちょっと電話。」

今表示に美月って出てた。
美月って大学の後輩の美月ちゃんだよね？
なんで電話？しかも遠くで話してる。
私に聞かれたくないようなこと？
今付き合っているのは。彼女は私でいいんだよね？
やっぱりただの先輩後輩じゃなかったのかな。
あの時。初めて二人と会った日。確かに親密さを感じた。
二人の間には先輩後輩以上の何かがあるのかもしれない。
せっかくのお休みの日のデートなのに。
心がざわざわする。

「ごめんね。なんの話してたっけ？」
「そろそろ行こっか！」
「え？」
「明日もまたお仕事だし。」
「彩音さん？」
「そうだ。仕事少し持ち帰ってたの忘れてた。やらなきゃ！」
「…。手伝おうか？」
「えっ。あ～少しだけだし大丈夫！」
「ホント演技下手。」
「え？」
「持ち帰りの仕事なんてないでしょ。」
「…。」
「何か言いたいことあるなら言って。」
「…。」
「ずっと何かありそうなのになんも言わないから。」
「…。釣った魚には。」
「ん？」
「さ、魚釣り好き？」
「へ？」
「今度行ってみたいなって！」
「別にいいけど。」
「じゃ～いいとこあるか調べておくね！じゃ～また明日！」

危ない危ない。
私今何言いかけてた！？