5 / 19
第5話
しおりを挟む
マルクスと話し合ってから、数日が経っていた。
準備はできつつあるようだけど、私は城に呼び出されてしまう。
アシェルの部屋に到着すると、エミリーの姿はなかった。
部屋の扉を閉めると、アシェルは私に向かって数枚の紙を渡す。
その紙には、パーティで行う私の言動が書かれていた。
「それが台本だ。来週あるパーティで、エミリーはそこに書かれた通り動いてもらう」
「……捏造した罪について、書かれていませんね」
「俺の命令で、何人か学園の貴族達が協力してくれることとなっている。今お前が知ってしまうと、不自然な行動をとるかもしれないからな」
アシェルに協力する貴族の人達については、マルクスがもう把握している。
台本は主に私の行動だけが書かれているから、台本といっても数枚しかなかった。
「そうですか……私は、この台本通り動く予定になっているのですね」
「ああ。もう罪は捏造してある。台本通りにすれば、妾でも今まで通り俺の傍においてやろう」
それは私がいなければ、アシェルにとって都合が悪いからだ。
本当はキアラと婚約したいけど、親同士が公爵令嬢の私と婚約するように決める。
そうなると余程の理由がなければキアラと婚約できず、その理由を作ろうとしていた。
そこまでわかるけど、アシェルがキアラを好きになった理由がわからない。
パーティの後では聞けないだろうから、私は今この場で聞くことにしていた。
「アシェル殿下には、聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「キアラ様を婚約者にすると、いつから考えていたのでしょうか?」
「学園に入学した時から、俺はキアラのことを愛していた――お前との婚約が決まり、別れたくないからキアラと話し合って決めたことだ」
最初は私が気に入らなかったと言っていたけど、婚約する前からキアラのことが好きだったようだ。
婚約が決まっても関わっていない理由に納得して、私は部屋から出て行く。
私が拒んでいない様子だからか、アシェルは思い通りになると確信していそう。
普通なら拒むことで、受け入れているように演技していると思わないことに驚いていた。
屋敷に戻る馬車の中で、1人になった私は呟く。
「受け取った紙にはアシェルとキアラと私の台詞しか書かれていないから、これは証拠にならないでしょう」
今すぐに破きたいけど、何度か練習させようとしてくるかもしれない。
婚約を破棄する時までは、持っておく必要がありそうだ。
この間にも、マルクスは私のために行動してくれる。
そして――1週間が経ち、パーティがはじまろうとしていた。
準備はできつつあるようだけど、私は城に呼び出されてしまう。
アシェルの部屋に到着すると、エミリーの姿はなかった。
部屋の扉を閉めると、アシェルは私に向かって数枚の紙を渡す。
その紙には、パーティで行う私の言動が書かれていた。
「それが台本だ。来週あるパーティで、エミリーはそこに書かれた通り動いてもらう」
「……捏造した罪について、書かれていませんね」
「俺の命令で、何人か学園の貴族達が協力してくれることとなっている。今お前が知ってしまうと、不自然な行動をとるかもしれないからな」
アシェルに協力する貴族の人達については、マルクスがもう把握している。
台本は主に私の行動だけが書かれているから、台本といっても数枚しかなかった。
「そうですか……私は、この台本通り動く予定になっているのですね」
「ああ。もう罪は捏造してある。台本通りにすれば、妾でも今まで通り俺の傍においてやろう」
それは私がいなければ、アシェルにとって都合が悪いからだ。
本当はキアラと婚約したいけど、親同士が公爵令嬢の私と婚約するように決める。
そうなると余程の理由がなければキアラと婚約できず、その理由を作ろうとしていた。
そこまでわかるけど、アシェルがキアラを好きになった理由がわからない。
パーティの後では聞けないだろうから、私は今この場で聞くことにしていた。
「アシェル殿下には、聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「キアラ様を婚約者にすると、いつから考えていたのでしょうか?」
「学園に入学した時から、俺はキアラのことを愛していた――お前との婚約が決まり、別れたくないからキアラと話し合って決めたことだ」
最初は私が気に入らなかったと言っていたけど、婚約する前からキアラのことが好きだったようだ。
婚約が決まっても関わっていない理由に納得して、私は部屋から出て行く。
私が拒んでいない様子だからか、アシェルは思い通りになると確信していそう。
普通なら拒むことで、受け入れているように演技していると思わないことに驚いていた。
屋敷に戻る馬車の中で、1人になった私は呟く。
「受け取った紙にはアシェルとキアラと私の台詞しか書かれていないから、これは証拠にならないでしょう」
今すぐに破きたいけど、何度か練習させようとしてくるかもしれない。
婚約を破棄する時までは、持っておく必要がありそうだ。
この間にも、マルクスは私のために行動してくれる。
そして――1週間が経ち、パーティがはじまろうとしていた。
26
お気に入りに追加
958
あなたにおすすめの小説

家族から見放されましたが、王家が救ってくれました!
マルローネ
恋愛
「お前は私に相応しくない。婚約を破棄する」
花嫁修業中の伯爵令嬢のユリアは突然、相応しくないとして婚約者の侯爵令息であるレイモンドに捨てられた。それを聞いた彼女の父親も家族もユリアを必要なしとして捨て去る。
途方に暮れたユリアだったが彼女にはとても大きな味方がおり……。

姉の引き立て役として生きて来た私でしたが、本当は逆だったのですね
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
伯爵家の長女のメルディナは美しいが考えが浅く、彼女をあがめる取り巻きの男に対しても残忍なワガママなところがあった。
妹のクレアはそんなメルディナのフォローをしていたが、周囲からは煙たがられて嫌われがちであった。
美しい姉と引き立て役の妹として過ごしてきた幼少期だったが、大人になったらその立場が逆転して――。
3話完結

拝啓、婚約破棄して従妹と結婚をなされたかつての婚約者様へ、私が豚だったのはもう一年も前の事ですよ?
北城らんまる
恋愛
ランドム子爵家のご令嬢ロゼッティは、ある日婚約破棄されてしまう。それはロゼッティ自身が地味で、不細工で、太っていたから。彼は新しい婚約者として、叔父の娘であるノエルと結婚すると言い始めた。
ロゼッティはこれを機に、叔父家族に乗っ取られてしまったランドム家を出ることを決意する。
豚と呼ばれるほど太っていたのは一年も前の話。かつて交流のあった侯爵の家に温かく迎えられ、ロゼッティは幸せに暮らす。
一方、婚約者や叔父家族は破滅へと向かっていた──
※なろうにも投稿済

真実の愛の取扱説明
ましろ
恋愛
「これは契約結婚だ。私には愛する人がいる。
君を抱く気はないし、子供を産むのも君ではない」
「あら、では私は美味しいとこ取りをしてよいということですのね?」
「は?」
真実の愛の為に契約結婚を持ち掛ける男と、そんな男の浪漫を打ち砕く女のお話。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
・話のタイトルを変更しました。

「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。
ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。
魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。
そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。
ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。
妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。
侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。
しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる