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第1話
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「俺はサフィラとの婚約を破棄して、エイダを新しい婚約者にする!」
リレック伯爵家の屋敷にやって来たヴァン・ドルグア王子は、私サフィラ・リレックに向かって宣言した。
屋敷にある広い応接室には私の父もいて――正面には婚約者のヴァンと、私の妹エイダがいる。
いきなり婚約を破棄すると言われて困惑していると、エイダが話し出す。
「魔法使いとして優秀な私と比べて、お姉様は何もしていません。リレック家の恥です!」
「エイダの言うとおりだ――サフィラは、家から追い出すことにした」
「……えっ?」
父にいきなり家から追い出すと言われて、私は更に困惑してしまう。
その反応を見ていたヴァンは、溜息を吐いて説明した。
「当然の末路だ。魔法使いとしてドルグア国に貢献しているエイダと比べて、サフィラは何もしていないではないか」
「それなのにお姉様は現状を変えようとしません……妹である私の評判も落ちてしまうから、私は迷惑しています!」
「サフィラは優秀過ぎる妹エイダと比べられるのが嫌になって逃げ出し、家を捨てたことにする。これからただの平民として生きろ!」
これは間違いなく、エイダによるものだ。
姉に迷惑していると言い広めているのは知っていたけど、私を家から追い出したい程とは考えていない。
どうやら私の婚約者ヴァンと父をエイダが説得することで、追い出す準備を進めていたようだ。
エイダは魔法使いとして成果を出しているのは間違いなくて、ヴァン王子としては婚約者を私から変えたかったのかもしれない。
何を言っても無意味かもしれないけど、私は言っておきたいことがあった。
「ヴァン殿下、そしてお父様……私が魔法使いとして結果を出せないのは、周辺の大地に宿る魔力を魔法で強化ているからです」
これはドルグア国の人が稀に使える魔法のようで、数百年間も使う人がいなかったらしい。
歴史に残っている魔法を私が使えるようになり国王が喜び、王子のヴァンと婚約させた程の魔法だった。
今の私が強化できる範囲はリレック伯爵家の領地程度だけど、使い続けると徐々に範囲が広くなるらしい。
その恩恵を受けたことでエイダは優秀な魔法使いになったけど、私の魔法を信じていないようだ。
「それはお姉様、いいえサフィラの妄想よ!」
「……エイダは、何を言っているの?」
「事実よ。偶然リレック領の魔力が強まったのを、サフィラが勘違いしただけに決まっているわ!」
エイダは断言するけど、私の魔力が減っているから間違いなく魔法は使われている。
どうやらエイダは、私の恩恵を受けていると認めたくないようだ。
「エイダが調査したことで、サフィラの妄想と発覚した。父上はサフィラに失望していて、俺の婚約者を変える提案に納得してくれた」
そんなことをヴァンが言うけど、エイダはリレック家の領地を調査したことなんてない。
今までの活躍と成果から、エイダが調べたのなら間違いないと国王や王子は考えているようだ。
「……これから私がいなくなれば、すぐに真相がわかります」
「ああ。お前の妄想と発覚するだろう」
今までリレック家、王家のために魔法を使い続けていたけど……もう、使わなくてもいい。
自由になれるのなら平民でも構わない気がして、私は説得を諦めることにした。
「そんなことをいう人達とは、2度と関わりたくありません」
私はそう言って、すぐに屋敷から出て行くことにしていた。
領地にかけていた魔法も解いたから、数日かけて強化されていた魔力が徐々に消えていく。
そうなればエイダの魔力も急激に弱まり、今までのような結果は絶対に出せない。
妹は私を家から追い出して――これから、私の元家族やヴァンは後悔することとなる。
リレック伯爵家の屋敷にやって来たヴァン・ドルグア王子は、私サフィラ・リレックに向かって宣言した。
屋敷にある広い応接室には私の父もいて――正面には婚約者のヴァンと、私の妹エイダがいる。
いきなり婚約を破棄すると言われて困惑していると、エイダが話し出す。
「魔法使いとして優秀な私と比べて、お姉様は何もしていません。リレック家の恥です!」
「エイダの言うとおりだ――サフィラは、家から追い出すことにした」
「……えっ?」
父にいきなり家から追い出すと言われて、私は更に困惑してしまう。
その反応を見ていたヴァンは、溜息を吐いて説明した。
「当然の末路だ。魔法使いとしてドルグア国に貢献しているエイダと比べて、サフィラは何もしていないではないか」
「それなのにお姉様は現状を変えようとしません……妹である私の評判も落ちてしまうから、私は迷惑しています!」
「サフィラは優秀過ぎる妹エイダと比べられるのが嫌になって逃げ出し、家を捨てたことにする。これからただの平民として生きろ!」
これは間違いなく、エイダによるものだ。
姉に迷惑していると言い広めているのは知っていたけど、私を家から追い出したい程とは考えていない。
どうやら私の婚約者ヴァンと父をエイダが説得することで、追い出す準備を進めていたようだ。
エイダは魔法使いとして成果を出しているのは間違いなくて、ヴァン王子としては婚約者を私から変えたかったのかもしれない。
何を言っても無意味かもしれないけど、私は言っておきたいことがあった。
「ヴァン殿下、そしてお父様……私が魔法使いとして結果を出せないのは、周辺の大地に宿る魔力を魔法で強化ているからです」
これはドルグア国の人が稀に使える魔法のようで、数百年間も使う人がいなかったらしい。
歴史に残っている魔法を私が使えるようになり国王が喜び、王子のヴァンと婚約させた程の魔法だった。
今の私が強化できる範囲はリレック伯爵家の領地程度だけど、使い続けると徐々に範囲が広くなるらしい。
その恩恵を受けたことでエイダは優秀な魔法使いになったけど、私の魔法を信じていないようだ。
「それはお姉様、いいえサフィラの妄想よ!」
「……エイダは、何を言っているの?」
「事実よ。偶然リレック領の魔力が強まったのを、サフィラが勘違いしただけに決まっているわ!」
エイダは断言するけど、私の魔力が減っているから間違いなく魔法は使われている。
どうやらエイダは、私の恩恵を受けていると認めたくないようだ。
「エイダが調査したことで、サフィラの妄想と発覚した。父上はサフィラに失望していて、俺の婚約者を変える提案に納得してくれた」
そんなことをヴァンが言うけど、エイダはリレック家の領地を調査したことなんてない。
今までの活躍と成果から、エイダが調べたのなら間違いないと国王や王子は考えているようだ。
「……これから私がいなくなれば、すぐに真相がわかります」
「ああ。お前の妄想と発覚するだろう」
今までリレック家、王家のために魔法を使い続けていたけど……もう、使わなくてもいい。
自由になれるのなら平民でも構わない気がして、私は説得を諦めることにした。
「そんなことをいう人達とは、2度と関わりたくありません」
私はそう言って、すぐに屋敷から出て行くことにしていた。
領地にかけていた魔法も解いたから、数日かけて強化されていた魔力が徐々に消えていく。
そうなればエイダの魔力も急激に弱まり、今までのような結果は絶対に出せない。
妹は私を家から追い出して――これから、私の元家族やヴァンは後悔することとなる。
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