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心のトリガー

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豊穣の国フーバ、厄災まであと3日。
俺は今、草原に居る。
共に居るのはサリウスとリンネだ。
エリシャはエルデンに向けて今朝早くに飛んでいった、フーバ王の手紙を持って。
これで正式に協力体制となる筈だ。
救援物資の方もお願いしておいた。
エリシャはグランデからも送ると言っていた。
これでフーバも安心だろう。
後は厄災を止めるのみ。

・サリウス
「浩二殿、僕はどうすればいい?」

・「そうだな、まずは試す事がある。」

そう、出来るかどうかは未知数。
行き当たりばったりです。
まあ最悪エリシャの能力を解除すればいい。
2人同時プレイは可能なんだ。
エリシャを解除すればサリウスに渡せるはず。

・サリウス
「試す事?」

・「そう、サリウスはそこに立っててくれ。
変化が出たら教えてくれればいい。」

・サリウス
「わ、解った。」

さてと、始めますか。
俺の『妄想力』『想像力』。
そして『具現化』の能力。
この3つを最大限に引き出すんだ。

俺の能力の基盤となっているゲーム。
これは2人同時プレイが可能だ。
そしてもう一つモードがある。

オンラインプレイだ。

このモードは最大4人同時に戦えるのだ。
しかし一台では出来ない。
当然4台の本体とゲームソフト(データ)
そしてモニターも4台必要となる。
なんてたってオンラインだしね。

簡単な事です。
それを『想像』すればいい。
やってみる価値はあるだろう。

・「『妄想』を『具現化』、オンラインモード。
接続、エリシャ、サリウス。」

頭の中でやる作業だ。
ロードなど気にしなくていい。
ずっと部屋に閉じこもってやってきたんだ。
一瞬で描き出せる。

・サリウス
「何だ?目の前に妙な物が見える!」

サリウスがビビってる。
どうやら成功したみたいだな。

俺はエリシャの時のように説明する。
若干違うのは、、、
彼は『レンジャー』だという事。

・サリウス
「これは一体どういう事だ?」

・「これが俺の能力だよ。
エリシャもこの能力を使っている。
少し違う能力になるけどね。」

さて、ここから長い説明が始まります。
でも『レンジャー』は癖のないキャラ。
説明するのは非常に簡単なのだ。

一度経験しているのでスムーズに進む。
やはり問題は攻撃力の概念だ。
APを有効にすると痛くも痒くもなくなる。
なんてたって桁が違うからね。
なので比較対象がどうしても必要となる。
さて、どうしたものか。

・「何か、覚えている事ないかな?
結構痛かったぞって言う経験。」

悩むサリウス。
そして徐に答える。

・サリウス
「リンネにビンタされた時は痛かったです。」

何故に敬語?
て言うか何したの?

・リンネ
「あれは、サリウスがあんなこと言うから。」

二人の世界に入ってしまいそうだ。
そうなると困る。
もうビンタで良いか。

・「んじゃリンネのビンタで良いや。」

・サリウス
「え?」

ビビるサリウス。
あんたもっと酷い攻撃に耐えたでしょうよ。

・リンネ
「サリウスを叩けばいいのね?
これも特訓の内ですね。」

何故かやる気になっているリンネ。
おいサリウス、お前何やらかした?

・サリウス
「ちょっと、ちょっと待って!」

・リンネ
「観念なさい、強くなりたいんでしょ?
だったら、歯を食いしばって耐えなさい!」

リンネが大きく振りかぶる。
サリウスは目を閉じて力を籠める。

・リンネ
「あの時、どれ程心配したか知ってますか?
貴方が治ってどれ程嬉しかったか解りますか?
なのに、、、なのに、、、
エリシャにデレデレしてるんじゃないわよ!」

バチコーン

凄まじい音が鳴り響く。
少しの沈黙、そして

・サリウス
「あれ、、、、痛くない?」

・リンネ
「うそ、痛みを感じないの?」

完全にフルスイングしてたよね。
しっかり振り抜いてたし、、、
普通ならぶっ飛んでるんじゃないか?
リンネさんは格闘タイプなのか?
音が尋常じゃなかった。

・「サリウス、APがどうなったか解るか?」

・サリウス
「1000だったのが800になった。」

ビンタで200?
マジでか、とんでもねえな。
リンネさん普通の兵士より強いじゃない?

・「戦闘中なら誤差が出る。
ガードしたりするからね。
でも無防備で受けた時の数値。
それを攻撃力と呼んでいる。」

・サリウス
「なるほど、800になったという事は。
リンネのビンタは攻撃力200って事?」

・「その通り!理解が早くて助かるよ。」

・リンネ
「少し恥ずかしいです。
でも200とはどれ程なのでしょうか?」

・「そうだね、リームの魔法が360。
エルデン兵士長の攻撃が280。
魔道兵器が100って所かな。」

・リンネ
「100って、魔道兵器最弱ね。
私のビンタ以下じゃない。」

いえ、あなたのビンタはかなり強めです。
言わなかったが一般兵士の攻撃は100以下。
2倍以上の攻撃力でした。

・サリウス
「爆発を見る限りそんな感じしないのにね。」

今までフーバは魔道兵器を使っていた。
だからあの爆発が目に焼き付いてるんだね。
確かに魔道兵器の爆発は凄かった。
爆発だけはね。

・サリウス
「僕の使える武器はどのくらいの攻撃力?」

・「そうだな、連射が利くのは500程度。
一撃必殺なら13000位かな?」

・サリウス
「い、、、いちまん、、?」

めちゃめちゃ驚いている。
まぁ、規格外ですからね。

・「とりあえず種類を覚えて欲しいかな。
武器によって攻撃力は変わるからね。
結構な種類があるから大変だぞ?
とりあえず3個か4個ほど選んでくれ。
自分に合う武器を使えば良い。」

