婚約破棄ですか？ どうなっても知りませんよ

第２３話

　ドリアス殿下は奴隷がつける首輪をつけていて、明らかに目立っている。
　アルクから聞いていたけど……魔方陣を話した罰として、奴隷の首輪をつけるよう命じられたようだ。

　ドリアス殿下は特定の単語に関することを口に出せず、国外から出ることができないらしい。
　周囲からも蔑まれているけど、相手が王子でも陛下の命令だから許されているようだ。

　――集会は何事もなく終わり、私は学園の隠し部屋にアルクを招いていた。
　奴隷の首輪による魔法道具は、私にとって予想外の事態を引き起こすかもしれない。

　そう考えると、私はアルクに相談したくなっていた。
　私が危惧しているのは「キャシーと関わってはならない」と行動制限がドリアス殿下にかけられているかどうかだ。

　元婚約者、公爵令嬢、学園が同じという関係から、流石に私に関与しないのは不可能だと考えているはず。
　それでも不安になってしまってアルクに事情を説明すると、少し思案しながら返答してくれた。

「キャシー様と関われなければ困るのはドリアス殿下の方ですが、ドリアス殿下は困っている様子はありませんでした」

「それは……そうですね」

「今までキャシー様の予想通り動いていますし、言動の制限は魔方陣関係なのではないでしょうか?」

　アルクがドリアス殿下の首輪が持つ力を考えて話し、私は納得していた。

　首輪に様々な命令の力をかけるのには、高度な魔法使いの協力が必要となる。
　間違いなく「魔方陣のことは誰にも話さない」「魔方陣を稼働させる」「逃げることは許されない」の命令は絶対のはずだ。
　
　これ以上行動を制限するとなると、国外の優秀な魔法使いを呼ぶしかないはず。
　陛下的にもあまりよくないようだから、アルクの言うとおり私に関することは命令できなさそうだ。
　
　私の予想通り動いているみたいだから……アルクの言う通り大丈夫のはず。

「アルク様のお陰で不安がなくなりました。ありがとうございます」

「気にしないでください……ドリアス殿下の存在をキャシー様の中から消せるのなら、些細なことです」

　準備はできているから、後は来月の集会でドリアス殿下が動くのを待つだけ。

　そして1ケ月後――ドリアス殿下は、私の予想通り動いていた。