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第1話
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男爵令嬢の私、アミリア・ファグトは、屋敷の庭で聖獣リオウと話をしていた。
「リオウ……昨日は大活躍だったわね。ありがとう」
『私は、アミリアの為に動いただけです』
私の正面にいる白く巨体な大型犬――聖獣リオウは、そう言ってくれる。
それを執事やメイドが呆れたように眺めているのは、リオウの発言がただ吠えているようにしか聞こえていないからだ。
ファグド男爵家の守り神とも呼ばれる聖獣リオウの声は、私にしか聞こえないらしい。
リオウは数年前――小犬だった時に私が部屋で飼っていて、その時から意志疎通ができていた。
成長したら隠し切れないと考えていた時、リオウが屋敷を守ってくれたことで家族に認められる。
飼うことが決まって、その時から私にしか懐いていなかったけど……姉ラミダは「自分が拾った」と吹聴していたようだ。
年が2つ上の姉ラミダは私の評判を下げて、自分の評判を上げることを得意としていた。
執事やメイドが私を蔑んでいるのも、リオウに好かれようと常に声をかけているとか言っているに違いない。
それでも……私はリオウと一緒にいられるのなら、このままでも別に構わないと考えていた。
■◇■◇■◇■◇■
「アミリア。貴方の存在は邪魔なの、今すぐに家から出て行って!」
私は大部屋で、姉の発言を聞き驚いていた。
リオウと楽しく話をして数時間後――私は姉ラミダに呼び出され、家族会議となっている。
家族会議の場にはラミダとお父様とお母様、そしてラミダの婚約者ケドスの姿があった。
どうしていきなり家を追い出されることになるのかがわからないでいると、お母様が私を見下しながら話す。
「ラミダがケドス様と婚約したのは知っているでしょう……家の汚点になりそうなアミリアは、消えて欲しいと思っているわ!」
発言を聞いて、お母様の隣で頷くのは侯爵令息のゲドスだ。
「俺はラミダから貴様の悪評を聞いている……聖獣を従わせ私利私欲のために使おうと目論んでいるようだな、そんな奴が俺の義妹になれると思うな!」
ケドスの叫びを聞いて、私は納得する。
姉ラミダは「聖獣は一番私に懐いている」と吹聴していたから、常に聖獣の傍にいる私が疎ましくなったに違いない。
ケドスはラミダの発言を信じているから、追い出さないと危険な存在だと思い込んでいるようだ。
そんなケドスの発言を聞きながら、お父様が苦そうに呟く。
「追い出すと言っても屋敷からだ……平民のような暮らしをするだけで、それがアミリアに相応しいだろう」
「お父様は優しいですね……それでもアミリアはファグド家の恥なので、行動を制限する魔法道具の首輪を着けさせ、常に状況を把握できるようにしましょう」
お父様の発言に賛同するように、姉ラミダが首輪の魔法道具を取り出して机の上に置く。
平民のような扱いとお父様は言ったけど……行動を制限する首輪を着けされる時点で、奴隷のような扱いだ。
ラミダと婚約者ケドス様とお母様は私を追い出したいようだけど、お父様だけは最悪の事態を想像していそう。
もし私だけしかリオウが懐かなければ最悪の事態だから……勘当はしない方がいいと考えていそうだ。
お父様とは違い、ラミダは私を支配する為に首輪の魔法道具を着けさせようとしている。
姉ラミダに支配されるのは絶対に嫌だから――私は、家を追い出されようと決意していた。
「リオウ……昨日は大活躍だったわね。ありがとう」
『私は、アミリアの為に動いただけです』
私の正面にいる白く巨体な大型犬――聖獣リオウは、そう言ってくれる。
それを執事やメイドが呆れたように眺めているのは、リオウの発言がただ吠えているようにしか聞こえていないからだ。
ファグド男爵家の守り神とも呼ばれる聖獣リオウの声は、私にしか聞こえないらしい。
リオウは数年前――小犬だった時に私が部屋で飼っていて、その時から意志疎通ができていた。
成長したら隠し切れないと考えていた時、リオウが屋敷を守ってくれたことで家族に認められる。
飼うことが決まって、その時から私にしか懐いていなかったけど……姉ラミダは「自分が拾った」と吹聴していたようだ。
年が2つ上の姉ラミダは私の評判を下げて、自分の評判を上げることを得意としていた。
執事やメイドが私を蔑んでいるのも、リオウに好かれようと常に声をかけているとか言っているに違いない。
それでも……私はリオウと一緒にいられるのなら、このままでも別に構わないと考えていた。
■◇■◇■◇■◇■
「アミリア。貴方の存在は邪魔なの、今すぐに家から出て行って!」
私は大部屋で、姉の発言を聞き驚いていた。
リオウと楽しく話をして数時間後――私は姉ラミダに呼び出され、家族会議となっている。
家族会議の場にはラミダとお父様とお母様、そしてラミダの婚約者ケドスの姿があった。
どうしていきなり家を追い出されることになるのかがわからないでいると、お母様が私を見下しながら話す。
「ラミダがケドス様と婚約したのは知っているでしょう……家の汚点になりそうなアミリアは、消えて欲しいと思っているわ!」
発言を聞いて、お母様の隣で頷くのは侯爵令息のゲドスだ。
「俺はラミダから貴様の悪評を聞いている……聖獣を従わせ私利私欲のために使おうと目論んでいるようだな、そんな奴が俺の義妹になれると思うな!」
ケドスの叫びを聞いて、私は納得する。
姉ラミダは「聖獣は一番私に懐いている」と吹聴していたから、常に聖獣の傍にいる私が疎ましくなったに違いない。
ケドスはラミダの発言を信じているから、追い出さないと危険な存在だと思い込んでいるようだ。
そんなケドスの発言を聞きながら、お父様が苦そうに呟く。
「追い出すと言っても屋敷からだ……平民のような暮らしをするだけで、それがアミリアに相応しいだろう」
「お父様は優しいですね……それでもアミリアはファグド家の恥なので、行動を制限する魔法道具の首輪を着けさせ、常に状況を把握できるようにしましょう」
お父様の発言に賛同するように、姉ラミダが首輪の魔法道具を取り出して机の上に置く。
平民のような扱いとお父様は言ったけど……行動を制限する首輪を着けされる時点で、奴隷のような扱いだ。
ラミダと婚約者ケドス様とお母様は私を追い出したいようだけど、お父様だけは最悪の事態を想像していそう。
もし私だけしかリオウが懐かなければ最悪の事態だから……勘当はしない方がいいと考えていそうだ。
お父様とは違い、ラミダは私を支配する為に首輪の魔法道具を着けさせようとしている。
姉ラミダに支配されるのは絶対に嫌だから――私は、家を追い出されようと決意していた。
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