何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有

文字の大きさ
上 下
47 / 88

第47話

しおりを挟む


ショッピングモールで一日過ごし、すっかり日が落ちた中を俺たちは繁華街から離れる方向に歩いていた。

何を隠そう、これからホテルで一泊するためだ。しかもラブが付く方の。

「七海?」

「………は、はい……」

「大丈夫か?」

「………は、はい……」

俺が何処を目指しているのかは少しでも地理に精通していればわかる。
賑やかな中心街からは離れた裏通りのような場所。近づくにつれて七海の落ち着きが無くなって行くのがわかった。

そういう俺もホテルに行くのは久しぶりなのでワクワクしている。
特に毎回受け付けをする度に驚愕した目で見られるのが俺のお気に入り。

こういう系統のホテルはこの世界だと、男性が少ないことで発生したユリカップルによって使われることが多い。もちろん男性が使っても問題は無い。
周りがユリな分、俺にとっては楽園のような場所とも言えるかもしれない。

「行くよ?」
「……はい!」

七海に一声かけてからホテルの入り口にある扉を押して中に入る。
内装はピンク色の壁にピンク色の明かりを使っており、とにかくそういう店にありがちなピンク一色だった。

「すみません、いいですか?」
「はい……はい?!え、?!………ご、ごほん。失礼しました。こちらのプランから希望するものを選択してください。」
「ありがとうございます」

被害者累計百人近くが存在する中、この受付嬢も言い反応をしてくれた。
チラチラと俺と七海に視線を送るのは果たして。嫉妬なのか、羨望なのか、それとも正義感なのか。

「宿泊でお願いします。部屋はノーマルの洋室で」
「?!……承りました。開始まで時間がありますが、いかがしますか」
「うーん、直ぐに部屋に入りたいので休憩でお願いします」
「わ、わかりました……お会計は〇〇〇〇◯円になります」

俺は財布を取り出し料金を支払う。俺は七海と違って給料をもらっているので俺の驕りだ。

「せ、先生……すみません後で払います」
「驕りだから気にするな」
「……で、でもっ」
「とりあえず部屋に行こうか」
「……わかりました」

受付嬢から部屋番号が書かれたキーを受け取ると、俺と七海はエレベーターを使って部屋に向かった。床にはこれまたピンク色の絨毯が敷き詰められているため、足音が響くこともなく、結構当たりのホテルだと思った。

部屋に入ると、ベッドにソファーにテレビがあり、そして暗めのライトによってぼんやりした空間が広がっていた。

「……凄いです……」

七海は始めて来たようで当たりを見渡して感動していた。

「そうだな……七海」
「っ……はい……!!」

ここはもう周囲の目を一切気にする必要の無い密室。
俺は横にいる七海を抱きしめると、お互いの唇を交える。

しばらくしてから、俺たちはベットへと向かった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?

Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。 最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。 とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。 クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。 しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。 次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ── 「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 そう問うたキャナリィは 「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」 逆にジェードに問い返されたのだった。 ★★★★★★ 覗いて下さりありがとうございます。 女性向けHOTランキングで最高20位までいくことができました。(本編) 沢山の方に読んでいただけて嬉しかったので、続き?を書きました(*^^*) ★花言葉は「恋の勝利」  本編より過去→未来  ジェードとクラレットのお話 ★ジェード様の憂鬱【読み切り】  ジェードの暗躍?(エボニーのお相手)のお話

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

処理中です...