別れたいようなので、別れることにします

天宮有

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第3話

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 カインが伝えようか提案していたけど、それは私が拒んでいた。

 ロガムラ公爵家の令息だけど、王子のルグドに敵視されるとどうなるかわからない。
 心配してくれただけで嬉しくて、これは私がルグドと話し合うべきだ。

 納得してくれたカインは力になると言ってくれて、それだけで嬉しい。
 そして数日後――私は城に向かい、部屋でルグドと話をすることにしていた。

「お前のような役立たずと話すことなどないのだが、何のようだ?」

 部屋に入り椅子に座ると、ルグドは嫌そうに椅子に座って対面している。
 明らかに見下しているけど、それはルグドの命令が原因だ。
 もう嫌になっている私は、力を抑えることを止めようと決意していた。

「私はもう、力を抑えたくありません」

「はぁっ? お前は何も学んでいない時は優秀だが、学園の授業についていけなくなっただけだろ」

 やっぱりルグドは、見当違いのことを考えていたようだ。
 それならむしろ好機だと考えて、私は本心を話す。

「それならもう、力を抑えなくても構いませんね」

「うっっ……いや、何か不正をして力を得たと思われそうだ。今のままでいい!」

 納得するかと思ったけど、ルグドは環境が変わることが嫌なようだ。

 私を見下してクラスメイトと談笑できる今のままでいいのは、ルグドだけ。
 常に蔑まれて孤立している生活は嫌だから、私はルグドに対して言う。

「私が役立たずで迷惑していると仰っているのに、今のままでいいのですか?」

「伯爵家の令嬢如きが、俺に意見するな! お前は俺の命令だけ聞いていればいいんだ!!」

 ルグドの暴言を聞いて――私は、限界がきていた。

 婚約を破棄するのなら、公爵令息のカインが力になると言ってくれた。
 何も心配しなくていいと話していて――私は、ルグドよりもカインを信じたい。

「俺の命令が聞けないというのなら、婚約を破棄しても構わないのだぞ?」

 この発言は、魔法学園に入学する前にも聞いたことがある。
 前と同じように納得するだろうと考えていそうだけど、私の返答は違う。

「そうですか――わかりました」

「……なに?」

「どうぞ婚約を破棄してください――いいえ、今の発言を理由に婚約を破棄します」

 そう言って、私は魔法学園に入学してから学んでいた音の魔法を使う。
 学園で孤立していたこともあって、音の魔法について学んでいたことは誰も知らなかった。

『――俺の命令が聞けないというのなら、婚約を破棄しても構わないのだぞ?』

「なっっ……俺の声が、どうして聞こえる!?」

「魔法で私が聞いた音を記録しました――それでは、さようなら」

 目的を果たした私は、部屋から出て行くことにする。
 公爵令息のカインが力になってくれるし、問題なく婚約を破棄することができそうだ。
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