聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした

天宮有

文字の大きさ
上 下
6 / 11

第6話

しおりを挟む
ランダ視点

 聖女に決まったというのに、決まる前よりもザリカの評判は下がっていた。

 鑑定魔法は1日に数回しか使えない上級魔法で、グーリサ伯爵家の薬草畑は毒草が増え続けている。
 全て毒草と鑑定結果が出てしまい、薬草の取引を中止するしかなくなっていた。

 そして毒草が生え続けたせいか、聖女ザリカ以外のグーリサ伯爵家の人々は苦しむこととなる。
 それを回復魔法でザリカが治すようになり、使用人達は辞めていなくなっているようだ。

 俺の部屋に疲弊しているザリカがやって来て、グーリサ伯爵家で起きている出来事を話してくれる。
 エステルがいなくなって2週間しか経っていないのに、様々な問題が発生していた。
 俺の前にいるザリカが、苦しそうな表情を浮かべて言う。

「薬草畑は消すことにしました……取引していた人達に反対されましたけど、仕方ありません」
「屋敷の人達を回復魔法で治していたせいで、聖女として活躍できなくなっている。薬草畑を諦めるのは当然だ」
「そのことですが、何故か私が扱う聖魔法の力が弱まっているようです」
「なっっ……」

 ザリカの発言に、俺は唖然とするしかない。
 聖女に選ばれたことで加護を宿し更に強くなるはずなのに、何故か力が徐々に失われているようだ。

「エステルがいなくなってからだ……ザリカには、姉が必要だったのではないか?」

 不機嫌になるかもしれないが、エステルというよりザリカが原因ということにする。
 俺の発言を聞いて、ザリカは激昂して叫ぶ。

「そんなわけないでしょう! エステルは何もしていません! ランダ様も私の発言を信じてくれたから、エステルとの婚約を破棄してくれたじゃないですか!!」
「そ、そうだな……それでも今まで発生している問題は、エステルを追い出した後に起きている」

 普段ならザリカが取り乱した時点で話を止めていたが、今日は違う。
 俺は間違いなくエステルが必要だと考えていて、ザリカにも納得して欲しい。
 そうすればエステルを捜索して連れ戻せると考えていたが、ザリカは認めなかった。

「今まで私が聖魔法で結果を出してきたのに、エステルが必要だったとランダ様は言いたいのですか!」
「いや、しかし――ー」
「――エステルが戻って来ても、解決することは何もありません! 私が今まで以上にやる気になればいいだけです!」

 ザリカは俺のことが昔から好きで、婚約していた姉のエステルを妬んでいた。

 聖魔法がザリカにだけ扱えると知った際は、とにかく活躍することでエステルとの差を見せつけていく。
 そして計画通り俺と婚約できたから、追い出したエステルは戻って来て欲しくないようだ。
 
 やる気になると言ったが、その後ザリカは活躍できていない。
 結果を出せていないことで、本当はエステルが聖女ではないかと噂になっているようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。 しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。 ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。 色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。 だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。 彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。 そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。 しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。

夫で王子の彼には想い人がいるようですので、私は失礼します

四季
恋愛
十五の頃に特別な力を持っていると告げられた平凡な女性のロテ・フレールは、王子と結婚することとなったのだけれど……。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

離縁をさせて頂きます、なぜなら私は選ばれたので。

kanon
恋愛
「アリシア、お前はもうこの家に必要ない。ブライト家から追放する」 父からの予想外の言葉に、私は目を瞬かせる。 我が国でも名高いブライト伯爵家のだたっぴろい応接間。 用があると言われて足を踏み入れた途端に、父は私にそう言ったのだ。 困惑する私を楽しむように、姉のモンタナが薄ら笑いを浮かべる。 「あら、聞こえなかったのかしら? お父様は追放と言ったのよ。まさか追放の意味も知らないわけじゃないわよねぇ?」

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

処理中です...