別れたいようなので、別れることにします

天宮有

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第1話

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 伯爵令嬢の私アリザ・サーノラは、第二王子ルグド・ムーディスの婚約者だ。

 私のお父様とお母様が優秀な魔法使いで、魔法の実力に期待した国王の提案で決まったと聞いている。
 半年前に婚約が決まり、来週から私とルグドは魔法学園に入学することとなっていた。

 入学前にルグドは話したいことがあるようで、私は城へ向かう。
 部屋に入ってからルグドが話をはじめて、私はその内容に驚いていた。
 
「王子であるこの俺より、婚約者のお前の方が優秀などあってはならない。魔法学園では力を抑えろ!」

「えっ……? ルグド殿下は、何を仰っているのですか?」

 意味の解らない命令を出されて、私は唖然とするしかない。
 城内で魔法について学んだ際、明らかにルグドよりも私の方が優秀だ。
 魔法の知識と実力の差にルグドが悔しがっていたことは知っていたけど、学園では力を抑えろと命令するなんて信じられなかった。

 私が困惑していると、ルグドは激怒して叫ぶ。

「俺の婚約者だというのにそんなこともわからないのか! 普通なら俺は入学して好成績で目立てるのに、婚約者であるアリザの方が優秀なら評判が落ちるかもしれないだろう!」

 国王が私を婚約者に選んだ理由は、魔法の実力に惹かれたからだ。
 それなのに自分の評判が一番と考えているルグドは、私が魔法学園に入学して目立って欲しくないらしい。
 理由を聞いた私は、ルグドに言いたいことがある。

「ルグド殿下が優秀で、婚約者の私も優秀なら評判が上がるのではありませんか?」

「伯爵家の令嬢如きが、俺より優秀と他の貴族達に思われることが嫌なんだ! 俺の婚約者ならそれぐらい察しろ!」

 察することができるのは、ルグドが私を見下していることぐらいだ。
 第一王子の婚約者が、公爵家の令嬢というのも関係しているのかもしれない。
 婚約してから半年もの間、第二王子のルグドは私やサーノラ伯爵家を蔑んでいた。

「俺の命令が聞けないというのなら、婚約を破棄しても構わないのだぞ?」

「それは――私は魔法学園で、力を抑えます」

 ルグドの脅しを聞いて、私は命令に従うしかなかった。

 相手は王子で、婚約を破棄されると家族に迷惑がかかるかもしれない。
 無茶苦茶な命令だけど、私は従うしかないと考えてしまう。

「話は終わりだ。もう帰っていいぞ」

 私が婚約者ということが、ルグドは嫌そうだ。

 今の時点では、私はルグドの言動に我慢することができている。
 それでも――学園に入学した後、私は我慢できなくなっていた。
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