3 / 31
第3話
しおりを挟む
ヴァン視点
俺は父の国王から呼び出しを受け、廊下を歩いている。
数日前のパーティ会場での出来事が、耳に入ったのかもしれない。
廊下を歩きながら、俺は呟く。
「父上は最初は認めないかもしれないが、エイダはサフィラより優秀だ」
魔法学園で成績が優秀なエイダに、俺は惹かれていた。
エイダを好きになってしまうが、俺には婚約者のサフィラがいる。
それならエイダは愛人にして、サフィラとは婚約しよう。
サフィラもそれで満足するだろうと思っていたのに、奴はエイダに暴言を吐いたらしい。
実際に俺は聞いていないが、エイダが涙を流して報告したのだから真実に決まっている。
「嫉妬してエイダに暴言を吐く奴など、俺の婚約者に必要ない」
そう考えた俺は、サフィラとの婚約を破棄するために動く。
エイダに対して酷い目に合わせていたと罪を捏造し、協力者を用意して暴言を吐かせる。
それによって俺が正しいという場を作り、サフィラとの婚約破棄に成功した。
「サフィラがお守りと言って渡した石も破棄したし、何も問題ないだろう」
もうサフィラとの関係を断っているから、父の国王も納得するはず。
そう考えて俺は、国王がいる玉座の間へ向かっていた。
■◇■◇■◇■◇■
「ヴァンよ! 貴様がサフィラ様との婚約を破棄したというのは本当か!!」
「はい。父上、悪いのは全てサフィラです!」
「なんということだ……なぜ、俺に報告しなかった!?」
「最近の父上は忙しく、あまり城にいなかったからです」
国王が激怒して、俺は何が起きているのか理解できなかった。
サフィラの酷さを知らないからだと、俺は何が起きたのか全てを話す。
そして――話し終えると、陛下が頭を抱えていた。
「ルレック公爵家と話をしたが、全て事実とは……魔石を投げつけたのも、本当なのか?」
「見た目がいいだけの小石など、必要ないでしょう」
父上からは絶対に持っておけと言われるも、婚約を破棄したのだから返したまでだ。
俺が国王に返答すると、激怒して叫ぶ。
「馬鹿が! あの魔石は魔力を籠めると回復魔法が発動する。何か起きても貴様は怪我をすぐに治せたのだぞ!」
「……はっ?」
「ルレック公爵家は魔石が有名で、サフィラ様と婚約することには大きな意味がある。それなのに平民を愛したから婚約破棄しただと!?」
そう言われて、俺はサフィラと婚約した理由を思い出す。
国王が今までにない程に怒っている姿を眺めて、俺は焦りながら弁明した。
「父上! サフィラの悪事も聞いているのでしょう! それなら――」
「――サフィラ様がそんなことをするわけないだろう! 貴様は調べたのか!!」
「ぐっっ……そ、それは……当然です!」
実際は俺が捏造したから、嘘でしかない。
それでもこの場でそんなことを言えば、国王は更に怒るだろう。
顔を青くした俺を眺めて、国王が告げる。
「貴様の愚行は何十人もの貴族が確認している……ルレック公爵家の仲を修復するため、俺は貴様と家族の縁を切ろうか考えているほどだ」
「はぁぁっ!?」
「嫌なら平民のエイダが、サフィラ様より有能だと証明してみせろ。それができないのであれば、貴様は平民となり平民を愛せばいい」
そんなのは無茶に決まっているが、俺はサフィラとの婚約を破棄している。
国王は本気で言っていて、俺が何を言っても考えを変えることはないだろう。
返事ができないで戸惑っていると、国王が俺を眺めて告げる。
「どうした? 貴様が婚約者にしたいエイダは、サフィラ様より劣るのか?」
「そんなわけありません! エイダの方がサフィラより優秀です!!」
俺は断言して、エイダがサフィラより有能だと証明できなければ勘当されることを了承する。
好きなエイダを侮辱されたことが許せず、とんでもない約束をしてしまう。
エイダを信じてはいるが――最悪の事態を想像し、俺は不安になっていた。
俺は父の国王から呼び出しを受け、廊下を歩いている。
数日前のパーティ会場での出来事が、耳に入ったのかもしれない。
廊下を歩きながら、俺は呟く。
「父上は最初は認めないかもしれないが、エイダはサフィラより優秀だ」
魔法学園で成績が優秀なエイダに、俺は惹かれていた。
エイダを好きになってしまうが、俺には婚約者のサフィラがいる。
それならエイダは愛人にして、サフィラとは婚約しよう。
サフィラもそれで満足するだろうと思っていたのに、奴はエイダに暴言を吐いたらしい。
実際に俺は聞いていないが、エイダが涙を流して報告したのだから真実に決まっている。
「嫉妬してエイダに暴言を吐く奴など、俺の婚約者に必要ない」
そう考えた俺は、サフィラとの婚約を破棄するために動く。
エイダに対して酷い目に合わせていたと罪を捏造し、協力者を用意して暴言を吐かせる。
それによって俺が正しいという場を作り、サフィラとの婚約破棄に成功した。
「サフィラがお守りと言って渡した石も破棄したし、何も問題ないだろう」
もうサフィラとの関係を断っているから、父の国王も納得するはず。
そう考えて俺は、国王がいる玉座の間へ向かっていた。
■◇■◇■◇■◇■
「ヴァンよ! 貴様がサフィラ様との婚約を破棄したというのは本当か!!」
「はい。父上、悪いのは全てサフィラです!」
「なんということだ……なぜ、俺に報告しなかった!?」
「最近の父上は忙しく、あまり城にいなかったからです」
国王が激怒して、俺は何が起きているのか理解できなかった。
サフィラの酷さを知らないからだと、俺は何が起きたのか全てを話す。
そして――話し終えると、陛下が頭を抱えていた。
「ルレック公爵家と話をしたが、全て事実とは……魔石を投げつけたのも、本当なのか?」
「見た目がいいだけの小石など、必要ないでしょう」
父上からは絶対に持っておけと言われるも、婚約を破棄したのだから返したまでだ。
俺が国王に返答すると、激怒して叫ぶ。
「馬鹿が! あの魔石は魔力を籠めると回復魔法が発動する。何か起きても貴様は怪我をすぐに治せたのだぞ!」
「……はっ?」
「ルレック公爵家は魔石が有名で、サフィラ様と婚約することには大きな意味がある。それなのに平民を愛したから婚約破棄しただと!?」
そう言われて、俺はサフィラと婚約した理由を思い出す。
国王が今までにない程に怒っている姿を眺めて、俺は焦りながら弁明した。
「父上! サフィラの悪事も聞いているのでしょう! それなら――」
「――サフィラ様がそんなことをするわけないだろう! 貴様は調べたのか!!」
「ぐっっ……そ、それは……当然です!」
実際は俺が捏造したから、嘘でしかない。
それでもこの場でそんなことを言えば、国王は更に怒るだろう。
顔を青くした俺を眺めて、国王が告げる。
「貴様の愚行は何十人もの貴族が確認している……ルレック公爵家の仲を修復するため、俺は貴様と家族の縁を切ろうか考えているほどだ」
「はぁぁっ!?」
「嫌なら平民のエイダが、サフィラ様より有能だと証明してみせろ。それができないのであれば、貴様は平民となり平民を愛せばいい」
そんなのは無茶に決まっているが、俺はサフィラとの婚約を破棄している。
国王は本気で言っていて、俺が何を言っても考えを変えることはないだろう。
返事ができないで戸惑っていると、国王が俺を眺めて告げる。
「どうした? 貴様が婚約者にしたいエイダは、サフィラ様より劣るのか?」
「そんなわけありません! エイダの方がサフィラより優秀です!!」
俺は断言して、エイダがサフィラより有能だと証明できなければ勘当されることを了承する。
好きなエイダを侮辱されたことが許せず、とんでもない約束をしてしまう。
エイダを信じてはいるが――最悪の事態を想像し、俺は不安になっていた。
199
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
あなたに未練などありません
風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」
初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。
わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。
数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。
そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる