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第2話

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 パーティ会場では、私に対する暴言が聞こえてくる。
 婚約破棄を受け入れた私は、やらなければならいことがあった。

 この場で私が何を言ったとしても、非難される気がする。
 今日は諦めることにして、明日以降に行動を起こそうと考えていた時だ。
 私がパーティ会場を離れようとした時、ヴァンが私の顔に石を投げつけてくる。

 それは――私がヴァン王子に渡していた、お守りの魔石だった。
 綺麗な小石だけど強度はあって、私の額に痛みが走る。
 額に直撃して私の足下に落ちた魔石を持つと、ヴァンが話した。

「婚約破棄をするのだから、その石はゴミでしかない。貴様が処分しておけ!」

「はい……わかりました」

 額が切れて血が流れている私は、投げつけられた魔石を持ってパーティ会場を去っていく。
 婚約者から渡されたお守りだから持ってはいたようだけど、ヴァンは今日捨てるつもりだったようだ。
 廊下には誰もいなかったから、投げつけられた魔石を眺めて呟く。

「どうやって取り返そうか悩んでいましたけど、ヴァン殿下はこの魔石の価値を知りませんでしたか」

 価値を知っていれば、手放さない方法を考えていたに違いない。
 私は魔石に魔力を籠めると、額の痛みが消えていく。
 魔石の効果によって血も止まり回復することで、額の傷は完全に消えていた。
 
「回復魔法が使える魔石を簡単に手放すなんて……ヴァン王子はこれを渡してから、傷つくことがなかったのでしょう」

 どうにかして取り戻したいと考えていた貴重な魔石だけど、ヴァンの方から手放してくれる。
 これはお父様が、ヴァンが婚約者に決まった際に送るよう言った代物だ。
 
 陛下から効力を知ると無茶なことをしそうだと言われて、魔石の力については口止めされていた。
 何か起きた時に説明して欲しいと頼まれるけど、そんな事態は起きていない。
 この回復魔法を使える魔石はかなり貴重だから、婚約を破棄するのなら回収したかった。

「発言や行動もパーティ会場の人達は聞いていますし、陛下が知れば激怒するのは間違いなさそうです」

 今日の行動から、魔石の力を知っても取り返すことはできないはずだ。
 ヴァンは後から後悔するかもしれないけど、私には何も関係がない。
 とにかく私はパーティ会場から出て、屋敷に戻ろうとしていた。

■◇■◇■◇■◇■

 屋敷に戻り、私は何があったのかを家族に報告する。
 お父様はヴァンに怒っているようで、私を眺めて話す。

「ヴァン殿下は、そこまで酷いとはな……私は何も知らなかったから、陛下も何も知らないはずだ」

「そうですね。陛下に何を言われたとしても、私はヴァン殿下の婚約者に戻りたくありません」

「わかった。私は陛下の元へ行くとしよう」

 私はお父様に、ヴァンを愛することをやめたと伝える。
 納得してくれたようで、お父様はこれから国王と話し合うようだ。

 そして数日後――私の予想通り、国王はヴァンに失望する。
 それを私が知るのは後のことだけど、元の関係に戻ることはなかった。
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