【完結】お願い その手で私を

あい

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手フェチの直感

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あぁ。
なんて惜しいことをしてしまったのだろう。
と後悔はしばらく続いたけれど。
教育実習先の先生と生徒。
どう考えても手に入らない手だったのだから。
後悔した所であの手は戻ってこないし仕方のないことなの。
と一生懸命自分に言い聞かせて。
次のステキな手を探すものの。
あんなにぐっときてときめく手にはなかなか出会えないもの。


結局教員にはならずに普通のOLになって五年目。


「新入社員の研修終わって配属先決まったって!」
「紺野君どこの部署になったかなぁ?」
「うちの部署だといいなぁ!」
「来て欲しい!」

もう新入社員の配属先が決まる時期なんだぁ。
五年前は私も期待と不安でドキドキしながらここに来たっけ。
もうすぐ28歳。
同期も第一次結婚ブームが過ぎて寿退社で減っていって。
今ではすっかりお局様になりつつあるなぁ。

「きゃ!やったぁ!」
「きた!」

女の子達が一斉にざわつく。

「今日からこちらの部署に配属になりました。紺野拓海です。よろしくお願いします。」
「皆色々教えてあげてね!仲良く頑張っていきましょう!」

今年はうちの部署にも新入社員が配属になったみたい。
紺野君。
まずは失礼して手のチェックから!
…。
待って。
嘘でしょ。
そんなことって…。
九条君の手と似てる。
すごく似てる。
というか。同じ?
いや。でも苗字違うし。
私が大学四年生だった時に高校二年生だったから五コ下。
ってことは大学に行っていたらまだ大学四年生なはず。
計算合わないしここにいるわけないよね?
…。
それにしても五年前大好きだった手にすごく似てる。
少し大人な雰囲気にはなったような気はするけど。
顔は…ダメだぁ。
あの頃手ばっかり見ていたから顔がいまいち思い出せない。
こんな顔だったような気もするし違ったような気もするし。
あまりにもの出来事に脳内パニック!

「奈美ちゃんちょっと!」
「は、はい!」

部長から呼び出し。

「紺野君の教育係を奈美ちゃんにお願いしたいんだけど!」
「えっ!む、無理です!」
「なんでよ~。」
「私今色々抱えてて手いっぱいなので。」

しかも手のことでパニック状態なので!

「だからちょうどいいと思って!」
「え?」
「実はね。ここだけの話。紺野君新入社員ってことになってるけど。2年間ニューヨーク支社で研修受けてきてるのよ。」
「え!?」
「だから即戦力!手いっぱいの奈美ちゃんにはいいお話でしょ!?」
「いや。あの。まぁ。それはそうかもしれないんですけど。」

ちょっと待って?
二年間すでに働いてるってことは入社三年目。私の二コ下ってこと?
ってことはやっぱり年齢合わないから九条君とは別人。

「なになに~?かっこ良すぎて緊張しちゃう!? 」
「ちょ、何言ってるんですか!? 」
「たまにはそういう話題も奈美ちゃんから聞きた~い!じゃ~そういうことでよろしく!」
「ちょっと待ってくださ。」
「紺野くん!こちら教育係の藤枝奈美ちゃん。しばらくは奈美ちゃんについてやっていってね!」
「分かりました。」
「ふ、藤枝奈美です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!」
「じゃ~奈美ちゃん後はよろしくね!」
「あ、はい!」
「奈美さんいいなぁ~!」
「紺野君!あたしもいつでもなんでも教えるからね!」
「ありがとうございます。」

紺野君は配属されて即すごい人気。
私なんかが教育係で申し訳ない。
教育係かぁ。自信ないけど。
思わず直感的に九条君かと思ってドキッとしてしまったぐらいステキなその手を拝める時間が増えるのはこの上なく嬉しい。

「社内案内とかは研修中に終わってるかな?」
「はい!なんとなくは聞いています。」
「そっか!じゃ~うちの部がよく使う資料室案内するね。」
「はい!」
「ここが資料室。結構な量があるんだけど、基本的にはジャンル別で時系列にならんでるから。」

メモを取っている手。
あの時の手と同じ。

「どうかしました?」

しまった!思わず見とれてしまってた。

「あ。ごめんね!えっと後は。」
「あの!」
「ん?なぁに?」
「奈美さんって呼んでもいいですか?」
「うん!皆にもそう呼ばれてるしそれで大丈夫だよ!」
「…奈美さん。」
「ん?」
「ちょっと呼んでみたくて呼んじゃいました。」

えっ。な、なにこの感じ!
なんかすっごくドキッとしてしまった!

「…。えっとそれでこっちの奥には。」

そういう予想外の発言はやめて欲しい。
あまり慣れていないから。

「いたっ!」
「大丈夫ですか?」

完全に動揺してる!
脚立につまずいてよろけた所を助けてもらってしまった。
ま、待って!!
手!手が!!紺野君の手が私に触れてる!!
ひゃぁ。
それだけで熱くなってしまう。

「だ、大丈夫!ありがとう。」

離れたくないけど慌てて離れる。
力強くて優しい手だったぁ!!

はぅ~今晩はあの時の手の感触がエンドレスリピートで眠れなさそう!
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