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第1話
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「カルラは非常識だから、俺はミーファを婚約者にする」
私カルラ・シレッサは、婚約者ザノークの発言に困惑してしまう。
どう考えても、婚約を破棄して私の妹ミーファを婚約者にする方が非常識だ。
シレッサ子爵家の屋敷の一番広い部屋で、私と家族とザノークが集まっている。
伯爵令息のザノークがこの場で一番偉いけど、理由を知るために私は聞く。
「ザノーク様……私を非常識と言いましたけど、詳しく話してくれませんか?」
「言われないとわからないか! 学園には不登校で常に遊んでいるお前より、常識のあるミーファを婚約者にしたいと考えるのは当然だろう!」
「私が学園に通わなくていいのは、成績が優秀で来る必要がないと学園長に言われたからです」
「それでも普通は通うだろう!? 俺の評判を気にしようとはしないのか!!」
ザノークは叫ぶけど、学園に通っていない時の私は領地のために行動していた。
シレッサ子爵家の評判は上がっているから、婚約者ザノークの評判も上がっているはずだ。
そこまで考えて「遊んでいる」と言ったことを思い出し、認識が違う気がした。
「あの、学園に通っていない間、私はシレッサ領を――」
「――全てお姉様が悪いのに見苦しいです! お姉様はこれから、リック様の婚約者になってもらいます!」
「はぁっ?」
いつの間にかザノークに抱きついていた妹ミーファが、私を睨んで叫ぶ。
アーバス侯爵家のリックは、束縛侯爵と悪い意味で有名な人だ。
そのリックが私の婚約者――何が起こっているのかわからないでいると、ザノークが話し出す。
「リック様と婚約した女性は3人逃げ出していて、理由から束縛侯爵と異名がつく程に非常識な存在。カルラとはお似合いだろう!」
「これからお前はアーバス侯爵家のカルラとなる。何か問題を起こしたとしても、私達シレッサ家には関係のないことだ」
お父様の発言を聞いて、私はリックを婚約者にした理由を推測する。
領地のために行動していていたけど、私の行動に恐怖していそう。
そしてザノークと一緒に私を追い出す方法を考えて――束縛侯爵のリックと婚約させた。
「全てお姉様、いいえカルラが悪いのよ! もうすぐリック様が来ることになっているわ!!」
「えっと、今から来るの?」
「俺達が見ている時でなければ、カルラは逃げる可能性があるからな」
私は困惑してしまうと、ザノークが理由を話す。
恐らくリックは事前に日時を話していたけど、それを聞いた家族は私に伝わらないようにしていた。
どう考えても私の家族やザノークの方が、私より非常識だ。
説得は諦めるけど、リックが来る前に私は言いたいことがある。
「それなら出て行く前に、これからこの領地で発生しそうな問題を話して――」
「――もうカルラは無関係だ! 家のことに関わろうとするな!!」
私の発言を、お父様が怒声で遮る。
今までシレッサ領のために行動してきたのに、私の家族は何も理解できていないようだ。
「ミーファの言う通り、カルラの好きにさせていればシレッサ領は大変なことになっていただろう」
「はい。ザノーク様の婚約者は、カルラより私の方が相応しいです!」
どうやら全て、ミーファの目論見のようだ。
私の行動で大変なことになると、ミーファは家族やザノークに話していそう。
そして私を蔑んでいたザノークは、ミーファに賛同した。
領地が大変なことになると私が話しても、家族は信じようとしない。
信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
■◇■◇■◇■◇■
何も知らない間に、私はリック・アーバスと婚約したようだ。
これからリックがここに来るようだけど、何も聞いていないから準備していない。
家族は私を追い出すつもりのようで、これからアーバス侯爵家の屋敷に行くこととなる。
そして、私が行動する前に――執事に案内されて、リックが部屋にやって来た。
どうやら家族やザノークとしては、私を目の前で追い出したいようだ。
リックは短い赤髪の美青年で、凜々しさに驚いているとミーファの呟きが聞こえる。
「なんて美しい、本来なら私が婚約して――いいえ、束縛はされたくないもの」
どうやらミーファはリックに見蕩れているけど、束縛侯爵の噂を聞いて冷静になったようだ。
部屋に来たリックは、周囲を眺めて困惑している。
想像していた状況と違うようで、領主であるお父様を見てリックが尋ねた。
「カルラ様を私の屋敷に住ませていいと聞きましたが、何も用意していないのではありませんか?」
「そう見えますが、カルラは準備ができています。今すぐにでも連れて行ってください」
「いや……どう見ても、カルラ様は準備ができていないと思うのですが……」
私の家族とザノークは、困惑しているリックに驚いている様子だ。
束縛侯爵と呼ばれるぐらいだから、即座に私を連行すると考えたのかもしれない。
この場で一番偉いのは、侯爵令息のリックだ。
リックの婚約者になる私は、再びお父様に話す。
「お父様、先ほどは遮られてしまいましたけど……シレッサ領の問題を対処しなければ、これから大変な目に合います」
「なっ……カルラはもう領地に関わるなと言っただろう!」
そう言うとは思っていたけど、この場でリックに確認して欲しかった。
領主が娘の私に暴言を吐いている場面を見て、リックは唖然としながら尋ねる。
「あの、カルラ様はこれから、私と一緒の屋敷に住むことを納得しているのでしょうか?」
「はい。行く前に私の部屋に向かい、すぐ準備をしてきます」
心配しながら尋ねるリックに、私は断言する。
自分の悪評を知っているからか、リックは動揺していた。
「わ、わかりました。急ぐ必要はありません」
必要な物だけ持って、私はシレッサ家からすぐに出て行くつもりだ。
事前に用意していると考えていたリックだけど、私の発言を聞いて納得している。
リックは噂と違い、優しく穏やかそうな人だ。
本当に束縛侯爵と呼ばれているのだろうかと困惑しながら、私はリックと一緒に部屋へ向かった。
■◇■◇■◇■◇■
その後――準備を終えた私は、リックと一緒に馬車へ乗る。
家族とザノークははもう無関係でいたいようで、見送りにも来ていない。
動いている馬車の中で、私はリックと対面する。
どうやら冷静な私が、リックは理解できないようだ。
「あの、カルラ様は私の噂をご存知なのでしょうか?」
「はい。束縛侯爵として、3人の婚約者が逃げ出したと聞いています」
確認したかったから、私が知っていることを話す。
馬車の中には私とリックだけだから、詳しく聞いておきたかった。
「そのことを知っていて、カルラ様は冷静でいられるのですか」
「噂だからなのかもしれませんけど……本当に、婚約者が3人も逃げ出したのですか?」
リックの言動を見て、私は誤解なのではないかと考えてしまう。
それでも――リックの発言を聞き、私は驚くこととなる。
「はい。カルラ様はこれから向かう屋敷で生活してもらい、執事のレアスか私が傍で守るようにします」
「……えっ?」
「私とレアス以外の異性とは関わって欲しくないので、魔法学園も通わないでください。学園の授業は屋敷にある本で問題ありません」
「そ、そうですか」
「それから――」
そう言ってリックが、私に守って欲しい様々なルールを話している。
束縛侯爵と呼ばれても仕方ないけど、全て異性と関わらせたくないからだ。
リックには何か理由があるのではないかと考えて、話を全て聞いた後に私は尋ねる。
「あの、どうしてそこまで、私と異性を関わらせたくないのでしょうか?」
「私が強く不安になってしまうからです。今まで話を聞いた婚約者の3人は、翌日には別れたいと頼み込んできました」
確かに様々なルールをいきなり聞かされたら、これからの生活が嫌になるのかもしれない。
リックが言ったルールは全て私を守りたいからで、過保護なだけだ。
束縛されるようにみえてしまうけど……実際は、これから快適な生活を送ることができそう。
「これからの生活について聞きましたけど……私は常識がないと言われているからか、リック様の屋敷で快適に暮らせると思っています」
「そ、そうですか。それはよかった……」
私の発言が今までの婚約者達と違うからか、リックは唖然としながらも喜んでいる。
話を聞いて驚いてしまったけど、私は問題なく新しい生活を送れそうだ。
私カルラ・シレッサは、婚約者ザノークの発言に困惑してしまう。
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そのリックが私の婚約者――何が起こっているのかわからないでいると、ザノークが話し出す。
「リック様と婚約した女性は3人逃げ出していて、理由から束縛侯爵と異名がつく程に非常識な存在。カルラとはお似合いだろう!」
「これからお前はアーバス侯爵家のカルラとなる。何か問題を起こしたとしても、私達シレッサ家には関係のないことだ」
お父様の発言を聞いて、私はリックを婚約者にした理由を推測する。
領地のために行動していていたけど、私の行動に恐怖していそう。
そしてザノークと一緒に私を追い出す方法を考えて――束縛侯爵のリックと婚約させた。
「全てお姉様、いいえカルラが悪いのよ! もうすぐリック様が来ることになっているわ!!」
「えっと、今から来るの?」
「俺達が見ている時でなければ、カルラは逃げる可能性があるからな」
私は困惑してしまうと、ザノークが理由を話す。
恐らくリックは事前に日時を話していたけど、それを聞いた家族は私に伝わらないようにしていた。
どう考えても私の家族やザノークの方が、私より非常識だ。
説得は諦めるけど、リックが来る前に私は言いたいことがある。
「それなら出て行く前に、これからこの領地で発生しそうな問題を話して――」
「――もうカルラは無関係だ! 家のことに関わろうとするな!!」
私の発言を、お父様が怒声で遮る。
今までシレッサ領のために行動してきたのに、私の家族は何も理解できていないようだ。
「ミーファの言う通り、カルラの好きにさせていればシレッサ領は大変なことになっていただろう」
「はい。ザノーク様の婚約者は、カルラより私の方が相応しいです!」
どうやら全て、ミーファの目論見のようだ。
私の行動で大変なことになると、ミーファは家族やザノークに話していそう。
