27 / 48
熱を帯びた手
しおりを挟む
「すごい!!」
「はい!じゃ~次は奈美ちゃんの番!」
「私ダーツは初めてで。」
「こう持って肘を固定してとにかく的に向かって投げてみよう!」
多分相良さんにはバレちゃってるんだろうなぁ。
私の涙が喜びの涙だけではなかったことが。
気を紛らわせようとしてくれているのが伝わる。
「初めてにしてはいい線いってる!」
「やったぁ!」
「やっと笑った。」
「相良さん…。」
「俺結構奈美ちゃんの笑った顔好きなんだよね~!だから奈美ちゃんには泣いてるよりも笑ってて欲しい。」
「奈美さん!!」
「え!紺野君!?」
なんで紺野君がここに!?
走ってきたの?
息が切れてる。
どういうこと?
「思ったよりも早かったね!」
「…。」
「勝負でもする?」
「…いいですよ。」
「じゃ~先行かせてもらうね!」
相良さん急に勝負だなんて。
どうなってるの?
紺野君ダーツやったことあるのかなぁ?
ダーツのルール全然分からないけど。
多分これは名勝負。
そしてダーツをやる紺野君の手が良すぎて。
こんな感情意味ないのに胸がぎゅってなる。
「勝負着いたね。」
「…。」
紺野君の勝ち?
「じゃ~俺帰るね。」
「相良さん?」
「頑張って。」
「え?」
「じゃ。」
“バタン”
「きゃ!こ、紺野君!?」
「えっ?どうした!?」
「わ、分からないんですけど急に倒れちゃって。ど、ど~しよう!」
「うわ。すごい熱だな。」
「相良さん。ど、どうしよう。」
「お客様大丈夫ですか?」
「あ。はい。奈美ちゃん紺野君家わかる?」
「あ。はい。」
「タクシー呼ぶから。」
「はい!」
紺野君。すごい熱。
相良さんがいてくれてよかった。
私一人じゃどうしたらいいか。
「そこの信号を右折です。」
「スムーズだね。本当に何回も家行ったことあるんだね。」
「あ。はい。職場だけでなく自炊の教育係も兼任しているもので。」
「教育係…ね。」
「最近は紺野君忙しそうで全然出来てませんけど。」
「そっか。」
「ここです。」
なんとか紺野君の部屋までたどり着いて良かったけど。
「俺薬買ってくるから。」
「え。あ、私が。」
「ついててあげて。」
「…わかりました。」
相良さんにすっかり頼りきってしまって。
紺野君も苦しそうだし。
自分の無力さを感じる。
ハンカチを濡らしておでこにあててもすぐにぬるくなっちゃう。
どうしよう。紺野君!
「奈美さん…。」
「紺野君!」
「…。」
なにもしてあげられない自分がもどかしい。
「奈美ちゃん。薬買ってきたよ。」
「ありがとうございます。」
「様子どう?」
「ずっとつらそうで。」
「奈美ちゃんがついててあげたらきっとよくなるよ。」
「…私じゃだめなんです。」
「え?」
「紺野君には。ちゃんと彼女さんがいて。」
「え!?」
「最近残業も結構しててお仕事も忙しくて。それでもどんなに遅くなって疲れていても電話がかかってきたらすぐにかけつけるようなお相手がいるんです。」
「…。」
「ホントは今ここに付き添うべきなのも私ではなくて。」
「…それでも奈美ちゃんは紺野君のことが好きなんだね。」
「…無理なんです。諦めようとしても。どうしても消えなくて。」
「紺野君が元気になったら一度ちゃんと話して気持ち伝えてみたら?何かかわるかもしれないよ。」
「…はい。」
「じゃ。お大事に。」
「ありがとうございました。」
少しは落ち着いてきたかな。
さっきより表情が和らいでる。
良かったぁ。
気持ちを伝えて。
何か変わる?
ただ負担になるだけじゃないかなぁ。
彼女さんがいる人に伝えても。
迷惑なだけだよね。
紺野君が今ここにいて欲しいのもきっと私じゃない。
帰ろう。
“ぎゅっ”
帰ろうとしたら手をつかまれた。
「紺野君?」
「…。」
「大丈夫?具合どぅ?」
「…。いて。」
「え?」
「いかないで。」
「あ。うん。」
熱で熱く火照っている手。
両手で握り返してその場に座り込む。
紺野君はそのまま眠ってしまったみたい。
この手。
ずっとこうしてつないでいたい。
でもきっと。高熱でうつろうつろしていて。
彼女の手と間違えているんだろうな。
薬も効いてきたみたいですやすや寝てるし帰ろう。
そっと手を離すと紺野君の手で暖まっていた手が急にす~っと冷たくなる。
手。離したくないよぉ。
離れたくないよぉ。
「はい!じゃ~次は奈美ちゃんの番!」
「私ダーツは初めてで。」
「こう持って肘を固定してとにかく的に向かって投げてみよう!」
多分相良さんにはバレちゃってるんだろうなぁ。
私の涙が喜びの涙だけではなかったことが。
気を紛らわせようとしてくれているのが伝わる。
「初めてにしてはいい線いってる!」
「やったぁ!」
「やっと笑った。」
「相良さん…。」
「俺結構奈美ちゃんの笑った顔好きなんだよね~!だから奈美ちゃんには泣いてるよりも笑ってて欲しい。」
「奈美さん!!」
「え!紺野君!?」
なんで紺野君がここに!?
走ってきたの?
息が切れてる。
どういうこと?
「思ったよりも早かったね!」
「…。」
「勝負でもする?」
「…いいですよ。」
「じゃ~先行かせてもらうね!」
相良さん急に勝負だなんて。
どうなってるの?
紺野君ダーツやったことあるのかなぁ?
ダーツのルール全然分からないけど。
多分これは名勝負。
そしてダーツをやる紺野君の手が良すぎて。
こんな感情意味ないのに胸がぎゅってなる。
「勝負着いたね。」
「…。」
紺野君の勝ち?
「じゃ~俺帰るね。」
「相良さん?」
「頑張って。」
「え?」
「じゃ。」
“バタン”
「きゃ!こ、紺野君!?」
「えっ?どうした!?」
「わ、分からないんですけど急に倒れちゃって。ど、ど~しよう!」
「うわ。すごい熱だな。」
「相良さん。ど、どうしよう。」
「お客様大丈夫ですか?」
「あ。はい。奈美ちゃん紺野君家わかる?」
「あ。はい。」
「タクシー呼ぶから。」
「はい!」
紺野君。すごい熱。
相良さんがいてくれてよかった。
私一人じゃどうしたらいいか。
「そこの信号を右折です。」
「スムーズだね。本当に何回も家行ったことあるんだね。」
「あ。はい。職場だけでなく自炊の教育係も兼任しているもので。」
「教育係…ね。」
「最近は紺野君忙しそうで全然出来てませんけど。」
「そっか。」
「ここです。」
なんとか紺野君の部屋までたどり着いて良かったけど。
「俺薬買ってくるから。」
「え。あ、私が。」
「ついててあげて。」
「…わかりました。」
相良さんにすっかり頼りきってしまって。
紺野君も苦しそうだし。
自分の無力さを感じる。
ハンカチを濡らしておでこにあててもすぐにぬるくなっちゃう。
どうしよう。紺野君!
「奈美さん…。」
「紺野君!」
「…。」
なにもしてあげられない自分がもどかしい。
「奈美ちゃん。薬買ってきたよ。」
「ありがとうございます。」
「様子どう?」
「ずっとつらそうで。」
「奈美ちゃんがついててあげたらきっとよくなるよ。」
「…私じゃだめなんです。」
「え?」
「紺野君には。ちゃんと彼女さんがいて。」
「え!?」
「最近残業も結構しててお仕事も忙しくて。それでもどんなに遅くなって疲れていても電話がかかってきたらすぐにかけつけるようなお相手がいるんです。」
「…。」
「ホントは今ここに付き添うべきなのも私ではなくて。」
「…それでも奈美ちゃんは紺野君のことが好きなんだね。」
「…無理なんです。諦めようとしても。どうしても消えなくて。」
「紺野君が元気になったら一度ちゃんと話して気持ち伝えてみたら?何かかわるかもしれないよ。」
「…はい。」
「じゃ。お大事に。」
「ありがとうございました。」
少しは落ち着いてきたかな。
さっきより表情が和らいでる。
良かったぁ。
気持ちを伝えて。
何か変わる?
ただ負担になるだけじゃないかなぁ。
彼女さんがいる人に伝えても。
迷惑なだけだよね。
紺野君が今ここにいて欲しいのもきっと私じゃない。
帰ろう。
“ぎゅっ”
帰ろうとしたら手をつかまれた。
「紺野君?」
「…。」
「大丈夫?具合どぅ?」
「…。いて。」
「え?」
「いかないで。」
「あ。うん。」
熱で熱く火照っている手。
両手で握り返してその場に座り込む。
紺野君はそのまま眠ってしまったみたい。
この手。
ずっとこうしてつないでいたい。
でもきっと。高熱でうつろうつろしていて。
彼女の手と間違えているんだろうな。
薬も効いてきたみたいですやすや寝てるし帰ろう。
そっと手を離すと紺野君の手で暖まっていた手が急にす~っと冷たくなる。
手。離したくないよぉ。
離れたくないよぉ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる