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第1話
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私アニカは、イルノーク伯爵家の長女で――家族から虐げられていた。
虐げられるようになったのは、妹レモノに婚約者ができてからだ。
レモノは嘘をついてまで、私の評判を落としていた。
「ガイス様と婚約者が決まった私は、誰とも婚約が決まらないお姉様に暴力を振るわれています!」
私は何もしていないのに、妹レモノはそんなことを家族の前で言い出す。
侯爵令息のガイスが一目惚れしたようで、婚約者ができたレモノは私を見下していた。
いつも婚約者の自慢話ばかりするレモノに対して、私は呆れてしまう。
それが不快だったのか徐々にレモノの態度が悪くなり、遂に嘘の報告をしていた。
レモノが嘘の報告をして以降――お父様とお母様は、私に対して酷い扱いをするようになる。
食事を出さない時もあって、掃除や魔物退治を命令していた。
両親としては魔物による事故で私を失ったことにして、娘をレモノだけにしたいようだ。
「――アニカ様。掃除の最中によそ見をしないでください」
掃除中に今までのことを思案していると、メイドの人から声をかけられてしまう。
背後に気配を感じたから、つい見てしまっただけだ。
私を注意したメイドは、背後から私に毒針を刺そうとしている。
恐らく家族から、私を仕留めるよう命令されているのだと推測できていた。
「貴方も掃除を命令されているはずですけど、私と距離が近くないですか?」
「……私はアニカ様を見張るよう、命令を受けています」
そう言ってメイドは、私の背後で掃除をしていた。
メイドの持つ毒針は、人の命を奪うことができる。
毒針のことを私が知っているのは、今の時点で何度も刺されていたからだ。
魔法で即座に解毒しているから、私は平然としている。
様々な毒針を試しているようだけど、私にはどんな毒も効かなかった。
■◇■◇■◇■◇■
毒針による嫌がらせを対処すると、お父様から呼び出されてしまう。
妹レモノを虐げた罪として、私は家族から魔物討伐を言い渡されていた。
外に出た私は、報告された場所の調査をするまで屋敷に帰ることができない。
魔物がいたら倒す必要があって、1人でやるのは無茶な命令だった。
命令された場所の草原には凶暴そうな動物――魔物が何十体もいて、普通なら敵わない。
それでも私の魔法なら、問題なく全ての魔物を対処することができた。
獰猛そうな狼の姿をした魔物の群れを魔法で撃退していき、私は呟く。
「本来なら冒険者を雇い、何日もかけて倒す魔物の群れです……私が1時間も経たずに倒したと伝えても、家族は信じないでしょう」
今まで魔物は全て倒したと報告したけど、家族は私の虚言だと言い出す。
実際に魔物はいなくなっているのに、魔物は逃げたか最初の報告が間違っていたと考えているようだ。
魔物は倒すと魔石を残して消滅して、その魔石は私が持つと消滅してしまう。
それが私の報告が虚言だと思われている理由の1つでもあって、何が起きているのかわからない。
とにかく魔物は全て倒したから、屋敷に戻ろうとしていた時だった。
「イルノーク家には優秀な魔法使いがいると聞き、興味があったのだが……アニカ様とは思わなかった」
男性の声が聞こえて、私は驚いてしまう。
魔物の目撃情報のあった場所に、人がいるとは思っていない。
更にその人が――公爵令息のジェイドで、私は更に驚いていた。
「ジェイド様は、どうしてここにいるのですか?」
ジェイドは短い黒髪の、穏やかそうな美青年だ。
この場にいることが信じられず、私が尋ねるとジェイドは話す。
「先ほど説明した通りだ……それよりもどうして、アニカ様は1人で戦っていたんだ?」
そう言ってジェイドは、私のことを心配してくれる。
相手の方が立場が上だから、私は嘘をつかずに聞かれたことに返答していた。
偶然ジェイドと出会えたことで――私は、耐える必要がなくなろうとしていた。
虐げられるようになったのは、妹レモノに婚約者ができてからだ。
レモノは嘘をついてまで、私の評判を落としていた。
「ガイス様と婚約者が決まった私は、誰とも婚約が決まらないお姉様に暴力を振るわれています!」
私は何もしていないのに、妹レモノはそんなことを家族の前で言い出す。
侯爵令息のガイスが一目惚れしたようで、婚約者ができたレモノは私を見下していた。
いつも婚約者の自慢話ばかりするレモノに対して、私は呆れてしまう。
それが不快だったのか徐々にレモノの態度が悪くなり、遂に嘘の報告をしていた。
レモノが嘘の報告をして以降――お父様とお母様は、私に対して酷い扱いをするようになる。
食事を出さない時もあって、掃除や魔物退治を命令していた。
両親としては魔物による事故で私を失ったことにして、娘をレモノだけにしたいようだ。
「――アニカ様。掃除の最中によそ見をしないでください」
掃除中に今までのことを思案していると、メイドの人から声をかけられてしまう。
背後に気配を感じたから、つい見てしまっただけだ。
私を注意したメイドは、背後から私に毒針を刺そうとしている。
恐らく家族から、私を仕留めるよう命令されているのだと推測できていた。
「貴方も掃除を命令されているはずですけど、私と距離が近くないですか?」
「……私はアニカ様を見張るよう、命令を受けています」
そう言ってメイドは、私の背後で掃除をしていた。
メイドの持つ毒針は、人の命を奪うことができる。
毒針のことを私が知っているのは、今の時点で何度も刺されていたからだ。
魔法で即座に解毒しているから、私は平然としている。
様々な毒針を試しているようだけど、私にはどんな毒も効かなかった。
■◇■◇■◇■◇■
毒針による嫌がらせを対処すると、お父様から呼び出されてしまう。
妹レモノを虐げた罪として、私は家族から魔物討伐を言い渡されていた。
外に出た私は、報告された場所の調査をするまで屋敷に帰ることができない。
魔物がいたら倒す必要があって、1人でやるのは無茶な命令だった。
命令された場所の草原には凶暴そうな動物――魔物が何十体もいて、普通なら敵わない。
それでも私の魔法なら、問題なく全ての魔物を対処することができた。
獰猛そうな狼の姿をした魔物の群れを魔法で撃退していき、私は呟く。
「本来なら冒険者を雇い、何日もかけて倒す魔物の群れです……私が1時間も経たずに倒したと伝えても、家族は信じないでしょう」
今まで魔物は全て倒したと報告したけど、家族は私の虚言だと言い出す。
実際に魔物はいなくなっているのに、魔物は逃げたか最初の報告が間違っていたと考えているようだ。
魔物は倒すと魔石を残して消滅して、その魔石は私が持つと消滅してしまう。
それが私の報告が虚言だと思われている理由の1つでもあって、何が起きているのかわからない。
とにかく魔物は全て倒したから、屋敷に戻ろうとしていた時だった。
「イルノーク家には優秀な魔法使いがいると聞き、興味があったのだが……アニカ様とは思わなかった」
男性の声が聞こえて、私は驚いてしまう。
魔物の目撃情報のあった場所に、人がいるとは思っていない。
更にその人が――公爵令息のジェイドで、私は更に驚いていた。
「ジェイド様は、どうしてここにいるのですか?」
ジェイドは短い黒髪の、穏やかそうな美青年だ。
この場にいることが信じられず、私が尋ねるとジェイドは話す。
「先ほど説明した通りだ……それよりもどうして、アニカ様は1人で戦っていたんだ?」
そう言ってジェイドは、私のことを心配してくれる。
相手の方が立場が上だから、私は嘘をつかずに聞かれたことに返答していた。
偶然ジェイドと出会えたことで――私は、耐える必要がなくなろうとしていた。
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