婚約者は迷いの森に私を捨てました

天宮有

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第6話

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ダウロス視点

 迷いの森に婚約者ルカを捨ててから、数日が経っていた。

 今日はルカのルシード伯爵家の屋敷に呼び出され、俺は応接室で話し合う。
 行方不明になったルカは迷いの森にいる可能性が高く、俺達ソルギナ侯爵家が捜索中となっていた。

 実際は誰も捜索していない――ソルギナ侯爵家が捜索していると貴族達に伝えることで、誰にも探させないようにしている。
 まだ生きている可能性があるから、探索はさせずルナを放置しておきたかった。

 所持している迷いの森で位置を知る魔法道具は、ルナの捜索用として複数購入したことにする。
 ルカは間違いなく生きてはいないから、調べる必要はない。

 俺は予定通り婚約者を失い悲しんでいる演技をして、ミテラが慰める姿を学園の生徒達に見せつける。
 その後に婚約者を変えることにすれば、納得してもらえると確信していた。

 これからの行動を考えていると……ルカの父でルシード伯爵家の領主シムカが、俺に尋ねる。

「ダウロス様、ルカはまだ見つからないのでしょうか?」
「捜索はしている。迷いの森は危険で魔法道具が必要だから、大勢で捜索できん……わかって欲しい」

 こう言っておけば、ルカのルシード伯爵家は納得するしかない。
 面倒だが仕方ないことと考えていたのに、今日は前と違ってルシード伯爵家の領主シムカが俺に尋ねる。

「本当にダウロス様は、ルカを捜索しているのですか?」
「……なんだと?」
「私達が捜索しようとすれば「任せて欲しい」と言い、未だにルカは見つかっていません」

 もしルシード伯爵家が迷いの森を捜索して、生きているルカが見つかれば計画が潰れてしまう。
 最初は納得していたが、数日が経ち俺達ソルギナ侯爵家の行動に疑問を持っている。
 捜索することは阻止したい……そう考えながら、閃いた俺は激怒して叫ぶ。

「捜索しているに決まっているだろう! そもそも迷いの森に行ったルカが悪い! 婚約を破棄してもよいのだぞ!」

 ルシード伯爵家としては、ソルギナ侯爵家との関係を維持したいに決まっている。
 これで黙ればよし、理想は娘を失い錯乱したシムカがルカと俺の婚約破棄を受け入れることだ。

 慰謝料を払うことになるが、ルカが悪いことにしているから大した額にはならないはず。
 流石にそこまで馬鹿ではないかと考えていた時、シムカは怯まずに話す。

「婚約を破棄してもよい。ですか……もうダウロス様は、ルカが生きていないと思っておられるようですね」
「言いたくはないが、その通りだ」
「わかりました。私としても、ダウロス様とはもう関わりたくありません」

 どうやら婚約破棄を受け入れるようで、俺は内心喜んでいた。

 この時点でシムカは、公爵令息リオンから全てを聞いている。
 そのことを何も知らない俺は全て上手くいったと考え、ルカとの婚約を破棄することにしていた。

 婚約破棄の手続きを済ませて――これから俺の人生は、大きく変わることとなる。
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