そして武器のプレゼンが始まる。
まずは俺が使い、その後サリウスが使う。
そして感想と概要をリンネがメモする。
全ての武器を試すまで続けられた。

そんな感じで一日が過ぎていく。

・リンネ
「楽しそうね、サリウス。」

サリウスの生き生きしている姿。
それを見て微笑むリンネ。
二人の行動作業が続いて行った。


~次の日~

今日も草原で武器の扱いを学ぶ。
リンネも一緒に来ている。
ずっと一緒だな。
そう言えば寝る時、一緒の部屋に入っていった。
既にそういう仲なのだろうか?

、、、羨ましい。

・サリウス
「浩二、この武器はどうやって、、、
って、浩二?何か怒ってない?」

怒ってませんよ!
妬んでるだけですぅ。

・「まあいいや。
今日はもう一度武器を一通り使ってくれ。
メモを見ながら一人でやってみて。」

武器の特性を理解して貰わないと困る。
後は『音声チャット』、つまり通信方法。
そしてアレを教えなければ。
上手く使えるかな~?

こうしてサリウスの特訓は続いて行った。


~厄災前日~

今日はリンネは来ていない。
危ないので遠慮してもらったのだ。
何故なら今日は、

・「俺と模擬戦を行う。」

・サリウス
「解った、遠慮はしないからね。」

本当ならエリシャとやってほしかった。
だがエリシャはまだ戻っていない。
仕方がないので俺が戦う。

・「APは高めに設定しておく。
常にAPを確認しつつ戦ってくれ。」

さて、俺は『ダイバー』にしますか。
的当ての練習って事で。

・サリウス
「AP30000?
最初は100だったよね。
浩二は一体どれほど努力したんだ?」

何度も言うがAPを上げる努力はしてません。
元の世界では頑張ってましたがね。

俺は空に飛び立つ。
そして上空から攻撃を開始する。

・「ボケっとするな!ドンドン行くぞ。」

サリウスとの戦闘が始まった。
アサルトライフルで応戦するサリウス。
連射が利いて使いやすいのだろう。
的確に狙ってくる。
だが簡単に当たってはやらん。
俺は上手く飛んで避ける。
そして攻撃を繰り出す。

・サリウス
「くそ、当たらない。
ならばこの武器だ!」

色々試して自分に合った武器を探し出すんだ。
尚も攻防は続く。

・サリウス
「ちょこまかと!」

熱くなり始めたな。
そうなると射撃制度は落ちるぜ?

・「サリウス、考えるな。
頭で撃つんじゃない、心で撃て。
感じるままにトリガーを引くんだ。」

何となくカッコいい事を言ってみる。
意味は解りません。

・サリウス
「心で、、、、、」

そんな適当な言葉を鵜呑みにする。
何か悪い事をした感覚になる。
もっと的確なアドバイス、、、

・「えっと、、、頑張れ!」

何も浮かばなかった。

・サリウス
「心で撃つ、、、感じるままに。」

必死に何かを考えるサリウス。
適当なこと言いすぎたかな?
心配になって来た。

・サリウス
「これだ、『ファング』」


*ファング
大口径の長距離用狙撃用ライフル。
一発ごとに装填するタイプの武器。
連射が利かないため一撃を外すとキツイ。
しかし威力はとんでもない。
最大1800m先の敵を撃ち抜く事が可能。
射撃時の反動は大きい。
ダメージ13000超えの必殺武器。


・「『ファング』ね。
近接ではお勧めできないぞ?」

なんてたって撃ち終わりの隙がデカい。
さらに空の敵なら尚更狙いにくい。
サクッと避けてそれを教えて、、、

・サリウス
「そこっ!」

ドシュ

当てやがった、、、
だがそんなマグレは2度と無い!

サリウスの装填が終わる。

・サリウス
「そこだ!」

ドシュ

命中した。
俺は地上に落とされる。

・「マジかよ、、、」

一撃13000超えだ。
3発で殺されてしまう。

・「まいった、降参だ。」

全く持って誤算です!
まさかサリウスにこんな才能があるとは。

・サリウス
「心で撃つ、こういう事なんだね。」

お前は天才か?
どういう事か俺が教えて欲しい。
だが言い出したのは俺なんだよね。
聞けるわけがない。

・「よく、理解したな。
そういう事だ。」

やけくそだ、適当に言っておこう。

・「サリウスは狙撃が得意なのか?」

・サリウス
「自分でもよく解らないけど。
狙いを定めていると何となく先が読めた。
だから予測と重なった時に撃ったんだ。
頭ではなく心でね。」

うん、何を言ってるのか解りません。
まあ良いか、これで準備完了だ。
武器も全て覚えてくれた。
そしてビークルも。

これで準備は終了だ。
明日に備えて休んでおくか。
俺とサリウスは城に戻る事にした。
サリウスの呼び出したビークル。
バイクに乗って帰っていった。


*ビークル
戦闘車両の事。
レンジャーはバイク・ヘリ・戦車、
後はちょっとしたロボが呼べる。
それぞれに名前があるがそこは省略。
レイダーが呼べる物に比べると非常に弱い。
そして種類も少ない。
作者はたまにバイクを呼んで遊んでいます。
めちゃめちゃ早いんですよね♪
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