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第2話
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私はルドレスト子爵領を侵攻しようとしていたモンスターの群れを撃退し、夕方に屋敷へ戻っていた。
姉リシアは食卓にいて、父と母の3人で談笑している。
今日の私の活躍をリシアは自分の功績にしていそうで、実際は外でザオードと楽しい時間を過ごしていたのは間違いない。
私の食事はないようで、戻ってすぐに領主の父が話す。
「マリーは遅かったな。今すぐザオード様の宿題を終わらせろ、それまで食事をとることは許さん」
「リシアから聞いたけど、あまり役に立たなかったみたいね。せめてザオード様の力になりなさい!」
父と母はリシアの発言を信じ切り、領地のために動いたのが私だけとは知らない。
ここまで酷いと未練もなくて――私は、家族がいるこの場で告げる。
「私は限界です。ルドレスト家から出て行くことにします」
「……そうか。それなら出て行けばいい、ザオード様の婚約者をリシアにするとしよう」
「はぁっ!? マリーは何を言ってるのよ!!」
私の宣言を聞き、領主の父は呆れながら今後について話す。
リシアだけ焦っているのは、私の本来の力を知っているからだ。
父は困惑している様子で、リシアに言う。
「リシアは何を焦っている? マリーよりもリシアの方が優秀で、ザオード様もリシアの方が好きだろう」
「そうね。ザオード様はマリーとの婚約を破棄したいと何度も仰っていましたから、リシアを婚約者にした方がいいに決まっているわ」
「お父様とお母様は何を言ってるんですか! それではマリーが可哀想です!」
可哀想と理由をつけて、リシアは私をルドレスト子爵家にいさせたいらしい。
両親としては私が出て行ったとしても、ザオードは間違いなくリシアを好きだから問題ないと考えている。
ザオードがいない内に、私はここから出て行きたい。
そして可哀想と言ったリシアには、言っておきたいことがある。
「お姉様は可哀想と言いましたけど、今までの仕打ちより平民になった方がマシでしょう」
「うっっ……子爵令嬢から平民になるのよ! マリーはよく考えなさい!」
「今までずっと考えた上で、出て行くと言っています。お姉様、いいえリシア様は、私に出て行かれると困る理由でもあるのですか?」
「そ、それは……ないわよ! さっさと出て行きなさい!!」
本当の理由を話せば、リシアが両親から失望される。
それが嫌だから諦めたようで、私は屋敷を出て行くことにした。
■◇■◇■◇■◇■
屋敷を出て、私は行きたい場所があった。
歩いて向かうから今日は間に合わないけど、野宿をするための準備もできている。
私の魔法の実力ならテントで休んでも問題なくて、暗くなるまで歩こうと考えていた。
そんな時――私の元に、元姉リシアが駆けて来る。
私の前に立ったリシアは、明らかに焦った表情をしながら叫んだ。
「今までのことは謝るから、マリーは今すぐ屋敷に戻りなさい!」
「謝るだけで、リシアは事実を家族に話す気はないのでしょう」
「うっっ……本当のことを言っても、お父様達は信じないわよ!」
確かにそうかもしれないけど、信じさせるため行動する気もなさそうだ。
日が暮れて夜になる前に、リシアは諦めて屋敷に戻るはず。
私の考えは変わらないし、この場で言いたいことを言っておこう。
「これから私がいなくなれば、ザオードやリシアは大変そうですね」
「今まで従っていたのに、どうして急に出て行くなんて言い出すのよ!」
「むしろ今まで従っていたことがおかしいと思わないのですか、我慢の限界がきただけです」
「うぅぅっ!!」
元姉リシアは憤り、私を睨んで何も言えないでいる。
後悔させることができたから、私はもうリシアと話すことはない。
そう考えていた時――私に向かい、リシアが魔法を繰り出す。
「まさか姉が魔法で攻撃するなんて考えないでしょう! 家に戻るというまで痛めつけて――」
「――まさか元姉だからといって、警戒されていないと思っていたのですか?」
風魔法で私を倒そうとしたみだいけど、それ以上の風魔法を繰り出す。
暴風が直撃したリシアは吹き飛んで――私との力の差を再確認できたからか、倒れた状態で叫び出す。
「待って! 今までのことは謝るしお父様やお母様にも全部話すから! 出て行くのをやめなさい!!」
「やめるわけないでしょう。これから後悔してください」
