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熱を帯びた手
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「すごい!!」
「はい!じゃ~次は奈美ちゃんの番!」
「私ダーツは初めてで。」
「こう持って肘を固定してとにかく的に向かって投げてみよう!」
多分相良さんにはバレちゃってるんだろうなぁ。
私の涙が喜びの涙だけではなかったことが。
気を紛らわせようとしてくれているのが伝わる。
「初めてにしてはいい線いってる!」
「やったぁ!」
「やっと笑った。」
「相良さん…。」
「俺結構奈美ちゃんの笑った顔好きなんだよね~!だから奈美ちゃんには泣いてるよりも笑ってて欲しい。」
「奈美さん!!」
「え!紺野君!?」
なんで紺野君がここに!?
走ってきたの?
息が切れてる。
どういうこと?
「思ったよりも早かったね!」
「…。」
「勝負でもする?」
「…いいですよ。」
「じゃ~先行かせてもらうね!」
相良さん急に勝負だなんて。
どうなってるの?
紺野君ダーツやったことあるのかなぁ?
ダーツのルール全然分からないけど。
多分これは名勝負。
そしてダーツをやる紺野君の手が良すぎて。
こんな感情意味ないのに胸がぎゅってなる。
「勝負着いたね。」
「…。」
紺野君の勝ち?
「じゃ~俺帰るね。」
「相良さん?」
「頑張って。」
「え?」
「じゃ。」
“バタン”
「きゃ!こ、紺野君!?」
「えっ?どうした!?」
「わ、分からないんですけど急に倒れちゃって。ど、ど~しよう!」
「うわ。すごい熱だな。」
「相良さん。ど、どうしよう。」
「お客様大丈夫ですか?」
「あ。はい。奈美ちゃん紺野君家わかる?」
「あ。はい。」
「タクシー呼ぶから。」
「はい!」
紺野君。すごい熱。
相良さんがいてくれてよかった。
私一人じゃどうしたらいいか。
「そこの信号を右折です。」
「スムーズだね。本当に何回も家行ったことあるんだね。」
「あ。はい。職場だけでなく自炊の教育係も兼任しているもので。」
「教育係…ね。」
「最近は紺野君忙しそうで全然出来てませんけど。」
「そっか。」
「ここです。」
なんとか紺野君の部屋までたどり着いて良かったけど。
「俺薬買ってくるから。」
「え。あ、私が。」
「ついててあげて。」
「…わかりました。」
相良さんにすっかり頼りきってしまって。
紺野君も苦しそうだし。
自分の無力さを感じる。
ハンカチを濡らしておでこにあててもすぐにぬるくなっちゃう。
どうしよう。紺野君!
「奈美さん…。」
「紺野君!」
「…。」
なにもしてあげられない自分がもどかしい。
「奈美ちゃん。薬買ってきたよ。」
「ありがとうございます。」
「様子どう?」
「ずっとつらそうで。」
「奈美ちゃんがついててあげたらきっとよくなるよ。」
「…私じゃだめなんです。」
「え?」
「紺野君には。ちゃんと彼女さんがいて。」
「え!?」
「最近残業も結構しててお仕事も忙しくて。それでもどんなに遅くなって疲れていても電話がかかってきたらすぐにかけつけるようなお相手がいるんです。」
「…。」
「ホントは今ここに付き添うべきなのも私ではなくて。」
「…それでも奈美ちゃんは紺野君のことが好きなんだね。」
「…無理なんです。諦めようとしても。どうしても消えなくて。」
「紺野君が元気になったら一度ちゃんと話して気持ち伝えてみたら?何かかわるかもしれないよ。」
「…はい。」
「じゃ。お大事に。」
「ありがとうございました。」
少しは落ち着いてきたかな。
さっきより表情が和らいでる。
良かったぁ。
気持ちを伝えて。
何か変わる?
ただ負担になるだけじゃないかなぁ。
彼女さんがいる人に伝えても。
迷惑なだけだよね。
紺野君が今ここにいて欲しいのもきっと私じゃない。
帰ろう。
“ぎゅっ”
帰ろうとしたら手をつかまれた。
「紺野君?」
「…。」
「大丈夫?具合どぅ?」
「…。いて。」
「え?」
「いかないで。」
「あ。うん。」
熱で熱く火照っている手。
両手で握り返してその場に座り込む。
紺野君はそのまま眠ってしまったみたい。
この手。
ずっとこうしてつないでいたい。
でもきっと。高熱でうつろうつろしていて。
彼女の手と間違えているんだろうな。
薬も効いてきたみたいですやすや寝てるし帰ろう。
そっと手を離すと紺野君の手で暖まっていた手が急にす~っと冷たくなる。
手。離したくないよぉ。
離れたくないよぉ。
「はい!じゃ~次は奈美ちゃんの番!」
「私ダーツは初めてで。」
「こう持って肘を固定してとにかく的に向かって投げてみよう!」
多分相良さんにはバレちゃってるんだろうなぁ。
私の涙が喜びの涙だけではなかったことが。
気を紛らわせようとしてくれているのが伝わる。
「初めてにしてはいい線いってる!」
「やったぁ!」
「やっと笑った。」
「相良さん…。」
「俺結構奈美ちゃんの笑った顔好きなんだよね~!だから奈美ちゃんには泣いてるよりも笑ってて欲しい。」
「奈美さん!!」
「え!紺野君!?」
なんで紺野君がここに!?
