婚約者の命令で外れない仮面を着けた私は婚約破棄を受けたから、仮面を外すことにしました

第２４話

バルター視点

　ロランは世界トップの魔法使いと呼ばれていて、陛下と対等に接しても許される存在だ。
　貴族として立場が上だとしても、頼む内容次第では断ってきて、媚びへつらわれることを嫌うと聞いている。

　ロランを不機嫌にさせない為には関わらず、頼む場合は機嫌を損ねない内容にしなければならない。
　幾つか貴族の家が滅んだという事実があり、ロランを不快にさせることは破滅する恐れがあるとされていた。

　そしてダリアは――そのロランを不快にさせたようだ。
　今からダリアとの婚約を破棄したとしても、シエルが再び婚約者になる可能性はないだろう。

「ロランが私の領地を守る気はないと断言しました！　バルター様がなんとかしてください！」

「わ、わかった……考えよう」

　伯爵令嬢シエルと違い、侯爵令嬢ダリアを怒らせるのは危険だ。

　俺は婚約破棄を言い渡したパーティの夜――もし仮面が外れた場合について、ダリアと話をしていた。

　その時に話した内容を信じ、ダリアはシエルを追い詰めようとしたようだ。
　それによってロランを怒らせてしまうとは……最悪の事態に焦るしかない。

　ダリアはまず、俺に昨日ロランを不快にさせたことを報告せず、今になって報告している。

　ロランに宣言されてから助けを求めてきたことで……俺は、ダリアを婚約者にしたことを後悔していた。