そう言い、私は倒れているリシアの元から去っていく。
ザオードを愛することをやめた私は、自由に生きることにした。
姉リシアは食卓にいて、父と母の3人で談笑している。
今日の私の活躍をリシアは自分の功績にしていそうで、実際は外でザオードと楽しい時間を過ごしていたのは間違いない。
私の食事はないようで、戻ってすぐに領主の父が話す。
「マリーは遅かったな。今すぐザオード様の宿題を終わらせろ、それまで食事をとることは許さん」
「リシアから聞いたけど、あまり役に立たなかったみたいね。せめてザオード様の力になりなさい!」
父と母はリシアの発言を信じ切り、領地のために動いたのが私だけとは知らない。
ここまで酷いと未練もなくて――私は、家族がいるこの場で告げる。
「私は限界です。ルドレスト家から出て行くことにします」
「……そうか。それなら出て行けばいい、ザオード様の婚約者をリシアにするとしよう」
「はぁっ!? マリーは何を言ってるのよ!!」
私の宣言を聞き、領主の父は呆れながら今後について話す。
リシアだけ焦っているのは、私の本来の力を知っているからだ。
父は困惑している様子で、リシアに言う。
「リシアは何を焦っている? マリーよりもリシアの方が優秀で、ザオード様もリシアの方が好きだろう」
「そうね。ザオード様はマリーとの婚約を破棄したいと何度も仰っていましたから、リシアを婚約者にした方がいいに決まっているわ」
「お父様とお母様は何を言ってるんですか! それではマリーが可哀想です!」
可哀想と理由をつけて、リシアは私をルドレスト子爵家にいさせたいらしい。
両親としては私が出て行ったとしても、ザオードは間違いなくリシアを好きだから問題ないと考えている。
ザオードがいない内に、私はここから出て行きたい。
そして可哀想と言ったリシアには、言っておきたいことがある。
「お姉様は可哀想と言いましたけど、今までの仕打ちより平民になった方がマシでしょう」
「うっっ……子爵令嬢から平民になるのよ! マリーはよく考えなさい!」
「今までずっと考えた上で、出て行くと言っています。お姉様、いいえリシア様は、私に出て行かれると困る理由でもあるのですか?」
「そ、それは……ないわよ! さっさと出て行きなさい!!」
本当の理由を話せば、リシアが両親から失望される。
それが嫌だから諦めたようで、私は屋敷を出て行くことにした。
■◇■◇■◇■◇■
屋敷を出て、私は行きたい場所があった。
歩いて向かうから今日は間に合わないけど、野宿をするための準備もできている。
私の魔法の実力ならテントで休んでも問題なくて、暗くなるまで歩こうと考えていた。
そんな時――私の元に、元姉リシアが駆けて来る。
私の前に立ったリシアは、明らかに焦った表情をしながら叫んだ。
「今までのことは謝るから、マリーは今すぐ屋敷に戻りなさい!」
「謝るだけで、リシアは事実を家族に話す気はないのでしょう」
「うっっ……本当のことを言っても、お父様達は信じないわよ!」
確かにそうかもしれないけど、信じさせるため行動する気もなさそうだ。
日が暮れて夜になる前に、リシアは諦めて屋敷に戻るはず。
私の考えは変わらないし、この場で言いたいことを言っておこう。
「これから私がいなくなれば、ザオードやリシアは大変そうですね」
「今まで従っていたのに、どうして急に出て行くなんて言い出すのよ!」
「むしろ今まで従っていたことがおかしいと思わないのですか、我慢の限界がきただけです」
「うぅぅっ!!」
元姉リシアは憤り、私を睨んで何も言えないでいる。
後悔させることができたから、私はもうリシアと話すことはない。
そう考えていた時――私に向かい、リシアが魔法を繰り出す。
「まさか姉が魔法で攻撃するなんて考えないでしょう! 家に戻るというまで痛めつけて――」
「――まさか元姉だからといって、警戒されていないと思っていたのですか?」
風魔法で私を倒そうとしたみだいけど、それ以上の風魔法を繰り出す。
暴風が直撃したリシアは吹き飛んで――私との力の差を再確認できたからか、倒れた状態で叫び出す。
「待って! 今までのことは謝るしお父様やお母様にも全部話すから! 出て行くのをやめなさい!!」
「やめるわけないでしょう。これから後悔してください」
そう言い、私は倒れているリシアの元から去っていく。
ザオードを愛することをやめた私は、自由に生きることにした。
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