6 / 14
第6話
しおりを挟む
ダウロス視点
迷いの森に婚約者ルカを捨ててから、数日が経っていた。
今日はルカのルシード伯爵家の屋敷に呼び出され、俺は応接室で話し合う。
行方不明になったルカは迷いの森にいる可能性が高く、俺達ソルギナ侯爵家が捜索中となっていた。
実際は誰も捜索していない――ソルギナ侯爵家が捜索していると貴族達に伝えることで、誰にも探させないようにしている。
まだ生きている可能性があるから、探索はさせずルナを放置しておきたかった。
所持している迷いの森で位置を知る魔法道具は、ルナの捜索用として複数購入したことにする。
ルカは間違いなく生きてはいないから、調べる必要はない。
俺は予定通り婚約者を失い悲しんでいる演技をして、ミテラが慰める姿を学園の生徒達に見せつける。
その後に婚約者を変えることにすれば、納得してもらえると確信していた。
これからの行動を考えていると……ルカの父でルシード伯爵家の領主シムカが、俺に尋ねる。
「ダウロス様、ルカはまだ見つからないのでしょうか?」
「捜索はしている。迷いの森は危険で魔法道具が必要だから、大勢で捜索できん……わかって欲しい」
こう言っておけば、ルカのルシード伯爵家は納得するしかない。
面倒だが仕方ないことと考えていたのに、今日は前と違ってルシード伯爵家の領主シムカが俺に尋ねる。
「本当にダウロス様は、ルカを捜索しているのですか?」
「……なんだと?」
「私達が捜索しようとすれば「任せて欲しい」と言い、未だにルカは見つかっていません」
もしルシード伯爵家が迷いの森を捜索して、生きているルカが見つかれば計画が潰れてしまう。
最初は納得していたが、数日が経ち俺達ソルギナ侯爵家の行動に疑問を持っている。
捜索することは阻止したい……そう考えながら、閃いた俺は激怒して叫ぶ。
「捜索しているに決まっているだろう! そもそも迷いの森に行ったルカが悪い! 婚約を破棄してもよいのだぞ!」
ルシード伯爵家としては、ソルギナ侯爵家との関係を維持したいに決まっている。
これで黙ればよし、理想は娘を失い錯乱したシムカがルカと俺の婚約破棄を受け入れることだ。
慰謝料を払うことになるが、ルカが悪いことにしているから大した額にはならないはず。
流石にそこまで馬鹿ではないかと考えていた時、シムカは怯まずに話す。
「婚約を破棄してもよい。ですか……もうダウロス様は、ルカが生きていないと思っておられるようですね」
「言いたくはないが、その通りだ」
「わかりました。私としても、ダウロス様とはもう関わりたくありません」
どうやら婚約破棄を受け入れるようで、俺は内心喜んでいた。
この時点でシムカは、公爵令息リオンから全てを聞いている。
そのことを何も知らない俺は全て上手くいったと考え、ルカとの婚約を破棄することにしていた。
婚約破棄の手続きを済ませて――これから俺の人生は、大きく変わることとなる。
迷いの森に婚約者ルカを捨ててから、数日が経っていた。
今日はルカのルシード伯爵家の屋敷に呼び出され、俺は応接室で話し合う。
行方不明になったルカは迷いの森にいる可能性が高く、俺達ソルギナ侯爵家が捜索中となっていた。
実際は誰も捜索していない――ソルギナ侯爵家が捜索していると貴族達に伝えることで、誰にも探させないようにしている。
まだ生きている可能性があるから、探索はさせずルナを放置しておきたかった。
所持している迷いの森で位置を知る魔法道具は、ルナの捜索用として複数購入したことにする。
ルカは間違いなく生きてはいないから、調べる必要はない。
俺は予定通り婚約者を失い悲しんでいる演技をして、ミテラが慰める姿を学園の生徒達に見せつける。
その後に婚約者を変えることにすれば、納得してもらえると確信していた。
これからの行動を考えていると……ルカの父でルシード伯爵家の領主シムカが、俺に尋ねる。
「ダウロス様、ルカはまだ見つからないのでしょうか?」
「捜索はしている。迷いの森は危険で魔法道具が必要だから、大勢で捜索できん……わかって欲しい」
こう言っておけば、ルカのルシード伯爵家は納得するしかない。
面倒だが仕方ないことと考えていたのに、今日は前と違ってルシード伯爵家の領主シムカが俺に尋ねる。
「本当にダウロス様は、ルカを捜索しているのですか?」
「……なんだと?」
「私達が捜索しようとすれば「任せて欲しい」と言い、未だにルカは見つかっていません」
もしルシード伯爵家が迷いの森を捜索して、生きているルカが見つかれば計画が潰れてしまう。
最初は納得していたが、数日が経ち俺達ソルギナ侯爵家の行動に疑問を持っている。
捜索することは阻止したい……そう考えながら、閃いた俺は激怒して叫ぶ。
「捜索しているに決まっているだろう! そもそも迷いの森に行ったルカが悪い! 婚約を破棄してもよいのだぞ!」
ルシード伯爵家としては、ソルギナ侯爵家との関係を維持したいに決まっている。
これで黙ればよし、理想は娘を失い錯乱したシムカがルカと俺の婚約破棄を受け入れることだ。
慰謝料を払うことになるが、ルカが悪いことにしているから大した額にはならないはず。
流石にそこまで馬鹿ではないかと考えていた時、シムカは怯まずに話す。
「婚約を破棄してもよい。ですか……もうダウロス様は、ルカが生きていないと思っておられるようですね」
「言いたくはないが、その通りだ」
「わかりました。私としても、ダウロス様とはもう関わりたくありません」
どうやら婚約破棄を受け入れるようで、俺は内心喜んでいた。
この時点でシムカは、公爵令息リオンから全てを聞いている。
そのことを何も知らない俺は全て上手くいったと考え、ルカとの婚約を破棄することにしていた。
婚約破棄の手続きを済ませて――これから俺の人生は、大きく変わることとなる。
43
お気に入りに追加
807
あなたにおすすめの小説

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。
けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。
悪夢はそれで終わらなかった。
ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。
嵌められてしまった。
その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。
裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。
※他サイト様でも公開中です。
2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。
本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。
シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。
その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。
そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。
ざまぁ展開のハピエンです。

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから
水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」
「……はい?」
子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。
だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。
「エリオット様と別れろって言っているの!」
彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。
そのせいで、私は怪我をしてしまった。
いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。
だって、彼は──。
そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい
マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。
理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。
エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。
フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。
一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?
ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」
ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。
それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。
傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる