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第1話
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お父様が亡くなり――私サフィラはウォルク伯爵家の領主になって、数日が経っていた。
数年前――水を聖水に変える魔法道具を、人々の為にお父様は作ろうとしていた。
私はお父様の考えに賛同して協力し、魔法道具は完成する。
聖水化の魔法道具によって、繁栄したウォルク領は有名になっていた。
領主になった私は、これからも人々の為に魔法道具を研究しようと決意していた。
そんな時に――数年前に家を出た元姉のエイダが屋敷に戻ってきて、私に言い放つ。
「サフィラ、私の夫ヴァン様を紹介するわ。そしてこの人が、ウォルク家の新たな領主よ」
そう言って、エイダが同い年の少年ヴァンを紹介する。
ヴァンは子爵家の令息で、エイダと仲がよかったことは知っていた。
どうやら二人は結婚したようだけど、それより屋敷にやって来たことに驚くしかない。
エイダはお父様の考え、盛衰化の魔法道具を馬鹿にして、失敗した末路を考えて家を捨てた。
そして、私が領主になってすぐ――そのエイダが、結婚相手を連れて戻ってきた。
よく戻ってこれたと思うしかない私は、呆れながら尋ねる。
「エイダ、貴方は何を言っているのですか?」
「姉に対してその発言、領主になったと思い込んでいるサフィラらしいわね」
エイダがそう言って嗤い、ヴァンが私を蔑みながら叫ぶ。
「父親が亡くなった今、長女エイダの婚約者である俺が、ウォルク家の新たな領主に決まっているだろう!」
自信満々な元姉エイダ、領主だと言い張るヴァンを眺めて、私は呆れるしかない。
この国の決まりでは確かにそうなっているけど、私は言いたいことがある。
「お父様はエイダと家族の縁を切り、手続きを済ませています」
こうなることを予想したお父様は、生前に手続きを済ませている。
手続きは済ませて家族の縁が切られているのに……屋敷に戻ってきたエイダは姉だと言い張り、結婚した子爵令息のヴァンがウォルク家の領主だと言い出す。
こうなることをお父様が完全に予想できていたから、私は内心驚いていた。
私の発言を聞いても、エイダとヴァンは信じようとしない。
「優しいお父様が、そんなことするわけないじゃない!」
「サフィラは見苦しくて不愉快だ……さっさと屋敷から出て行け!」
エイダはお父様を信用しているみたいだけど、それでも協力が必要だと言った時に失踪した。
それなのに……今でも父に愛されていると、エイダは本気で考えているようだ。
ヴァンは伯爵家の領主という立場が手に入りそうだから、エイダの発言を信じ切っている。
エイダの婚約者に相応しいと考えて、私は2人に宣言した。
「そうですか。それなら私は――この家から出て行きます」
家から出るとは言ったけど、領主の座を渡すとは言っていない。
ここまで全てお父様の予想通りで、これからの行動についても私は生前に聞いていた。
私はお父様が話してくれた通り動くことで、全てを持ち出すことができそうだ。
とにかく私は――家を出ることにしていた。
数年前――水を聖水に変える魔法道具を、人々の為にお父様は作ろうとしていた。
私はお父様の考えに賛同して協力し、魔法道具は完成する。
聖水化の魔法道具によって、繁栄したウォルク領は有名になっていた。
領主になった私は、これからも人々の為に魔法道具を研究しようと決意していた。
そんな時に――数年前に家を出た元姉のエイダが屋敷に戻ってきて、私に言い放つ。
「サフィラ、私の夫ヴァン様を紹介するわ。そしてこの人が、ウォルク家の新たな領主よ」
そう言って、エイダが同い年の少年ヴァンを紹介する。
ヴァンは子爵家の令息で、エイダと仲がよかったことは知っていた。
どうやら二人は結婚したようだけど、それより屋敷にやって来たことに驚くしかない。
エイダはお父様の考え、盛衰化の魔法道具を馬鹿にして、失敗した末路を考えて家を捨てた。
そして、私が領主になってすぐ――そのエイダが、結婚相手を連れて戻ってきた。
よく戻ってこれたと思うしかない私は、呆れながら尋ねる。
「エイダ、貴方は何を言っているのですか?」
「姉に対してその発言、領主になったと思い込んでいるサフィラらしいわね」
エイダがそう言って嗤い、ヴァンが私を蔑みながら叫ぶ。
「父親が亡くなった今、長女エイダの婚約者である俺が、ウォルク家の新たな領主に決まっているだろう!」
自信満々な元姉エイダ、領主だと言い張るヴァンを眺めて、私は呆れるしかない。
この国の決まりでは確かにそうなっているけど、私は言いたいことがある。
「お父様はエイダと家族の縁を切り、手続きを済ませています」
こうなることを予想したお父様は、生前に手続きを済ませている。
手続きは済ませて家族の縁が切られているのに……屋敷に戻ってきたエイダは姉だと言い張り、結婚した子爵令息のヴァンがウォルク家の領主だと言い出す。
こうなることをお父様が完全に予想できていたから、私は内心驚いていた。
私の発言を聞いても、エイダとヴァンは信じようとしない。
「優しいお父様が、そんなことするわけないじゃない!」
「サフィラは見苦しくて不愉快だ……さっさと屋敷から出て行け!」
エイダはお父様を信用しているみたいだけど、それでも協力が必要だと言った時に失踪した。
それなのに……今でも父に愛されていると、エイダは本気で考えているようだ。
ヴァンは伯爵家の領主という立場が手に入りそうだから、エイダの発言を信じ切っている。
エイダの婚約者に相応しいと考えて、私は2人に宣言した。
「そうですか。それなら私は――この家から出て行きます」
家から出るとは言ったけど、領主の座を渡すとは言っていない。
ここまで全てお父様の予想通りで、これからの行動についても私は生前に聞いていた。
私はお父様が話してくれた通り動くことで、全てを持ち出すことができそうだ。
とにかく私は――家を出ることにしていた。
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