3 / 11
第3話
しおりを挟む
私を龍人ヒュームの妻にするため、婚約者モグルドは毒薬まで飲んでいた。
計画を全て知っている私は、ヒュームとの契約に「モグルドに膨大な魔力を与える」ではなく「私を幸せにしてください」と望んだ。
私の発言が完全に予想外だったから、苦しみながらモグルドが叫ぶ。
「ぐぅっっ!? 馬鹿な! ルナが犠牲になれば皆が幸せになるのに、なぜお前だけが幸せになると望む!?」
「病で苦しんでいるはずなのに、モグルド殿下が元気そうだったからです」
「はぁっ!? どれだけ苦しいかわからないのか! ルナは今すぐ望みを変えろ!!」
そう言ってモグルドは血を吐くけど、そこまでするのか。
演技が下手なのはわかってしまうから、毒薬だけは本物を使い苦しむことにしたのかもしれない。
モグルドが隠し持っている解毒薬は回復薬も兼ねているし、魔力を得て治せなくても解毒薬を飲めばいいと考えていそうだ。
苦しんでいる姿を目にして呆れていると、私の隣にいるヒュームが言う。
「望みを変える必要はない。ルナがモグルドの苦しむ姿を見たくないと頼めば、幸せにするという望みを叶えるため俺が治すだけだ」
「ぐぅっっ!? そ、それは……」
ヒュームの説明を聞き、モグルドが怯む。
どうすればいいのか悩んでいる様子で、ヒュームは私を眺めて尋ねる。
「幸せになるという望みを叶え続けるつもりだが、魔界へ行き俺の妻になるのは契約の条件だ……ルナは、それで幸せと思えるのか?」
「わかっています。魔界へ行くことは問題ありません」
「そうか。それなら、ルナが頼めばあの程度の病なら俺が治してみせよう」
魔界に行くと聞いて、ヒュームが安堵している。
私達の会話を聞き、閃いたのかモグルドが叫ぶ。
「待て! ルナが魔界へ行くのならリノーマ家の損害が大きすぎる。リノーマ家のためにも、次期領主となる俺に膨大な魔力を与えるべきだろう!」
どうやら強引に、計画通りモグルドは龍人から魔力を得たいようだ。
ヒュームは私を眺めて、決断して欲しそうにしている。
発言的に私を守ってくれそうだから、もう全て話すことにしよう。
「望みは変えませんし、モグルド殿下は治さなくて構いません」
「はぁぁっっ!? ルナは俺を見捨てるというのか!?」
「私は計画を全て知っています。見捨てると言いましたが、持っている解毒剤を飲めばいいだけです」
「ルナが頼むのなら、貶めようとしたこの男を消しても構わないぞ」
部屋に現れてから今までの話を聞き、ヒュームもモグルドが私を貶めようとしていると知った様子だ。
私とヒューム以外の人が驚愕しているけど、もう会うこともないだろうから全て話しておこう。
「いらない婚約者は消えてもらうと、モグルド殿下、いいえモグルドは言っていましたよね」
「そ、それは……」
「いらない婚約者の私は消えることにします。それでも――貴方達の思い通りにはなりません」
この場で私が断言すると、父が激怒して叫ぶ。
「ふざけたことを言うな! 生贄となるのだから、ルナはそこの龍人にモグルド殿下に魔力を与えるよう頼め! 王家とリノーマ侯爵家を敵に回すこととなるぞ!!」
「そうなれば、俺がルナを守るだけだ」
「うっっ!?」
「王家とリノーマ家を敵に回すとお前は言ったが、龍人を敵にすればこの国の総力でも俺達には敵わない。ルナは何も気にしなくていい」
父が脅してきたけど、龍人のヒュームが黙らせてくれる。
モグルドとの婚約を解消できることが嬉しくて、私はヒュームと一緒に、魔界と呼ばれる大陸へ行くことにしていた。
計画を全て知っている私は、ヒュームとの契約に「モグルドに膨大な魔力を与える」ではなく「私を幸せにしてください」と望んだ。
私の発言が完全に予想外だったから、苦しみながらモグルドが叫ぶ。
「ぐぅっっ!? 馬鹿な! ルナが犠牲になれば皆が幸せになるのに、なぜお前だけが幸せになると望む!?」
「病で苦しんでいるはずなのに、モグルド殿下が元気そうだったからです」
「はぁっ!? どれだけ苦しいかわからないのか! ルナは今すぐ望みを変えろ!!」
そう言ってモグルドは血を吐くけど、そこまでするのか。
演技が下手なのはわかってしまうから、毒薬だけは本物を使い苦しむことにしたのかもしれない。
モグルドが隠し持っている解毒薬は回復薬も兼ねているし、魔力を得て治せなくても解毒薬を飲めばいいと考えていそうだ。
苦しんでいる姿を目にして呆れていると、私の隣にいるヒュームが言う。
