婚約者は迷いの森に私を捨てました

第９話

　この１週間でダウロスの成績が徐々に落ち、私の強化魔法が消えたからだと察して後悔しているようだ。

　そこまではわかったけど……ダウロスの婚約者になったミテラが、リオンと仲良くなろうとしたことは苛立ってしまう。
　今日のミテラの行動について、私はリオンに尋ねる。

「ミテラは、リオン様に声をかけてきたのですか？」
「そうだ。ダウロスがミテラを婚約者にしてすぐ、俺は声をかけてしまってな……ミテラは何を勘違いしたのか、それを俺がダウロスに嫉妬したと思ったようだ」
「確か……リオン様はダウロスに「ルカとの婚約を破棄をしてすぐミテラと婚約するとは、ルカのことはどうでもよかったのか？」と聞いたんですよね？」

　私が尋ねると、リオンが頷く。
　そこからどうしてダウロスに嫉妬しているとミテラが思い込むのか理解できないでいると、リオンは推測を話してくれる。

「そうだ。それをミテラは「今までリオンはミテラが好きだったけど声をかけられずにいて、ダウロスに先を越されたのが悔しくなり聞いた」と思ったらしい」

　ただリオンがダウロスに声をかけただけで、ミテラはそこまで勘違いできるのか。
　どれだけ自信があるのだろう……そんなことを考えてしまうと、リオンの発言に驚いてしまう。

「ミテラは俺に興味を持たれたいからか……ダウロスがルカを迷いの森に捨てたという計画を聞き、ミテラはそれを魔法道具で録音していると話してくれた」
「そ、そんなことをしていたのですか」
「ダウロスはルカを消そうとした計画の証拠をミテラに持たれているが、それを知らない。ミテラは「私はダウロスとはいつでも婚約破棄できますから、待っています」とか言ってたな」

　溜息を吐きながら、リオンは今日の出来事を話してくれる。
　もしダウロスの行動が発覚しても、ミテラは切り捨てるための準備をしていたようだ。

　確かに伯爵令嬢の私を消そうとしたことが他の人達に知られたら、侯爵家だとしても評判は落ちて信用を失う。
　私と同じ立場の伯爵令嬢ミテラなら、恐怖して婚約するしかなかったとでも演技すれば問題なく婚約を破棄できそうだ。

　その手段は公爵令息のリオンが婚約者になる場合、ダウロスを捨てるために使う手段だと推測できる。
　ミテラは備えているようだけど……知ることができたから、その証拠を利用したかった。