【完結】お願い その手で私を

あい

文字の大きさ
上 下
36 / 48

手作りの栞

しおりを挟む
「今日うち来ませんか?」

久しぶりに紺野君に誘われて。
久しぶりに紺野君のお家に来て。
二人でご飯を作りながら紺野君の手を眺める。
やっぱりいい!
思わずにやけてしまう。

「ん?なんですか?」
「な、なんでもない!完成だね!」
「運びますね!」
「ありがとう。」

はぁ~運ぶときの手がまたステキ。やっぱり力が少し入ってる時が最高!

「今日もお疲れ様!」
「お疲れ様でした。」
「いただきまぁす!」
「いただきます。」
「ん~!美味しい!」

お仕事終わりにこうして一緒に過ごせるってなんだか幸せ。
ご飯食べてソファーで隣に座ってゆっくりまったりして。

「久しぶりにご飯一緒に作ったね!」
「そうですね。」
「自炊はしてた?」
「ちょこちょこしてました。」
「偉い偉い!」
「大したものは作れませんけど。」
「紺野君はなんでもできてホントすごいよね!」
「そうですか?」
「うん!この前だってコピー機直してくれたし!」
「あれはちょっと紙がつまってただけですから。」
「お取引先との接待のお店選びも!すっごく喜んでもらえてたし!」
「たまたまですよ~。」
「ううん!紺野君はすごいよ!」
「…。」
「ん?もしかして照れてる!?」
「あ。いや。」
「あは!かわい~!」
「も~やめてください!」
「あはは!」

なんか照れてる紺野君ってレア?
かわいい!

「な、奈美さんの方がすごいじゃないですか!」
「え~私なんてただの凡人だよ。」
「今日皆が苦戦してた案件成功させてたじゃないですか。」
「あれは皆のバックアップがあったからだし。」
「教育実習の最終日にあんなに皆から手紙もらう先生いないでしょ~。」
「えっ?」
「受け持ちのクラスじゃなかったけど知ってます。花束と色紙と沢山の手紙。放課後も教室で沢山の生徒に囲まれて。最後まで涙笑顔で。」
「…。」
「俺はフラれちゃってたから。なんだか気まずくてただただ遠くからみてることしかできなかったですけど。」
「…?」
「なんですか?」
「あ。いや。ちょっと待ってて。」
「ん?」
「これ。」
「…。」

手帳に挟んでずっと使ってた押し花の栞。

「教育実習最後の日。皆と教室でお別れした後実習室に戻ったらこれが机に置かれてて。」
「…。」
「カラスノエンドウだったから。もしかしたら九条君からかなぁなんて思ってたんだけど。」
「…なんで。」
「私この小さなお花好きで。校庭のすみっこに咲いているの見つけて見てたら。九条君が通りかかって。その花好きなんですか?って声かけてくれて。それが授業以外で初めての九条君との会話だったから。」
「…。」
「ごめん。今思うと私が勝手にこの花に思い入れがあったってだけだよね。」
「はぁ~。」
「紺野君?」
「まさかまだ持ってたなんて。」
「え?」
「しかも初めての会話覚えててくれたとか。…めちゃくちゃ嬉しい。」

“ぎゅ~”

急に抱き締められてビックリ。

「やっぱり九条君だったの?」
「はい。」
「良かったぁ。」
「もぉ奈美さんずるいです。」
「え?」
「こんなことされたら。もっと好きになっちゃう。」
「紺野君…。」
「紺野も俺ですけど。拓海って呼んで欲しい。」
「ん。たくみ…くん。」

このまま二回目のキス?

“ブーブー”

拓海君の電話に着信。

“ブーブー”

「だ、大事な電話かも?出た方がいいんじゃない?」
「…ごめん。はい。もしもし。」

また少し離れた所で話す後ろ姿。
ご両親からかしら?
この後ろ姿を見る度に少し距離を感じてしまう。

「分かった。じゃまた。」
「…。」
「ごめん。」
「ううん!大丈夫だった?」
「大丈夫。」
「…じゃ~そろそろ帰るね!」
「駅まで送る。」
「ありがとう!」

2回目のキスはお預けになっちゃったけど。
ずっと気になっていたあの栞の送り主が拓海君だって分かって良かった。
これからも大切にしよう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

crazy Love 〜元彼上司と復縁しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
crazy Love 〜元彼上司と復縁しますか?〜

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

アンコール マリアージュ

葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか? ファーストキスは、どんな場所で? プロポーズのシチュエーションは? ウェディングドレスはどんなものを? 誰よりも理想を思い描き、 いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、 ある日いきなり全てを奪われてしまい… そこから始まる恋の行方とは? そして本当の恋とはいったい? 古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。 ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ 恋に恋する純情な真菜は、 会ったばかりの見ず知らずの相手と 結婚式を挙げるはめに… 夢に描いていたファーストキス 人生でたった一度の結婚式 憧れていたウェディングドレス 全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に 果たして本当の恋はやってくるのか?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

史上最強最低男からの求愛〜今更貴方とはやり直せません!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
中高一貫校時代に愛し合ってた仲だけど、大学時代に史上最強最低な別れ方をし、わたしを男嫌いにした相手と復縁できますか?

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

処理中です...