婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

第２０話

バハムス視点

　数日後――メリタとの婚約の手続きが終わり、俺は安堵していた。

　今まで立場が下の者達に陰で非難されていたが、これで少しはマシになるはずだ。

　そう考えていると、部屋でメリタが俺に話してくれる。

「もう学園中に、私がバハムス様の婚約者になったと噂を流すようにしています」

「そうか。これで俺の悪評も消えるだろう！」

　メリタの気遣いが嬉しく、俺は抱き寄せられて安堵するしかない。

　年下に助けられている姿など他者には見せられないが、部屋で２人きりなら問題ないだろう。

　そう考えていると、メリタの声が聞こえる。

「はい。最近の私はバハムス様の評判が落ちないよう問題を起こしていません。それはバハムス様の功績となるでしょう」

「メリタ……ありがとう」

　１ヶ月ぐらいの間、今まで問題ばかり起こしていたメリタは行動しなくなっている。

　その理由を婚約したからと伝えることで、俺の評判をよくしようとしてくれる。

　冷静に考えると――問題行動を起こさないのは普通なことなのに、この時の俺はメリタの行動で救われた気持ちになっていた。