婚約破棄ですか？ どうなっても知りませんよ

第１２話

ドリアス視点

　魔方陣の魔法道具を起動させる事には成功した。
　問題は操作が下手で肉体に負荷がかかり、魂が削れて寿命を半年ほど失ってしまったことだ。

　あまりの苦痛に意識を失い――ベッドの上で目覚め、俺は自らの異変に気付く。
　再び全身にとてつもない苦痛が走り、動くことができなくなっていた。

　まるでこうなることがわかっていたかのように、即座に介護をする者がやって来る。
　苦痛を浴びて、何も食べることすらできず……俺はのたうち回るしかない。

「ど、どうして、こんな目に……」

　思い当たる理由は、魔方陣を起動させたから以外にありえない。

　肉体に負荷がかかるとは聞いていた。
　寿命が１年、クノレラと共に稼働させることで半年に抑えることには成功した。

　それでも――ここまで苦しむことになるだなんて、想像していない。

「こんな目に……こんな目に３ケ月に一度合わなければならないだと……！？」

　俺は激痛に苦しみながら叫ぶも、声すら出ていないようだ。
　生死を何度も彷徨い……とにかくキャシーが悪いと考えるようになる。

「全てキャシーが悪い……次魔方陣が使う前に、元の環境に戻す必要がある！」

　婚約破棄を宣言した以上、再び婚約することは不可能だろう。

　まず現婚約者のクノレラとの婚約を破棄する必要があって、それにはリスクがある。
　クノレラの家から反感を受け、更にキャシーと婚約できる可能性は低い……無理だ。

　なにより、ここまで殺意の感情を沸き立たせるキャシーとは婚約したくない。
　それなら怒鳴り、脅すことで――キャシーを従わせることを決意する。

　この時――俺は、キャシーが今まで魔方陣を稼働させていたことなど、一切考慮していなかった。