上 下
1 / 21

第1話

しおりを挟む
「ルリサの魔力は増加し続けて危険だ。今すぐこの国から出て行け!!」

 侯爵令嬢の私ルリサ・ラベーリは、城に呼び出されて国王から国外追放を言い渡されていた。

 玉座がある大広間には私の家族と王子達、そして貴族の人達が集まっている。
 王子達が並んでいる中には、私の婚約者ゼノラス王子もいた。
 ゼノラスが笑みを浮かべているのが理解できないでいると、陛下が話す。

「ルリサは常に魔力量が増加していく特殊な力がある。その力でギアノ国は繁栄したが、今のルリサは危険すぎる!」

「陛下、以前にも言いましたけど……私の魔力を利用しなければ、増加することはありません」

 私は2年前に魔法が扱えるようになってから、極めて特殊な力を持っている。
 使えば使うほど体内に宿せる魔力の量が増加していく力で、その力を使いギアノ国に様々な恩恵を与えていた。

 そして――国王や貴族達は、私の力を利用することに決める。
 ギアノ国は発展していったけど、未だに増加していく私の魔力に恐怖したようだ。

 自分の力を把握している私は、今まで自分の力を説明していた。
 私が再び説明すると、陛下が呆れながら話す。

「ふん。貴様の力などもう利用していない、それでも魔力が増加しているではないか」

「ギアノ国の大地は、他国の大地と比べて膨大な魔力に溢れています。それは私の力によるものです」

 そしてその大地の魔力を、ギアノ国の人達は魔法道具で利用している。
 それを止める――もしくは私が国外に出ない限り、私の魔力は常に増加することとなってしまう。

 私が説明しても、この大広間にいる人達は信じようとしなかった。

「ふざけたことを言うな! 貴様1人にそんな力があるものか!」

 全て私の膨大すぎる魔力によるものだけど、それを認めるとラベーリ侯爵家から力を得ていることとなる。
 貴族の人達は領地の魔力が凄いと考えるようになり、私の発言を否定した。

「ルリサ様の体内に宿す魔力が今まで通り増え続けると、来年にはギアノ国の全員の魔力を束ねても敵わなくなるでしょう」

 国王の隣にいる宰相が説明したけど、それが私を国外追放したい理由のようだ。
 宰相の発言を聞いて、貴族の人達が私に暴言を吐く。

「もしルリサ様が魔力を制御できなくなれば、ギアノ国が滅びるかもしれない……可能性が低いとしても、国が滅びるかもしれないのだぞ!」

「暴走してルリサ様が消えるだけなら構わないが、我々を巻き込まないでいただきたい!!」

 婚約者のゼノラス、私の家族も助ける気がないようで――国王が叫ぶ。

「魔力の増加を抑えることができないのなら、ルリサをギアノ国に住まわせるわけにはいかん。今すぐに出て行け!!」

 私が出て行けば、ギアノ国は大変なことになる。
 これから先に起こることを説明しても、大広間にいる人は誰も信じようとしない。

 全て私の推測で、実際に起きていないからだ。
 そして……私は、全てを諦めていた。

「誰も信じないのでしたら――私は、ギアノ国から出て行きます」

 ギアノ国がどうなっても構わないと、私は考えるようになる。
 吹っ切れることができた私は、国を出て自由になろうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです

もぐすけ
恋愛
 カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。  ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。  十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。  しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。  だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。  カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。  一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

悪役令嬢はヒロインの幼なじみと結ばれました

四つ葉菫
恋愛
「シャルロッテ・シュミット!! お前に婚約破棄を言い渡す!」  シャルロッテは婚約者である皇太子に婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には『ヒロイン』の姿が。  理由はシャルロッテがヒロインを何度も虐めたためだ。  覚えのない罪ではあるが、ここまでの道のりはゲームの筋書き通り。悪役は断罪される運命なのだろうと、諦めかけたその時――。 「ちょっと待ってくださいっ!!」  ヒロインの幼なじみであり、ゲームのサポートキャラであるカイル・ブレイズが現れた――。 ゆる〜い設定です。 なので、ゆる〜い目でご覧下さい。

【完結】ごめんなさい実はもう私、記憶戻ってるの

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
恋愛
夫の浮気現場を偶然目撃してしまったサリア。 彼女は事実を隠蔽しようとした夫に引き倒され、 偶然頭を打ち記憶喪失になってしまう。 彼は記憶喪失になったサリアを見てやり直す好機だとし、 事実を伝えないままサリアの良い夫を演じている。 夫は思った。 このままサリアが記憶喪失で居続けてくれれば、 浮気のこともなかったことになり、サリアとの関係もやり直せると。 しかし、夫は気づいていなかったのだ。 すでにサリアが記憶を取り戻しているという事実に。 そして彼女に、自ら罪を告発するかどうかを試されてるということも。

婚約者の隣にいるのは初恋の人でした

四つ葉菫
恋愛
ジャスミン・ティルッコネンは第二王子である婚約者から婚約破棄を言い渡された。なんでも第二王子の想い人であるレヒーナ・エンゲルスをジャスミンが虐めたためらしい。そんな覚えは一切ないものの、元から持てぬ愛情と、婚約者の見限った冷たい眼差しに諦念して、婚約破棄の同意書にサインする。 その途端、王子の隣にいたはずのレヒーナ・エンゲルスが同意書を手にして高笑いを始めた。 楚々とした彼女の姿しか見てこなかったジャスミンと第二王子はぎょっとするが……。 前半のヒロイン視点はちょっと暗めですが、後半のヒーロー視点は明るめにしてあります。 ヒロインは十六歳。 ヒーローは十五歳設定。 ゆるーい設定です。細かいところはあまり突っ込まないでください。 

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです

あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」 伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

処理中です...