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第4話
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父が私を脅してきたけど、隣にいるヒュームが黙らせてくれた。
いらない婚約者の私は屋敷を出て、これからヒュームの妻になろうとしている。
計画を全て知ったと聞き、焦っているモグルドが叫ぶ。
「ルナは勘違いをしている! 俺はヒリスと浮気をしていない!」
「俺には人間が嘘をついているかわかる……そうだな、今から嘘をつけば苦しむようにしてやろう」
そう言ってヒュームがモグルドを睨み、なにか魔法をかけたようだ。
モグルドは顔を真っ青にしているけど、毒薬の効果もあるのかもしれない。
苦しむ度合がわからないから皆が無言になってしまうと、ヒュームが尋ねる。
「モグルドだったか、お前は本当にヒリスと浮気をしていないのか?」
「そ、それは――うぐっっっ!?」
「モグルド殿下!?」
発言を最後まで言うことができず、モグルドは苦しみだす。
懐から液体の入った瓶、解毒剤らしき物を飲んでから私に頭を下げた。
「俺はヒリスと浮気をしていた! ルナを生贄にして新しい婚約者としたかったんだ!」
「モグルド殿下!? そんなわけ――」
咄嗟にヒリスが否定しようとして、発言ができなくなり倒れている。
同じ魔法をヒュームはヒリスにかけたようで、嘘をつこうとしたようだ。
家族は恐怖して何も言えなくなり、モグルドの発言が続く。
「龍人ヒュームの力は素晴らしい、この力が欲しいんだ! ルナよ望みを変えてくれぇっ!」
「変えるわけないでしょう。いらない婚約者ですから、消えることにします」
「ルナが俺に頼めば、この場の者達を消すこともできる」
ヒュームが提案してくれるけど、そこまでする必要はない。
この場で消すよりも、これから後悔して欲しかった。
「消す必要はありません。ヒューム様、行きましょう」
私がいなくなり、魔力を得ていないモグルド、そして元家族が後悔するのは間違いない。
それならこの場で消さなくても構わなくて――私は、龍人ヒュームの婚約者になっていた。
■◇■◇■◇■◇■
私はヒュームと一緒に、屋敷の外へやって来た。
契約の魔法道具で魔界と呼ばれる大陸には行けないようで、これから私は龍の姿になったヒュームに乗り魔界へ行くようだ。
「とてつもない速度が出るけど、俺が魔法でルナを守るから気にしなくていい」
「わかりました……魔界は、ここから遥か遠くにある大陸なんですよね?」
「そうだ。俺に乗っても数時間かかり、夕方には到着する」
今後については、ヒュームの住んでいる屋敷で話すらしい。
一緒にいたいと出会ってから思うようになり、これから結婚式の後は妻となる。
ヒュームが赤色の大きな龍の姿になって、私が背中に乗ろうとした時……モグルドがやって来た。
「ルナよ待ってくれ! まだ間に合う、俺の婚約者に戻ってくれぇぇっ!」
「解毒剤を飲んだことで、毒が消えているな」
「それでもまだ苦しそうですね。婚約者に戻れとは、どういうことですか?」
私は龍の姿になったヒュームの背中に乗り、モグルドと家族を見下ろす。
発言を聞き、謝罪することで元の関係に戻ろうとしているようだ。
「今まで悪かった! ルナは俺の側室になって欲しい。龍人の妻でも気にしない、俺の側室になることがルナにとっての幸せだ!」
「ルナを諦めたくないようだな……どうする?」
ヒュームは呆れているけど、念の為か私に確認していた。
無茶苦茶な提案だけど、今しか提案できる機会がないから言いたくなったのかもしれない。
モグルドを見下ろし、私は断言する。
「モグルドと一緒にいたら、私は幸せになれません。ヒューム様、行きましょう」
「はぁぁっ!? ルナよ待て! 戻ってきてくれぇぇっ――」
龍の姿になったヒュームが空を飛び、モグルドの声が聞こえなくなる。