そして私を蔑んでいたザノークは、ミーファに賛同した。
領地が大変なことになると私が話しても、家族は信じようとしない。
信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
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何も知らない間に、私はリック・アーバスと婚約したようだ。
これからリックがここに来るようだけど、何も聞いていないから準備していない。
家族は私を追い出すつもりのようで、これからアーバス侯爵家の屋敷に行くこととなる。
そして、私が行動する前に――執事に案内されて、リックが部屋にやって来た。
どうやら家族やザノークとしては、私を目の前で追い出したいようだ。
リックは短い赤髪の美青年で、凜々しさに驚いているとミーファの呟きが聞こえる。
「なんて美しい、本来なら私が婚約して――いいえ、束縛はされたくないもの」
どうやらミーファはリックに見蕩れているけど、束縛侯爵の噂を聞いて冷静になったようだ。
部屋に来たリックは、周囲を眺めて困惑している。
想像していた状況と違うようで、領主であるお父様を見てリックが尋ねた。
「カルラ様を私の屋敷に住ませていいと聞きましたが、何も用意していないのではありませんか?」
「そう見えますが、カルラは準備ができています。今すぐにでも連れて行ってください」
「いや……どう見ても、カルラ様は準備ができていないと思うのですが……」
私の家族とザノークは、困惑しているリックに驚いている様子だ。
束縛侯爵と呼ばれるぐらいだから、即座に私を連行すると考えたのかもしれない。
この場で一番偉いのは、侯爵令息のリックだ。
リックの婚約者になる私は、再びお父様に話す。
「お父様、先ほどは遮られてしまいましたけど……シレッサ領の問題を対処しなければ、これから大変な目に合います」
「なっ……カルラはもう領地に関わるなと言っただろう!」
そう言うとは思っていたけど、この場でリックに確認して欲しかった。
領主が娘の私に暴言を吐いている場面を見て、リックは唖然としながら尋ねる。
「あの、カルラ様はこれから、私と一緒の屋敷に住むことを納得しているのでしょうか?」
「はい。行く前に私の部屋に向かい、すぐ準備をしてきます」
心配しながら尋ねるリックに、私は断言する。
自分の悪評を知っているからか、リックは動揺していた。
「わ、わかりました。急ぐ必要はありません」
必要な物だけ持って、私はシレッサ家からすぐに出て行くつもりだ。
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リックは噂と違い、優しく穏やかそうな人だ。
本当に束縛侯爵と呼ばれているのだろうかと困惑しながら、私はリックと一緒に部屋へ向かった。
■◇■◇■◇■◇■
その後――準備を終えた私は、リックと一緒に馬車へ乗る。
家族とザノークははもう無関係でいたいようで、見送りにも来ていない。
動いている馬車の中で、私はリックと対面する。
どうやら冷静な私が、リックは理解できないようだ。
「あの、カルラ様は私の噂をご存知なのでしょうか?」
「はい。束縛侯爵として、3人の婚約者が逃げ出したと聞いています」
確認したかったから、私が知っていることを話す。
馬車の中には私とリックだけだから、詳しく聞いておきたかった。
「そのことを知っていて、カルラ様は冷静でいられるのですか」
「噂だからなのかもしれませんけど……本当に、婚約者が3人も逃げ出したのですか?」
リックの言動を見て、私は誤解なのではないかと考えてしまう。
それでも――リックの発言を聞き、私は驚くこととなる。
「はい。カルラ様はこれから向かう屋敷で生活してもらい、執事のレアスか私が傍で守るようにします」
「……えっ?」
「私とレアス以外の異性とは関わって欲しくないので、魔法学園も通わないでください。学園の授業は屋敷にある本で問題ありません」
「そ、そうですか」
「それから――」
そう言ってリックが、私に守って欲しい様々なルールを話している。
束縛侯爵と呼ばれても仕方ないけど、全て異性と関わらせたくないからだ。
リックには何か理由があるのではないかと考えて、話を全て聞いた後に私は尋ねる。
「あの、どうしてそこまで、私と異性を関わらせたくないのでしょうか?」
「私が強く不安になってしまうからです。今まで話を聞いた婚約者の3人は、翌日には別れたいと頼み込んできました」
確かに様々なルールをいきなり聞かされたら、これからの生活が嫌になるのかもしれない。
リックが言ったルールは全て私を守りたいからで、過保護なだけだ。
束縛されるようにみえてしまうけど……実際は、これから快適な生活を送ることができそう。
「これからの生活について聞きましたけど……私は常識がないと言われているからか、リック様の屋敷で快適に暮らせると思っています」
「そ、そうですか。それはよかった……」
私の発言が今までの婚約者達と違うからか、リックは唖然としながらも喜んでいる。
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