私との婚約を破棄して問題ばかり起こす妹と婚約するみたいなので、私は家から出ていきます

第３話

　私が家を出ると宣言すると、お父様とお母様が慌てて叫ぶ。

「ルーシーは何を言っているんだ！？」

「婚約者が変わってしまうから、気が動転しているだけに違いありません……屋敷に戻ってから、話し合いましょう」

　お父様は取り乱しているけど、お母様は冷静に話す。
　それでも声で動揺がわかり、私の発言を受け入れたくないようだ。

「いいえ。私よりも問題ばかり起こす妹を優先する家族が嫌になりました――この場で、私はルラック家の縁を切ります」

　そう言っても、お父様とお母様は納得しないに決まっている。
　お母様はこの場で家族の縁を切られることは避けたいようで、とにかく私を屋敷に返そうとしていた。

　もう宣言した以上――屋敷に戻ると、私はどんな目に合わされるかわからない。
　この場でシタート伯爵家の賛同を得て、私がルラック家と縁を切って当然だと思わせる必要がありそうだ。

　そう考えた私は、元婚約者ランドンに話す。

「ランドン様、私は今まで愚妹ルーミスを抑えていました。その役目をお譲りしますわ」

「何を馬鹿なことを言っている。ルーミスが問題を起こすわけがないだろう！」

　ランドンが私の発言に怒り、ルーミスも叫ぶ。

「そうですわ！　お姉様はランドン様が婚約を破棄した事実が受け入れられず、錯乱しているようです！」

　ルーミスはランドン、そしてシタート伯爵家から好かれていた。
　他の貴族に頭を下げたり、謝罪に向かった私を見下していて――ランドンの父親、シタート家の領主が話す。

「ルーシーは見苦しいな……この場で家族の縁を切ると言ったのだ。ルラック家も認めればいいだろう」

「そ、それは……」

「私はルーミスが問題を起こすような子には見えない……むしろ悪評が立っているルーシーを、この場で排除するべきだ」

「父上の言う通りです。子に情があるのはわかりますが、ルーシーの望むようにさせるべきでしょう」

　シタート伯爵家の発言に何も言えないのは、反論すれば私の発言が事実だと知られてしまう可能性があるからだ。

　私の家族は問題を起こすけど見た目が可愛いルーミスを溺愛していて、シタート家が貰ってくれるのなら安泰だと考えていたに違いない。

　この後は、私を侍女のようにしてルーミスの性格を正して……ルーミスがマシになったら、私には別の婚約者を用意する予定だったはず。

　そんな目論見を想定することができている私は――この場で、家族の縁を切ろうとしていた。