上 下
11 / 88

第11話

しおりを挟む
ドスラ視点

 エルノアがランアス国を出て行ってから、1ヶ月が経とうとしていた。

 王都や町は元々結界が存在していたが、それをエルノアの結界魔法による結界を重ねて強化していた。
 その結界が消えたことにより、ランアス国では様々な問題が発生することとなってしまう。

 俺は玉座に座り、宰相サウスから報告を聞く。
 数週間前にフリードが言った通り、国民は疲弊して脅威となるモンスターが活性化している。
 それにより多大な被害が出てしまい、国を捨てる者は増え続けているようだ。

 報告を聞いた俺は憤り、サウスに対して叫ぶ。

「クソッッ! エルノアはまだ見つからないのか!?」
「シーフェス公爵家からは「ランアス国を出て行く」と聞きましたので、周辺の国を捜索しています……ですが、結界が強化されて恩恵を得ている国がどこかにあるはずなのに、そのような国は現時点では見つかっていません」
「馬鹿な!? エルノアは結界魔法しか使えないから、生きるため結界魔法を使うはずだ!!」

 この時エルノアは、結界魔法を二―ルド国の森にしか使っていない。
 まさか1カ所だけしか使っていないとは思わず、1ヶ月の調査では何も把握できなかった。

 取り乱してしまうと、宰相サウスが頷いて。

「私も同じ考えです……これからも他国を調査していきます。急に繁栄した国があれば、その国にエルノアがいるに違いありません」
「わかった。見つけることができれば、どんな手を使ってでもランアス国で結界魔法を使わせろ!」

 報告を聞いて部屋からサウスが出て行き、俺は頭を抱えてしまう。

 エルノアが見つかるよりも先に、ランアス国が滅びる方が早いかもしれない。
 最悪の事態を想像すると……俺の前に、王妃となったリオナがやって来る。

「ドスラ様、何も気にすることはありません」
「そう言ってくれるのは嬉しいが……気にするなと言われても、無理だ」

 様々な問題が発生して後悔しているのに、冷静なリオナが理解できない。
 恐怖してしまうと、そんな俺の手に触れたリオナが話す。

「これから私が動くので、何も問題ありません」
「それは危険過ぎる。やめておいた方がいい」
「ドスラ様、私を信じてください」
「……わかった。リオナに任せよう」

 どうやらリオナは、ランアス国で起きている問題を解決するため魔法で戦いたいらしい。
 危険だから止めるべきなのに……リオナの決意を聞き、俺は許可を出してしまう。

 その後リオナが活躍して、俺は王妃にしてよかったと思うようになる。
 エルノアが出て行った原因がリオナということを、この時の俺は覚えていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)

mios
恋愛
公爵令嬢の婚約者を捨て、男爵令嬢と大恋愛の末に結婚した第一王子。公爵家の後ろ盾がなくなって、王太子の地位を降ろされた第一王子。 念願の子に恵まれて、産まれた直後に齎された幼い王子様の訃報。 国中が悲しみに包まれた時、侯爵家に一報が。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

諦めた令嬢と悩んでばかりの元婚約者

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
愛しい恋人ができた僕は、婚約者アリシアに一方的な婚約破棄を申し出る。 どんな態度をとられても仕方がないと覚悟していた。 だが、アリシアの態度は僕の想像もしていなかったものだった。 短編。全6話。 ※女性たちの心情描写はありません。 彼女たちはどう考えてこういう行動をしたんだろう? と、考えていただくようなお話になっております。 ※本作は、私の頭のストレッチ作品第一弾のため感想欄は開けておりません。 (投稿中は。最終話投稿後に開けることを考えております) ※1/14 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。

友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。 あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。 ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。 「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」 「わかりました……」 「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」 そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。 勘違い、すれ違いな夫婦の恋。 前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。 四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

処理中です...