【完結】お願い その手で私を

あい

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思わずつかんだ腕

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車を運転する手がステキ過ぎて見とれてしまう。
あっちにいた時は車生活だったからって言ってたけど。
さすがなスムーズな運転。

「送ってくれてありがとう。」
「すみません早く帰ることになっちゃって。」
「ううん。」

結局何も聞けないまま着いちゃった。
聞いて欲しくなさそうな。
聞かれたくないようなそんな雰囲気だったから。
車の中では他愛もない話をしてたけど。

「荷物どうぞ。」
「ありがとう。」

車のドアを開けて荷物を手渡される。
待って!
このまま行かないで!
思わず腕をつかんでしまった。

「奈美さん?」
「ねぇ。拓海くん。」
「はい。」
「…。今度は普通に旅行行きたいね!」
「…そうですね!」
「じゃ~またね!」

やっぱり聞けなかった。
多分お家のことだとは思うけど。
前に一度お祖父様とお父様のことを聞いたきり拓海くんの方から話そうとしないから。
何かあるのかなぁとは思うけど。



「そりゃ~付き合ってても秘密の一つや二つあるんじゃない?」
「そういうものかなぁ?」

東京に帰ってきてから。
どうしてもこのもやもやが晴れなくて。
さっちゃんにお話を聞いてもらってます。

「奈美はないの?」
「え?私はないかなぁ。そんな秘密にするようなことなんて。」
「えぇ~じゃ~あれは?手フェチ!」
「ちょ、ちょっと!さっちゃん声大きい!」

お洒落なカフェには似つかわしくない単語を!

「九条くん?紺野くん?拓海くんは知ってるの?」
「ま、まさか!」
「ほら!奈美にだって秘密あるじゃない!」
「そ、そりゃ~そうだけどぉ。」

そうなんだけど。
なんか拓海くんが辛そうだし。
話してくれたらなって。
力になれたらなって思うんだもの。

「そんなに気になるなら今から呼び出して聞いてみたら?」
「え!」
「直接聞くしかないでしよ~。 」
「でももしかしたらまだお家の人と話してるかもだし。」
「うじうじしてないで行動あるのみ!はい!電話!」
「う、うん。」

さすがさっちゃん行動派。
でも本当にかけちゃって大丈夫だったかなぁ?
なかなか出ないなぁ。
お取り込み中かもだからもう切った方がいいかなぁ?

「はい。」
「えっ。」

あれ?なんで?
女の人の声。

「もしもし?もしもし?」
「あ。えっと。あの。」

どういうこと?
拓海くんの携帯だよね?
この女の人は誰?

「奈美どうしたの?」
「女の人が。」
「えっ!?」
「もしもし?」
「あの。拓海くんの携帯では?」
「そうですけど。」
「た、拓海くんは?」
「今ここにはいません。」
「…もしかしてゆかりちゃん?」
「そうです。」
「なんでゆかりちゃんが?」
「今一緒に拓海のご実家に来てるの。」
「え!?…なんで?」
「今後についてのお話をしていて。」

今後について?
どういうこと?

「あ。お父様。じゃ。切るわね!」
「…。」
「奈美?」
「…。」
「ゆかりちゃんって?電話に出た女の人知ってるの?」
「…。さっちゃん…。」

状況が全然分からない。
でも。
今拓海くんはゆかりちゃんとご実家にいて。
今後のことを話してるって。
それって。

「大丈夫?」
「う…。うっ。」

涙が止まらない。
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