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第1話
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私エルノア・ランアスは、何もできない王妃と呼ばれていた。
ランアス国の城に暮らしているけど、扱いは城の中で最も悪い。
それは全て側妃リオナの発言を聞いた国王のドスラが私を「何もできない王妃」と見下し、城にいる人達が私を冷遇しているからだ。
部屋に戻った私は、用意されていた食事を眺める。
堅いパンに冷めたスープと……これは激務で忙しく、食べるのが遅くなる私の分は余った食事になるから。
余らない時は何も食べられなくて、私に為に用意する気はないようだ。
「……何もできない王妃と言われている私が激務の時点で、城の人達は何も思わないのでしょうか?」
部屋で1人になり、食事を終えた私は呟く。
シーフェス公爵家に産まれた私は、数百年に一度シーフェス家の人が扱えるとされる「結界魔法」が使えた。
私は結界魔法でランアス国を守り、21歳の時に王妃となる。
王妃となって半年後……側妃リオナの発言を聞いたランアス陛下が「結界魔法など存在しない、エルノアは何もできない王妃だ」と言ったことで、私の扱いが悪くなっていった。
今までのことを思い出していると、部屋に国王ドスラがやって来る。
「ここにいたか。今日も結界の結界に魔力を使ったと報告を聞いたが、結界魔法など存在しないに決まっている」
見下してくるドスラに対して、私は言いたいことがあった。
「ドスラ様、私が結界魔法を扱えるようになった15歳の時から、ランアス国は繁栄しています」
「そんなのは全て偶然だ。それを自分のありもしない結界魔法の力と言い張る醜さが、俺は嫌になっている!」
そう言い、ドスラは私に紙を見せつける。
2枚重なっている紙には様々なことが書かれていて……これは、誓約書の魔法道具だ。
「その紙はなんですか?」
「誓約書の魔法道具も知らないのか。この紙は魔力で文字を書くことができ、その魔力がサインした者の証明となる!」
それは知ってて、聞きたかったのは誓約書に書かれた内容だ。
私を王妃でなくしたいようで、ドスラの署名はもう書かれていた。
後は私が署名すれば効力を発揮して、お互いが紙を持つことになりどちらかが紛失しても1枚あれば問題ない。
紙の内容はわかったから、一番聞きたいことを私はドスラに尋ねる。
「宰相サウス様は、このことを知っておられるのですか?」
「サウスは他国に行き今はいない。エルノアには関係ないことだ」
一番重要なことで、宰相のサウスがいない時に私は行動を起こそうとしていた。
城の中でサウスだけは結界魔法の力を把握し、私に様々な仕事を命じている。
他の人達の前では「結界魔法は存在しない」というドスラの発言にサウスは賛同してたみたいだけど、間違いなく結界を利用していた。
そのサウスがいる時は、城の人達を言いくるめて私を出て行かせないようにする。
そう推測したから準備だけしていたけど……ドスラが誓約書の魔法道具を持ってきたなら、私の持っていた誓約書を使う必要がなくなった。
「お前はサウスの言われた通りに行動しているだけでいい。王妃でいたいのなら余計なことをせず命令に従え!」
「この前、私1人で城を出て買物していたことが、ドスラ様は不快のようですね」
「そうだ。何もできない王妃と民に知られたらどうする! この紙にサインしたくなければ城から二度と出るな!」
私が王妃のままでいたいのなら、脅せば城から出なくなるとドスラは考えていそう。
ランアス国から出て行きたい私としては、ドスラの脅しは好都合でしかなかった。
「命令に従いたくないので、王妃をやめることにします」
「はぁっ!? エルノアは何を言っている!?」
「何もできない王妃と言うのなら、私が出て行っても構わないでしょう」
発言が予想外で驚いているドスラに対して、私は言う。
最初は困惑していたドスラだけど、すぐに笑みを浮かべて。
「馬鹿な奴だ。これで王妃を優秀なリオナにすることができる!」
私としては、リオナを王妃にする方が馬鹿げている。
国を守る結界を失った後、リオナに何ができるのだろうか?
