婚約破棄ですか？ どうなっても知りませんよ

第３話

　数日が経過して、魔法学園でドリアス殿下の評判は落ち続けている。
　今まで私がサポートしていたけど、それがなくなり学園内での成績も下位らしい。

「――報告は以上になります」

「アルク様、ありがとうございます」

　私は学園長からもらった学園内の隠し部屋で、伯爵貴族アルクの報告を受けていた。

　学年トップの成績を誇る生徒は魔法研究の為に私室を貰うことができて、私は今まで申請していない。　　
　ドリアス殿下に婚約破棄を言い渡されてから……私は反撃する為に申請することで、隠し部屋を自由に使うことができている。

「階段の横に扉があって部屋になっているとは……学園でも認められた一握りの生徒しか使えない隠し部屋を教えてくださり、ありがとうございます」

　私がお礼を言ったのに、アルクにお礼を言われてしまう。
　領地が近いから仲の良かった伯爵貴族で、年は1つ下だ。

　短い銀色の奇麗な髪、大きな瞳と人懐っこい笑顔が可愛く、学園で私の信頼できる生徒でもある。
　アルクには反撃の準備をするために私が貰った隠し部屋の場所を教えることで、まずは情報を集めてもらった。

　本当は1人でやろうとしていたけど、婚約破棄を受けた翌日にアルクが私を心配してくれた。
　私を貶めたドリアス殿下、クノレラとその友人達に闇討ちでもしそうな程に怒ってくれたから、私は今後の計画を話している。

　暴走して取り返しのつかないことをするかもしれないのなら、私に協力してもらう方が安心だ。
　話を聞いて冷静になり行動してくれるアルクに、私は再確認する。

「アルク様は力になってくれると仰ってくれましたけど、大丈夫ですか？」

「はい！　キャシー様が不当な扱いを受けないためなら、私はどうなっても構いません！」

「アルク自身も大事にしてください……ありがとうございます」

「わかりました！」

　力強く頷いてくれて、アルクはクノレラとドリアス殿下の情報収集をしてくれる。

　私が動こうと思ったけど、殿下に忠告したこともあって警告されている可能性があるから、協力者が欲しかった。

「アルクの報告を聞く限り予定通り進んでいます……そろそろ、ドリアス殿下に限界がくるでしょう」

　婚約破棄を受けた時に私が煽ったこともあって、ドリアス殿下は全て私が悪いと思っているはず。

　明後日には学園で月に一度、全校生徒を集める集会がある。
　ドリアス殿下は権力を使って舞台に登場して、私を貶めようと行動に出る可能性が高い。

「……キャシー様は、ドリアス殿下のことが詳しいですね」

　少し不満そうに呟くアルクに対して、私は溜息を吐きながら返答する。

「一応婚約者でしたからね。早く忘れたいものです……公の場で私を悪人にしようとしたのですから、その報いは受けさせます」

　もし明後日アルク殿下が集会で行動に出たら、それは私が予想できている一番愚かな行動だ。

　そして２日後……ドリアス殿下は、私が予想していた通りの行動に出ていた。