いらない婚約者は消えることにして――新しい生活が、はじまろうとしていた。
いらない婚約者の私は屋敷を出て、これからヒュームの妻になろうとしている。
計画を全て知ったと聞き、焦っているモグルドが叫ぶ。
「ルナは勘違いをしている! 俺はヒリスと浮気をしていない!」
「俺には人間が嘘をついているかわかる……そうだな、今から嘘をつけば苦しむようにしてやろう」
そう言ってヒュームがモグルドを睨み、なにか魔法をかけたようだ。
モグルドは顔を真っ青にしているけど、毒薬の効果もあるのかもしれない。
苦しむ度合がわからないから皆が無言になってしまうと、ヒュームが尋ねる。
「モグルドだったか、お前は本当にヒリスと浮気をしていないのか?」
「そ、それは――うぐっっっ!?」
「モグルド殿下!?」
発言を最後まで言うことができず、モグルドは苦しみだす。
懐から液体の入った瓶、解毒剤らしき物を飲んでから私に頭を下げた。
「俺はヒリスと浮気をしていた! ルナを生贄にして新しい婚約者としたかったんだ!」
「モグルド殿下!? そんなわけ――」
咄嗟にヒリスが否定しようとして、発言ができなくなり倒れている。
同じ魔法をヒュームはヒリスにかけたようで、嘘をつこうとしたようだ。
家族は恐怖して何も言えなくなり、モグルドの発言が続く。
「龍人ヒュームの力は素晴らしい、この力が欲しいんだ! ルナよ望みを変えてくれぇっ!」
「変えるわけないでしょう。いらない婚約者ですから、消えることにします」
「ルナが俺に頼めば、この場の者達を消すこともできる」
ヒュームが提案してくれるけど、そこまでする必要はない。
この場で消すよりも、これから後悔して欲しかった。
「消す必要はありません。ヒューム様、行きましょう」
私がいなくなり、魔力を得ていないモグルド、そして元家族が後悔するのは間違いない。
それならこの場で消さなくても構わなくて――私は、龍人ヒュームの婚約者になっていた。
■◇■◇■◇■◇■
私はヒュームと一緒に、屋敷の外へやって来た。
契約の魔法道具で魔界と呼ばれる大陸には行けないようで、これから私は龍の姿になったヒュームに乗り魔界へ行くようだ。
「とてつもない速度が出るけど、俺が魔法でルナを守るから気にしなくていい」
「わかりました……魔界は、ここから遥か遠くにある大陸なんですよね?」
「そうだ。俺に乗っても数時間かかり、夕方には到着する」
今後については、ヒュームの住んでいる屋敷で話すらしい。
一緒にいたいと出会ってから思うようになり、これから結婚式の後は妻となる。
ヒュームが赤色の大きな龍の姿になって、私が背中に乗ろうとした時……モグルドがやって来た。
「ルナよ待ってくれ! まだ間に合う、俺の婚約者に戻ってくれぇぇっ!」
「解毒剤を飲んだことで、毒が消えているな」
「それでもまだ苦しそうですね。婚約者に戻れとは、どういうことですか?」
私は龍の姿になったヒュームの背中に乗り、モグルドと家族を見下ろす。
発言を聞き、謝罪することで元の関係に戻ろうとしているようだ。
「今まで悪かった! ルナは俺の側室になって欲しい。龍人の妻でも気にしない、俺の側室になることがルナにとっての幸せだ!」
「ルナを諦めたくないようだな……どうする?」
ヒュームは呆れているけど、念の為か私に確認していた。
無茶苦茶な提案だけど、今しか提案できる機会がないから言いたくなったのかもしれない。
モグルドを見下ろし、私は断言する。
「モグルドと一緒にいたら、私は幸せになれません。ヒューム様、行きましょう」
「はぁぁっ!? ルナよ待て! 戻ってきてくれぇぇっ――」
龍の姿になったヒュームが空を飛び、モグルドの声が聞こえなくなる。
いらない婚約者は消えることにして――新しい生活が、はじまろうとしていた。
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