2 / 35
第2話
しおりを挟む
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
凶暴な魔物の群れを1人で対処していた私を眺めて、ジェイドは心配してくれる。
1人で戦っていた理由を聞かれて、私は全てを話していた。
「妹のレモノが、ガイス様の婚約者になって……私を、排除したくなったようです」
「ランアス侯爵家のガイス様か。どうしてレモノ様はアニカ様を敵視しているんだ?」
「恐らくですけど……私の魔法の実力と、身長差のせいでしょう」
私の身長は、男性より少し高い。
ジェイドも長身だけど、私と同じぐらいの背丈だった。
小柄な妹レモノは、私が話すと見下されているようで嫌だったらしい。
長身なのは私に婚約の話が来なかった理由でもあったけど、ジェイドは気にしていない様子だ。
「嫉妬によるものか。アニカの魔法は素晴らしく、魔石を吸収することもできるとは……素晴らしい才能だ」
「魔石を吸収、ですか?」
魔物を倒した際に現れる魔石は、なぜかすぐに消えていた。
理由がわからなかったけど、ジェイドは知っているようだ。
「魔石が発生した瞬間に限るが、魔石の魔力を取り込むことができる者も希にいるらしい」
ジェイドは魔物と魔石の研究をしているから、私の力を知っていたようだ。
興奮している様子で、私の扱った力の凄さを話してくれる。
「この力は魔物が魔石に変わった瞬間しか発動されない。普通の伯爵令嬢なら、魔物と戦う機会なんてないはずだ」
どうやら本来なら、私は一生気付かない力のようだ。
妹レモノの嫌がらせによって、私は自分の力を知ることができた。
「そうですね……この力がなければ、私は生きていなかったでしょう」
私はジェイドが、普通に話してくれるのが嬉しかった。
家族に虐げられていることを話すと、ジェイドが思案して話す。
「どうしてアニカ様が耐えているのか、俺には理解できない」
「……えっ?」
「毒針で刺されて、こんな場所に向かわせる。イルノーク伯爵家は異常だ」
確かにジェイドの言うとおりで、家族は私を排除しようとしている。
家を出ることも考えたけど……そんなことをした後、どうすればいいのかがわからない。
「ジェイド様の言うとおりだと思います。それでも……家を捨てて平民になった後、私はどうすればいいのかがわかりません」
ジェイドになら、私は本心を話せた。
そして私は、ジェイドの発言に驚くこととなる。
「それなら――俺が守るから、アニカ様は耐える必要はない」
「えっ?」
「家を捨てると決意できたら、俺の屋敷に来て構わない……決めるのは、アニカ様だ」
そう言って、ジェイドは屋敷の場所を教えて去っていく。
私は離れた場所で待機していた馬車に乗って、屋敷に戻っていた。
なにかあれば家に来ていいとジェイドに言われたことで、私は決意する。
これからは家族に反撃していき、追い出された時はジェイドの屋敷に向かえばいい。
虐げられていた私は――ジェイドと出会うことで、耐える必要がなくなった。
凶暴な魔物の群れを1人で対処していた私を眺めて、ジェイドは心配してくれる。
1人で戦っていた理由を聞かれて、私は全てを話していた。
「妹のレモノが、ガイス様の婚約者になって……私を、排除したくなったようです」
「ランアス侯爵家のガイス様か。どうしてレモノ様はアニカ様を敵視しているんだ?」
「恐らくですけど……私の魔法の実力と、身長差のせいでしょう」
私の身長は、男性より少し高い。
ジェイドも長身だけど、私と同じぐらいの背丈だった。
小柄な妹レモノは、私が話すと見下されているようで嫌だったらしい。
長身なのは私に婚約の話が来なかった理由でもあったけど、ジェイドは気にしていない様子だ。
「嫉妬によるものか。アニカの魔法は素晴らしく、魔石を吸収することもできるとは……素晴らしい才能だ」
「魔石を吸収、ですか?」
魔物を倒した際に現れる魔石は、なぜかすぐに消えていた。
理由がわからなかったけど、ジェイドは知っているようだ。
「魔石が発生した瞬間に限るが、魔石の魔力を取り込むことができる者も希にいるらしい」
ジェイドは魔物と魔石の研究をしているから、私の力を知っていたようだ。
興奮している様子で、私の扱った力の凄さを話してくれる。
「この力は魔物が魔石に変わった瞬間しか発動されない。普通の伯爵令嬢なら、魔物と戦う機会なんてないはずだ」
どうやら本来なら、私は一生気付かない力のようだ。
妹レモノの嫌がらせによって、私は自分の力を知ることができた。
「そうですね……この力がなければ、私は生きていなかったでしょう」
私はジェイドが、普通に話してくれるのが嬉しかった。
家族に虐げられていることを話すと、ジェイドが思案して話す。
「どうしてアニカ様が耐えているのか、俺には理解できない」
「……えっ?」
「毒針で刺されて、こんな場所に向かわせる。イルノーク伯爵家は異常だ」
確かにジェイドの言うとおりで、家族は私を排除しようとしている。
家を出ることも考えたけど……そんなことをした後、どうすればいいのかがわからない。
「ジェイド様の言うとおりだと思います。それでも……家を捨てて平民になった後、私はどうすればいいのかがわかりません」
ジェイドになら、私は本心を話せた。
そして私は、ジェイドの発言に驚くこととなる。
「それなら――俺が守るから、アニカ様は耐える必要はない」
「えっ?」
「家を捨てると決意できたら、俺の屋敷に来て構わない……決めるのは、アニカ様だ」
そう言って、ジェイドは屋敷の場所を教えて去っていく。
私は離れた場所で待機していた馬車に乗って、屋敷に戻っていた。
なにかあれば家に来ていいとジェイドに言われたことで、私は決意する。
これからは家族に反撃していき、追い出された時はジェイドの屋敷に向かえばいい。
虐げられていた私は――ジェイドと出会うことで、耐える必要がなくなった。
30
お気に入りに追加
1,172
あなたにおすすめの小説
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
旦那様のお望みどおり、お飾りの妻になります
Na20
恋愛
「しょ、初夜はどうするのですか…!?」
「…………すまない」
相手から望まれて嫁いだはずなのに、初夜を拒否されてしまった。拒否された理由はなんなのかを考えた時に、ふと以前読んだ小説を思い出した。その小説は貴族男性と平民女性の恋愛を描いたもので、そこに出てくるお飾りの妻に今の自分の状況が似ていることに気がついたのだ。旦那様は私にお飾りの妻になることを望んでいる。だから私はお飾りの妻になることに決めたのだ。
【完結】もう辛い片想いは卒業して結婚相手を探そうと思います
ユユ
恋愛
大家族で大富豪の伯爵家に産まれた令嬢には
好きな人がいた。
彼からすれば誰にでも向ける微笑みだったが
令嬢はそれで恋に落ちてしまった。
だけど彼は私を利用するだけで
振り向いてはくれない。
ある日、薬の過剰摂取をして
彼から離れようとした令嬢の話。
* 完結保証付き
* 3万文字未満
* 暇つぶしにご利用下さい
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
終わっていた恋、始まっていた愛
しゃーりん
恋愛
結婚を三か月後に控えた侯爵令嬢ソフィアナは、婚約者である第三王子ディオンに結婚できなくなったと告げられた。二つ離れた国の王女に結婚を申し込まれており、国交を考えると受けざるを得ないということだった。ディオンはソフィアナだけを愛すると言い、ソフィアナを抱いた後、国を去った。
やがて妊娠したソフィアナは体面を保つために父の秘書であるルキウスを形だけの夫として結婚した。
それから三年、ディオンが一時帰国すると聞き、ディオンがいなくても幸せに暮らしていることを裏切りではないかと感じたが思い違いをしていたというお話です。
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる