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第2話

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「ザリカを虐げていたエステルは許せない! 俺はこの場で婚約を破棄する!」

 聖女がザリカに決まり、聖女を祝うパーティ会場で婚約者のランダ王子が私に婚約破棄を宣言していた。

 私は聖魔法を扱うことができなくて、お父様がザリカを聖女に決める。
 ランダ王子から婚約破棄を言い渡されると推測していたけど、その理由に私は驚いていた。

 ザリカを虐げたと言っているけど、私はそんなことをしていない。
 それでも……聖女に決まったザリカを支持する人が多くて、全て私が悪いとパーティ会場の人達は思っているようだ。
 そしてザリカが私の前に立ち、会場の人達に聞いて欲しいのか叫びだす。

「聖魔法が使えないお姉様は、私を妬んでいたのでしょう! 私が聖女に決まった後、お姉様が何をしてくるのかわかりません!!」
「ザリカは俺が守ろう。エステルを国外追放にすれば、ザリカは悩まなくていい!」

 ランダ王子の発言に、パーティ会場の人達が賛同している。
 ここまで妹ザリカの計画通りだから、根回しをしているのかもしれない。
 何を言っても信じてくれなくて――私は、バルラク国を追い出されることとなっていた。

■◇■◇■◇■◇■

 国外追放を言い渡された翌日、私は庭の薬草畑を眺めていた。

 家族はすぐに追い出したいようで、もうここにはいられない。 
 最後に目にしたくなったけど……何故か、薬草畑に変化があった。

 薬草と似ている毒草が生えていて、今までになかったことだ。
 前に起きた問題は、薬草と似ているけど効力のない草が生えている程度だった。
 今回は毒草が生えていると私にはわかったけど……今の私が取り除いたとしても、薬草を盗もうとしていると思われそうだ。

 思案している私に対して、同行していたランダ王子とザリカが言う。

「エステルよ、もういいだろう! 今すぐ屋敷から出て行け!」
「お姉様、いいえエステルがいなくなっても、薬草畑は何も問題ないに決まっているわ!」

 薬草と毒草を眺めていると、ランダとザリカが私を追い出そうとしてくる。
 問題ないと言っているけど、今の時点で問題が発生していた。
 聖女のザリカは何も気付いていないようで、私は説明する気がない。

「わかりました――私は、バルラサ国から出て行きます」

 薬草と毒草の見分けがつかないなら、これからザリカ達は大変そうだ。

 何が原因なのかは気になったけど、家族や元婚約者がどうなっても構わない。
 ランダ王子とザリカは、私が説明しても信じないに決まっている。
 もう関わらなくていいことを喜ぼうと決めて、私は屋敷から出て行くことにしていた。

 精霊達は薬草畑でなくても生きられるようで、私と一緒に来てくれる。
 その後、ザリカの持つ聖女の力は全て私のものと判明するけど――バルラサ国に戻る気はなかった。
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