「望みを変える必要はない。ルナがモグルドの苦しむ姿を見たくないと頼めば、幸せにするという望みを叶えるため俺が治すだけだ」
「ぐぅっっ!? そ、それは……」
ヒュームの説明を聞き、モグルドが怯む。
どうすればいいのか悩んでいる様子で、ヒュームは私を眺めて尋ねる。
「幸せになるという望みを叶え続けるつもりだが、魔界へ行き俺の妻になるのは契約の条件だ……ルナは、それで幸せと思えるのか?」
「わかっています。魔界へ行くことは問題ありません」
「そうか。それなら、ルナが頼めばあの程度の病なら俺が治してみせよう」
魔界に行くと聞いて、ヒュームが安堵している。
私達の会話を聞き、閃いたのかモグルドが叫ぶ。
「待て! ルナが魔界へ行くのならリノーマ家の損害が大きすぎる。リノーマ家のためにも、次期領主となる俺に膨大な魔力を与えるべきだろう!」
どうやら強引に、計画通りモグルドは龍人から魔力を得たいようだ。
ヒュームは私を眺めて、決断して欲しそうにしている。
発言的に私を守ってくれそうだから、もう全て話すことにしよう。
「望みは変えませんし、モグルド殿下は治さなくて構いません」
「はぁぁっっ!? ルナは俺を見捨てるというのか!?」
「私は計画を全て知っています。見捨てると言いましたが、持っている解毒剤を飲めばいいだけです」
「ルナが頼むのなら、貶めようとしたこの男を消しても構わないぞ」
部屋に現れてから今までの話を聞き、ヒュームもモグルドが私を貶めようとしていると知った様子だ。
私とヒューム以外の人が驚愕しているけど、もう会うこともないだろうから全て話しておこう。
「いらない婚約者は消えてもらうと、モグルド殿下、いいえモグルドは言っていましたよね」
「そ、それは……」
「いらない婚約者の私は消えることにします。それでも――貴方達の思い通りにはなりません」
この場で私が断言すると、父が激怒して叫ぶ。
「ふざけたことを言うな! 生贄となるのだから、ルナはそこの龍人にモグルド殿下に魔力を与えるよう頼め! 王家とリノーマ侯爵家を敵に回すこととなるぞ!!」
「そうなれば、俺がルナを守るだけだ」
「うっっ!?」
「王家とリノーマ家を敵に回すとお前は言ったが、龍人を敵にすればこの国の総力でも俺達には敵わない。ルナは何も気にしなくていい」
父が脅してきたけど、龍人のヒュームが黙らせてくれる。
モグルドとの婚約を解消できることが嬉しくて、私はヒュームと一緒に、魔界と呼ばれる大陸へ行くことにしていた。
71
お気に入りに追加
788
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
【完結】私は関係ないので関わらないでください
紫崎 藍華
恋愛
リンウッドはエルシーとの婚約を破棄し、マーニーとの未来に向かって一歩を踏み出そうと決意した。
それが破滅への第一歩だとは夢にも思わない。
非のない相手へ婚約破棄した結果、周囲がどう思うのか、全く考えていなかった。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す
干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」
応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。
もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。
わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。
【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました
紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。
ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。
困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。
頼れる人は婚約者しかいない。
しかし婚約者は意外な提案をしてきた。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる