【完結】恋に夢見て恋をする

あい

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それぞれの傷

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今日はリーグ戦初日。
怪我をしてしまっている木村良太は今回はベンチにも入れず私たちと同じスタンドからの応援。
いつもはグラウンドを行ったり来たり人一倍走り回ってる木村良太が隣に座ってるなんてなんか不思議。
どんなこと思っているんだろう?
やりきれない感じ?
悔しい感じ?

「なに?」
「へ?」
「さっきからすげぇ見られてる気がすんだけど。」
「えっ!そ、そんなことないよ!」
「後半始まるぞ。」
「あ。うん。」

ダメだぁ。
意識しないように普通にしなきゃいけないのに。
怪我の心配もあるし前よりももっと無意識に見る回数増えちゃってる気がする。

「南大かんばぁ!!」

とりあえず。応援しよう!
応援しまくって忘れよう!!

「試合お疲れ様でした。まだリーグ戦始まったばかりだから。また次の試合に向けてしっかりやっていきましょう!」
「お疲れ様でした!」

「お待たせ。」
「おう。」

家族がいるとはいえ。一時的にでも一緒に暮らしているとは部員達に言えず。
一緒に帰るのも怪しいから時間差で公園で落ち合う日々。
後ろめたいような。二人だけの秘密が少し嬉しいような。

「今日の試合勝って良かったね!」
「そ~だな。」
「途中危ない場面もあったけど。初戦勝てて良かったぁ!」
「あ~。」
「あ。ごめん。」
「なんであやまんの?」
「いや。その。」
「別に気つかわなくていいから。」
「あ。うん。」
「それにしても。お前いつもあんなに叫んでんの?」
「え?」
「応援の時すごかった。」
「そりゃ~そうでしょ!だって応援だよ!?」
「はいはい。」

きっと出たかっただろうなぁ。
見てて辛かっただろうなぁ。

「ただいまぁ。」
「ただいま帰りました!」
「二人ともお帰り~!今日はどうだった?」
「勝ったよ!」
「良かったわね!」
「うん!」

勝ってもちろん良かったんだけど。
もちろんすごく嬉しいんだけど。
木村良太が試合に出てたらもっと良かったんだけどなぁ。
なんてこんなこと言っても仕方ないんだけど。

「美香?」
「なに?」
「ちょっと。」
「ん?どうしたの?」
「足押さえてて。」
「え?」
「そこ乗って。」
「あ。うん。こ~?」
「そ。」
「わぁ!」

いきなり木村良太の顔が近くに来てビックリ!!

「ちゃんと乗れよ。」
「あ。うん。」

ただ腹筋するのを押さえてるだけなんだけど。
足の上に乗ったり。足を掴んだり。
たまに顔が近くにきたり。
ドキドキする。

「あぁ~!きつっ!」
「肩痛くないの?」
「力入ると痛い。」
「え!ダメじゃん!!」
「けど。なんかしてねぇと置いてかれそうで。」
「…46.45.」
「おい。また。しっかり数えろ!」
「あはは!47.48.」

頑張れ!木村良太!
木村良太はあれから部活でもトレーニングを開始したの。
マネージャーが交代で見ることになって今日は私の番。
足の筋肉すごいなぁ。かっこいいなぁ。
か、かっこいいだなんて!
ダメダメ!
私は私で日々自分の良太への気持ちと戦い中。
そしてチームもリーグ戦を戦い中!
二試合目は負けてしまったけど三試合目は勝ちました。

「美香~。」
「今乗りま~す!」
「今乗りますって変だろ。」
「だって腹筋するんでしょ?乗るじゃん!」
「まぁ。」
「早く早く~!1!」
「わ!勝手に始めるなよ!」
「あはは!」

すっかり夜の腹筋タイムもお馴染みになりました。

「お疲れ様!」
「おう。」
「そういえば明日病院だよね?」
「あ~。」
「ギプスはずれるといいね!」
「…だな。」
「痛みは?」
「ほとんどない。」
「じゃ~きっと順調なんだよ!」

順調に回復してきてるみたいで良かったぁ。
私の心の傷は回復しながらも時々ぱっくり開いてまたひりひり痛む。
女の子として見てもらえてないなんて。
どうしようも出来ないけれどこの思いを完全に捨てきることも出来ない。
たまに夜電話が来て木村良太はちょっとあわてて部屋を出て廊下で話す。
カーテン越しだし廊下の話し声も聞き取れないからよくは分からないけど彼女からとかはかなぁ?
その度ズキンって胸が痛くなってまた傷口がぱかって開く。
一緒にいなければ知らずにすんだこと。
知らないほうが良かったこと。
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