もうランアス国からも出て行こうと考えている私だけど、この国の末路は気になってしまった。
2枚の誓約書にサインして……1枚はドスラが、もう1枚を私が持つ。
「この紙は間違いなく誓約書の魔法道具です。サインも私の魔力でできましたし、1枚は私が持ちます」
「いいだろう! もしお前が失くしてしまったとしても、俺が持っているこの紙があるから無駄だ!」
その発言はそのまま返したくなるけど、今はドスラを喜ばせておこう。
誓約書の紙を持ち、私はそのまま城を出ることにする。
部屋を出ようとしたけど、ドスラには最後に言っておこう。
「それではドスラ様、さようなら」
「もう二度と会うこともないだろう。最後まで何もできない王妃だったが、これは推薦したサウスが悪い」
その宰相サウスは、他国からランアス国へ戻った時に間違いなく取り乱す。
私を捜索する可能性が高くて、その前に国から出て行きたかった。
王妃でなくなった私はまず、眼を閉じて強く意識する。
ランアス国を結界で守り――私の結界とは別の、街や村を守っている結界は私の結界を重ねることで強化していたけど、それを全部やめることにした。
結界の解除に成功して、これからランアス国は大騒ぎとなりそうだ。
私はその前に国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔することとなる。
ランアス国の城に暮らしているけど、扱いは城の中で最も悪い。
それは全て側妃リオナの発言を聞いた国王のドスラが私を「何もできない王妃」と見下し、城にいる人達が私を冷遇しているからだ。
部屋に戻った私は、用意されていた食事を眺める。
堅いパンに冷めたスープと……これは激務で忙しく、食べるのが遅くなる私の分は余った食事になるから。
余らない時は何も食べられなくて、私に為に用意する気はないようだ。
「……何もできない王妃と言われている私が激務の時点で、城の人達は何も思わないのでしょうか?」
部屋で1人になり、食事を終えた私は呟く。
シーフェス公爵家に産まれた私は、数百年に一度シーフェス家の人が扱えるとされる「結界魔法」が使えた。
私は結界魔法でランアス国を守り、21歳の時に王妃となる。
王妃となって半年後……側妃リオナの発言を聞いたランアス陛下が「結界魔法など存在しない、エルノアは何もできない王妃だ」と言ったことで、私の扱いが悪くなっていった。
今までのことを思い出していると、部屋に国王ドスラがやって来る。
「ここにいたか。今日も結界の結界に魔力を使ったと報告を聞いたが、結界魔法など存在しないに決まっている」
見下してくるドスラに対して、私は言いたいことがあった。
「ドスラ様、私が結界魔法を扱えるようになった15歳の時から、ランアス国は繁栄しています」
「そんなのは全て偶然だ。それを自分のありもしない結界魔法の力と言い張る醜さが、俺は嫌になっている!」
そう言い、ドスラは私に紙を見せつける。
2枚重なっている紙には様々なことが書かれていて……これは、誓約書の魔法道具だ。
「その紙はなんですか?」
「誓約書の魔法道具も知らないのか。この紙は魔力で文字を書くことができ、その魔力がサインした者の証明となる!」
それは知ってて、聞きたかったのは誓約書に書かれた内容だ。
私を王妃でなくしたいようで、ドスラの署名はもう書かれていた。
後は私が署名すれば効力を発揮して、お互いが紙を持つことになりどちらかが紛失しても1枚あれば問題ない。
紙の内容はわかったから、一番聞きたいことを私はドスラに尋ねる。
「宰相サウス様は、このことを知っておられるのですか?」
「サウスは他国に行き今はいない。エルノアには関係ないことだ」
一番重要なことで、宰相のサウスがいない時に私は行動を起こそうとしていた。
城の中でサウスだけは結界魔法の力を把握し、私に様々な仕事を命じている。
他の人達の前では「結界魔法は存在しない」というドスラの発言にサウスは賛同してたみたいだけど、間違いなく結界を利用していた。
そのサウスがいる時は、城の人達を言いくるめて私を出て行かせないようにする。
そう推測したから準備だけしていたけど……ドスラが誓約書の魔法道具を持ってきたなら、私の持っていた誓約書を使う必要がなくなった。
「お前はサウスの言われた通りに行動しているだけでいい。王妃でいたいのなら余計なことをせず命令に従え!」
「この前、私1人で城を出て買物していたことが、ドスラ様は不快のようですね」
「そうだ。何もできない王妃と民に知られたらどうする! この紙にサインしたくなければ城から二度と出るな!」
私が王妃のままでいたいのなら、脅せば城から出なくなるとドスラは考えていそう。
ランアス国から出て行きたい私としては、ドスラの脅しは好都合でしかなかった。
「命令に従いたくないので、王妃をやめることにします」
「はぁっ!? エルノアは何を言っている!?」
「何もできない王妃と言うのなら、私が出て行っても構わないでしょう」
発言が予想外で驚いているドスラに対して、私は言う。
最初は困惑していたドスラだけど、すぐに笑みを浮かべて。
「馬鹿な奴だ。これで王妃を優秀なリオナにすることができる!」
私としては、リオナを王妃にする方が馬鹿げている。
国を守る結界を失った後、リオナに何ができるのだろうか?
もうランアス国からも出て行こうと考えている私だけど、この国の末路は気になってしまった。
2枚の誓約書にサインして……1枚はドスラが、もう1枚を私が持つ。
「この紙は間違いなく誓約書の魔法道具です。サインも私の魔力でできましたし、1枚は私が持ちます」
「いいだろう! もしお前が失くしてしまったとしても、俺が持っているこの紙があるから無駄だ!」
その発言はそのまま返したくなるけど、今はドスラを喜ばせておこう。
誓約書の紙を持ち、私はそのまま城を出ることにする。
部屋を出ようとしたけど、ドスラには最後に言っておこう。
「それではドスラ様、さようなら」
「もう二度と会うこともないだろう。最後まで何もできない王妃だったが、これは推薦したサウスが悪い」
その宰相サウスは、他国からランアス国へ戻った時に間違いなく取り乱す。
私を捜索する可能性が高くて、その前に国から出て行きたかった。
王妃でなくなった私はまず、眼を閉じて強く意識する。
ランアス国を結界で守り――私の結界とは別の、街や村を守っている結界は私の結界を重ねることで強化していたけど、それを全部やめることにした。
結界の解除に成功して、これからランアス国は大騒ぎとなりそうだ。
私はその前に国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔することとなる。
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