走ってきたの?
息が切れてる。
どういうこと?
「思ったよりも早かったね!」
「…。」
「勝負でもする?」
「…いいですよ。」
「じゃ~先行かせてもらうね!」
相良さん急に勝負だなんて。
どうなってるの?
紺野君ダーツやったことあるのかなぁ?
ダーツのルール全然分からないけど。
多分これは名勝負。
そしてダーツをやる紺野君の手が良すぎて。
こんな感情意味ないのに胸がぎゅってなる。
「勝負着いたね。」
「…。」
紺野君の勝ち?
「じゃ~俺帰るね。」
「相良さん?」
「頑張って。」
「え?」
「じゃ。」
“バタン”
「きゃ!こ、紺野君!?」
「えっ?どうした!?」
「わ、分からないんですけど急に倒れちゃって。ど、ど~しよう!」
「うわ。すごい熱だな。」
「相良さん。ど、どうしよう。」
「お客様大丈夫ですか?」
「あ。はい。奈美ちゃん紺野君家わかる?」
「あ。はい。」
「タクシー呼ぶから。」
「はい!」
紺野君。すごい熱。
相良さんがいてくれてよかった。
私一人じゃどうしたらいいか。
「そこの信号を右折です。」
「スムーズだね。本当に何回も家行ったことあるんだね。」
「あ。はい。職場だけでなく自炊の教育係も兼任しているもので。」
「教育係…ね。」
「最近は紺野君忙しそうで全然出来てませんけど。」
「そっか。」
「ここです。」
なんとか紺野君の部屋までたどり着いて良かったけど。
「俺薬買ってくるから。」
「え。あ、私が。」
「ついててあげて。」
「…わかりました。」
相良さんにすっかり頼りきってしまって。
紺野君も苦しそうだし。
自分の無力さを感じる。
ハンカチを濡らしておでこにあててもすぐにぬるくなっちゃう。
どうしよう。紺野君!
「奈美さん…。」
「紺野君!」
「…。」
なにもしてあげられない自分がもどかしい。
「奈美ちゃん。薬買ってきたよ。」
「ありがとうございます。」
「様子どう?」
「ずっとつらそうで。」
「奈美ちゃんがついててあげたらきっとよくなるよ。」
「…私じゃだめなんです。」
「え?」
「紺野君には。ちゃんと彼女さんがいて。」
「え!?」
「最近残業も結構しててお仕事も忙しくて。それでもどんなに遅くなって疲れていても電話がかかってきたらすぐにかけつけるようなお相手がいるんです。」
「…。」
「ホントは今ここに付き添うべきなのも私ではなくて。」
「…それでも奈美ちゃんは紺野君のことが好きなんだね。」
「…無理なんです。諦めようとしても。どうしても消えなくて。」
「紺野君が元気になったら一度ちゃんと話して気持ち伝えてみたら?何かかわるかもしれないよ。」
「…はい。」
「じゃ。お大事に。」
「ありがとうございました。」
少しは落ち着いてきたかな。
さっきより表情が和らいでる。
良かったぁ。
気持ちを伝えて。
何か変わる?
ただ負担になるだけじゃないかなぁ。
彼女さんがいる人に伝えても。
迷惑なだけだよね。
紺野君が今ここにいて欲しいのもきっと私じゃない。
帰ろう。
“ぎゅっ”
帰ろうとしたら手をつかまれた。
「紺野君?」
「…。」
「大丈夫?具合どぅ?」
「…。いて。」
「え?」
「いかないで。」
「あ。うん。」
熱で熱く火照っている手。
両手で握り返してその場に座り込む。
紺野君はそのまま眠ってしまったみたい。
この手。
ずっとこうしてつないでいたい。
でもきっと。高熱でうつろうつろしていて。
彼女の手と間違えているんだろうな。
薬も効いてきたみたいですやすや寝てるし帰ろう。
そっと手を離すと紺野君の手で暖まっていた手が急にす~っと冷たくなる。
手。離したくないよぉ。
離れたくないよぉ。
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