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マッチング
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現実は理想とはカナリかけ離れたもので。
10代の頃は。
誰もがステキな彼とステキな恋をして。
その先に結婚があると思っていた。
29歳の現実は。
ステキな恋だの愛だのとは無縁。
たまにお友達とご飯するぐらいで。
会社と家の単純な往復生活。
「さっちゃ~ん。やっぱり私にはこういうの向いてなかったんだよ~。」
「今回はたまたまマッチングしなかったけど楽しかったじゃん!」
「あの!さっきマッチングイベントに参加されてましたよね!?」
「はい!」
「実は俺達も参加してて!良かったらこの後飲みにでも行きません!?」
マッチングイベント。
今日は大学からの友達のさっちゃんと婚活イベントに。
こういうのは向いていないって分かっていた。
でも。
29歳という年齢と。
さっちゃんの猛プッシュと。
少しの期待と…。
参加してみて改めて感じる。
コミュニケーション能力と外見の重要性。
今も二人の男性の視線の先にはさっちゃんしかいない。
分かってる。ずいぶん前から分かっていた。
現実は厳しいって。
「きゃはは!」
「俺さっちゃんの番号マッチングの時書いてたんだよ~!」
「そ~だったの~!?」
さっちゃんは可愛いし性格もいい。
同性の私から見ても魅力的。
いつでもさっちゃんさえその気になればすぐに相手も見つかるはず。
でもさっちゃんは常に上を目指していて。
さっちゃんもまた、私とは違う次元で理想と現実との間でさ迷っているみたい。
「もう一件行こうよ~!」
「でも…。」
「いいじゃん!いいじゃん!」
「ほらほら!」
ダメ。これ絶対よくない流れ。
「さっちゃん帰ろう。」
「うん。」
「なんだよ!!」
「その気にさせといてそりゃ~ね~だろ!?」
「えっ?」
男の人たちの態度が急変。怖い。
どうしよう。
誰か!
周りの人たちは見て見ぬふり。
「さっちゃん行こう!」
やっぱり私がなんとかするしかない!
思い切ってさっちゃんを引っ張って連れて帰ろうとしたら。
「おい。なんだよ!」
「お前はいいんだよ。」
「一人で帰れ。」
私に用がないのはわかってる。
でも私の大事な友達を傷つけられるのはごめんなの!
「さっちゃんを離して!」
「うるせ~な!」
“ドン!”
「いたっ。」
「美香!ちょっと美香になにするのよ!!」
「うるせ~な~。」
突き飛ばされた。
心も身体も色んな意味で傷つく。
「それ以上やってっと警察よぶぞ。」
「は?」
男の人が二人。
助けてくれるの?
「んだよ。お前らには関係ね~だろ!」
「もしもし。」
「マジかよ。」
「行こうぜ。」
助かったぁ。
「大丈夫?」
「はい。」
さっちゃんに男の人が駆け寄る。さっちゃん大丈夫そうで良かった。
「大丈夫?」
「え、あ、はい。」
もう一人の人が私に声をかけてくれた。
「立てそう?」
「大丈夫です!」
腕を持って引き上げようとしてくれたけど。
私なんかに申し訳ないから手をかりずにすくっと立ち上がる。
「さっちゃん大丈夫!?」
「うん!美香こそ大丈夫?なんかこんなことになっちゃってごめんね!」
「そんな。さっちゃんは悪くないよぉ。」
二人で手をとり慰めあう。
こんな怖い思いをしたのは初めてかもしれない。
「二人とも大丈夫?」
「はい!ホント助けて頂いてありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
「気持ち落ち着くまでそこのカフェとかで暖かいものとかどう?」
「いえ。大丈夫です。さっちゃん行こう。」
「あ、そ~だよな。あんなことあった後なのにごめん。ちょっと待ってて。」
「おい、良太!?どこいくんだよ!?」
一人の男の人が急に走って行っちゃったの。
助けてくれた人達とはいえ。まだ怖い。不安。
早くこの場から去りたい。
「お待たせ!はい!」
「え?」
「俺らとお店入るの嫌だろうから。テイクアウトしてきた。暖かいもの飲んだら少しほっとすると思うから。」
「ありがとうございます!」
「…ありがとうございます。」
「はい!勇介のも!」
「え!俺にまで?サンキュー!」
「あっち座る?」
「あ、はい!」
なんだろ。
あったかい。
しみる。
「わ!こんな時間!私終電が!」
「間に合いそう?」
「はい!美香私先帰るね!」
「え!私も!」
「ごめん!ギリギリだ!行く!」
「あ、じゃ~俺駅まで一緒に行くよ!」
「すみませんありがとうございます!」
「じゃ良太また!」
「おう!」
バタバタと二人は行ってしまった。
さっちゃん終電間に合ったかなぁ。
「落ち着いた?」
「え?」
「さっき震えてたから。」
「…。」
気づいてたんだ。
怖かった。本当に怖かった。
わ。ダメ。思い出したら。込み上げてくる。
泣きそう。
「私もそろそろ。」
「…。電車大丈夫そうならもう少し。」
「今日は本当にありがとうございました。助かりました。」
「…。」
「失礼します。」
「待って。駅まで送るよ。」
「すぐそこなんで大丈夫です。」
「俺ももう帰るとこだし。」
「…はい。」
男の人とこうして夜の街を二人で歩くのってはじめて。
知らない人だし。何を話すわけでもないし。
