虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有

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第4話

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 翌日になって、私は命令を聞き屋敷の掃除をしていた。

 恐らくこれから、レモノは家族と話し合って更に酷い目に合わせようとするはずだ。
 私は掃除をしながら、報復する方法を考えている。
 そして――背後から迫ったメイドの毒針を、刺さった瞬間に手で止めていた。

「――えっ?」

「何度も刺してきて、気付いていないとでも思ったのですか?」

 そう言って――私は、正面に魔力を飛ばす。
 私の膨大な魔力による威圧を受けて、メイドは全身を震わせ恐怖していた。

「あ、あの……アニカ様。これは――」

「――理由次第では、貴方は消えることになるかもしれません」

「ひっっっ――っ!?」

 私は睨んで、メイドを更に恐怖させた。
 精神が不安な状況で私の魔力を受けると、命を奪われる恐怖を体感する。
 命を奪おうとしてきたのはメイドの方だから、私の威圧は正当な行動だ。

 そしてメイドは、今までのことを全て話してくれる。
 毒針を持たされ、隙を突いて刺すようお父様から命令を受けていたようだ。
 この状況で嘘はつけなくて、メイドは頭を深く下げて謝罪する。

「申し訳、ありませんでした……私はトロノ様ではなく、アニカ様に従います」

 私のお父様の名前を出して、メイドはお父様より私に従うことを約束してくれる。
 メイドから様々な情報を入手して、私は命令を出す。
 家族に報復するための協力者を、私は手に入れることができていた。

■◇■◇■◇■◇■

 夕食の時間になって――食卓に、私の食事はない。
 どうやら今までの間に、レモノが家族と話し合って決めたようだ。

 朝や昼の食事をなくしても、外で食べに行けばいいだけだ。
 夜の食事を与えないことにより、私を苦しめようとしている。

 そんなレモノに対して――魔法を使い、レモノの食事を私の元へ引き寄せる。
 私の行動を眺めたレモノは、激昂して叫んだ。

「お姉様、どういうつもりですか!?」

「レモノは何を言っているの?」

「ふざけないでください! お姉様が魔法で、私の食事を移動させました!!」

 そんなことを言い出すけど、まず私の食事を用意させなかったのはレモノだ。
 メイドから聞いていたことだから、私は呆れながら話す。

「証拠はないでしょう。レモノの食事が用意されなかっただけです」
 
 そう言って、私は奪ったレモノの料理を食べていく。
 そんな姿を見て、お父様が叫んだ。

「アニカよ! レモノを虐げているのは本当のようだな!」

「本当のようって、お父様は今までずっと同じことを言っていたではありませんか」

「なっっ――っ!?」

 私は発言に魔力を籠めることで、食卓にいる家族を威圧する。

 今までレモノを虐げていると言い、否定しても無視していた。
 それなのに目の前でレモノに報復したら、お父様は本当のようだと言い出す。
 それは――今までレモノの発言が、嘘だと知っていたからだ。

 家族が嫌になった私は、本心をこの場で話す。

「もう私は、耐える必要がなくなりました。レモノを虐げていると言うのなら、本当に虐げることにしましょう」

 レモノが嘘をついたことが原因で、家族が私を排除しようとしていた。
 それなら――レモノの嘘を真実に変えることで、私は家族に報復しよう。
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