不思議な時間。
でもなぜか分からないけど柔らかい時間だった。
10代の頃は。
誰もがステキな彼とステキな恋をして。
その先に結婚があると思っていた。
29歳の現実は。
ステキな恋だの愛だのとは無縁。
たまにお友達とご飯するぐらいで。
会社と家の単純な往復生活。
「さっちゃ~ん。やっぱり私にはこういうの向いてなかったんだよ~。」
「今回はたまたまマッチングしなかったけど楽しかったじゃん!」
「あの!さっきマッチングイベントに参加されてましたよね!?」
「はい!」
「実は俺達も参加してて!良かったらこの後飲みにでも行きません!?」
マッチングイベント。
今日は大学からの友達のさっちゃんと婚活イベントに。
こういうのは向いていないって分かっていた。
でも。
29歳という年齢と。
さっちゃんの猛プッシュと。
少しの期待と…。
参加してみて改めて感じる。
コミュニケーション能力と外見の重要性。
今も二人の男性の視線の先にはさっちゃんしかいない。
分かってる。ずいぶん前から分かっていた。
現実は厳しいって。
「きゃはは!」
「俺さっちゃんの番号マッチングの時書いてたんだよ~!」
「そ~だったの~!?」
さっちゃんは可愛いし性格もいい。
同性の私から見ても魅力的。
いつでもさっちゃんさえその気になればすぐに相手も見つかるはず。
でもさっちゃんは常に上を目指していて。
さっちゃんもまた、私とは違う次元で理想と現実との間でさ迷っているみたい。
「もう一件行こうよ~!」
「でも…。」
「いいじゃん!いいじゃん!」
「ほらほら!」
ダメ。これ絶対よくない流れ。
「さっちゃん帰ろう。」
「うん。」
「なんだよ!!」
「その気にさせといてそりゃ~ね~だろ!?」
「えっ?」
男の人たちの態度が急変。怖い。
どうしよう。
誰か!
周りの人たちは見て見ぬふり。
「さっちゃん行こう!」
やっぱり私がなんとかするしかない!
思い切ってさっちゃんを引っ張って連れて帰ろうとしたら。
「おい。なんだよ!」
「お前はいいんだよ。」
「一人で帰れ。」
私に用がないのはわかってる。
でも私の大事な友達を傷つけられるのはごめんなの!
「さっちゃんを離して!」
「うるせ~な!」
“ドン!”
「いたっ。」
「美香!ちょっと美香になにするのよ!!」
「うるせ~な~。」
突き飛ばされた。
心も身体も色んな意味で傷つく。
「それ以上やってっと警察よぶぞ。」
「は?」
男の人が二人。
助けてくれるの?
「んだよ。お前らには関係ね~だろ!」
「もしもし。」
「マジかよ。」
「行こうぜ。」
助かったぁ。
「大丈夫?」
「はい。」
さっちゃんに男の人が駆け寄る。さっちゃん大丈夫そうで良かった。
「大丈夫?」
「え、あ、はい。」
もう一人の人が私に声をかけてくれた。
「立てそう?」
「大丈夫です!」
腕を持って引き上げようとしてくれたけど。
私なんかに申し訳ないから手をかりずにすくっと立ち上がる。
「さっちゃん大丈夫!?」
「うん!美香こそ大丈夫?なんかこんなことになっちゃってごめんね!」
「そんな。さっちゃんは悪くないよぉ。」
二人で手をとり慰めあう。
こんな怖い思いをしたのは初めてかもしれない。
「二人とも大丈夫?」
「はい!ホント助けて頂いてありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
「気持ち落ち着くまでそこのカフェとかで暖かいものとかどう?」
「いえ。大丈夫です。さっちゃん行こう。」
「あ、そ~だよな。あんなことあった後なのにごめん。ちょっと待ってて。」
「おい、良太!?どこいくんだよ!?」
一人の男の人が急に走って行っちゃったの。
助けてくれた人達とはいえ。まだ怖い。不安。
早くこの場から去りたい。
「お待たせ!はい!」
「え?」
「俺らとお店入るの嫌だろうから。テイクアウトしてきた。暖かいもの飲んだら少しほっとすると思うから。」
「ありがとうございます!」
「…ありがとうございます。」
「はい!勇介のも!」
「え!俺にまで?サンキュー!」
「あっち座る?」
「あ、はい!」
なんだろ。
あったかい。
しみる。
「わ!こんな時間!私終電が!」
「間に合いそう?」
「はい!美香私先帰るね!」
「え!私も!」
「ごめん!ギリギリだ!行く!」
「あ、じゃ~俺駅まで一緒に行くよ!」
「すみませんありがとうございます!」
「じゃ良太また!」
「おう!」
バタバタと二人は行ってしまった。
さっちゃん終電間に合ったかなぁ。
「落ち着いた?」
「え?」
「さっき震えてたから。」
「…。」
気づいてたんだ。
怖かった。本当に怖かった。
わ。ダメ。思い出したら。込み上げてくる。
泣きそう。
「私もそろそろ。」
「…。電車大丈夫そうならもう少し。」
「今日は本当にありがとうございました。助かりました。」
「…。」
「失礼します。」
「待って。駅まで送るよ。」
「すぐそこなんで大丈夫です。」
「俺ももう帰るとこだし。」
「…はい。」
男の人とこうして夜の街を二人で歩くのってはじめて。
知らない人だし。何を話すわけでもないし。
不思議な時間。
でもなぜか分からないけど柔らかい時間だった。
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