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昭和六年広島
(15)常盤薺①─追想、昭和五年広島─※
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腹の上の重みと腰に感じた鈍い快楽で零士は目を覚ました。
どうやら、眠っていたらしい……寝る前に何をしていたっけ、と考えてなんとか思い出そうとろくすっぽ働かない脳を回転させる。
たしか……そうだ。かつての喧嘩相手だった男と思わぬ再会を果たし、相手から酒を飲まないかと誘われたんだった。
珍しく二日酔いのような頭痛を感じながら連鎖的に寝る前の出来事を思い出そうとする。山の中腹でポツンと寂しげに建つ一軒家が下宿先と聞いたときには驚いた。聞いたところによると、かつて尾坂家の所有だったのを管理する代わりに貸してもらって独り暮らしをしているそうだ。
それで肝心の酒の方はどうだったかと言うと、まあ馬鈴薯が原材料とは思えないほどスッキリした飲み心地と香りだったとだけ。仙の方も相当飲んでいたはずだが、零士の記憶があやふやになりだした頃になっても顔色ひとつ変えずに涼しげな表情のままで飲んでいた気がする。
酒には強い方だと自負していたつもりだが、素直に敗北を認めたくなるほど仙は酒に強かった。
じゃあ、自分は仙の下宿先で酔っ払って眠ってしまったのだろうか。そういえば途中からそのアクアビットとかいう北欧の芋焼酎に加えてウォッカやらウイスキーやら度数の高い酒も出てきた気がする。前後不覚になるほど飲んだ経験は無いが、恐らくそうなのだろう。
そう結論付けた零士は、迷惑をかけてしまったことを詫びようとして息を吐いた──その時だった。
「ッ……ごめ……ごめんなさっ……」
声が聞こえる。どこかで聞いたことがあるような……
いや、待てよこれは…仙の声じゃないか?
「っ!!?」
その考えに至った瞬間、酔いも眠気も一気に覚めた。カッと目を見開いて慌てて起き上がろうとしたが、しかしそれは叶わない。なぜなら自分の両の腕が頭上で縛られていたためだ。感触からして革帯だろうか。次いで暗闇の中、視界の確保をしようと正面に目を向け必死で目をこらす。
「瀧本ぉ………ッ、ごめん、なさ………あうっ………許し、てぇ……」
「なっ、おま!?」
ようやく視界が暗闇に慣れ、目に入ってきた光景に仰天してしまった。
月の明かりに照らされて、艶かしい肢体が淡く照らされる。
ほど良く色付いた白い肌に玉のような汗が滴り、丁寧に整えられていたはずの少し長い髪は汗で額に張り付き乱れていた。甘い吐息と共に漏らされた許しを乞う言葉にゾクゾクっと加虐心を刺激されて、否が応でも興奮するのが自分でも判る。
「ひッ、ぐぅ……おっきぃ…………」
血液が魔羅に集中したせいか、ただでさえナカをみっちり埋め尽くしていた杭が限界を超えてミチミチと肉壁を圧迫した。カリの部分がふっくらとしたしこりをコリっと刺激する感覚。たちまち悲鳴のような嬌声が上がった。
陰茎の裏側、前立腺を小突いてしまったのだろう。過敏になっていたそこを抉られて、きゅぅっと奥が締まった。亀頭をねっとり捏ねられるような刺激に射精しそうになったが歯を食い縛って耐える。その時腰を突き上げたがため、更に奥を刺激する事になった。ゴリゴリと肉鞘を蹂躙しながらつるんと滑って、バチンと肌を打つ音を立てながら最後まで納めきる。きゃん、という仔犬のような声が上がると同時に充血したひだが吐精を急かすように全方向から弱い部分を攻め立てた。
蚯蚓千匹、とんでもないギヤナイスだ。ともすればこれが本来排泄器官ということを忘れてしまいそうなほど。
───ここで奥にぶちまけてやったら、どれほど気持ちが良いのだろう。
誘惑が零士の理性を飛ばしかけた。好き放題に快楽を貪っているこの男の奥の奥まで精を擦り付けて、征服してやりたい。自分の膝元に屈服させて、そして──
「いや、いやいや! ちょっ、待てっ!!お前、まっ、ちょっと待て!!」
いや、そんな事よりどうして軍衣一枚羽織っただけの仙が、自分の上に跨がって腰を振っているのだ!?
一瞬でパニックになった零士は何がなんだか判らない内に絶叫していた。
しかも、自分の下腹部に感じる快感……これはもしかしなくても、仙が自分の魔羅を自らくわえこんで快感を得ているんじゃないか。
たとえ突っ込む側であったとしても、無理矢理犯される事に対する屈辱は半端な物ではない。だが不思議な事に男同士という事に対する嫌悪感は無く、それどころかむしろこの倒錯的で背徳的な行為に対して自分でも引くほど昂っていくのが判って愕然となった。
今までどんなに美しいエスを抱いてもこれほどまでに興奮した事などなかったのに。それこそ、少尉任官後のガンルーム会で純潔を捨てた時よりも手に終えない衝動が腹の内で暴れまわって手綱を握るだけで精一杯になったほど。
頬を上気させてだらしなく半開きになった口から赤い舌がちろりと覗き、快楽に融けた灰青色の瞳が欲情を誘う。そんなの、どう言い繕っても快楽に飲み込まれているという事実を誤魔化しきれないだろうに。
だがあのプライドが高い仙が、自ら男に跨がって雌の快楽を得ているだと?あり得ない!
あまりの出来事に理解が追い付かなり、次第に平静さを失いつつある零士は必死になって仙を制することしかできなくなっていた。
「っあ!? 馬鹿、止めろ!!! おい、聞いてんのか!? やめっ……」
「ひっぐ…ごめんなさい……ごめんなさ………許してぇ……」
パタタッ、と頬に冷たい感触。一瞬で、混乱状態に陥っていた思考が停止した。
───泣いている?
懸命に腰を振って悦楽を追いかける仙の顔が、あの日の彼の泣き顔と重なる。
明け方の海をそのまま写し取ったかのような、綺麗な綺麗な暗い青色の瞳。そこから止めどなくあふれでる、透明な水滴。
仙は泣いていた。
彼と実質最後に出会ったあの雪の日のように。あの日のように大きな声こそ上げていなかったが、嗚咽を漏らしながら謝罪の言葉を繰り返すその姿は痛ましくて見ていられなかった。
思わず、抱き締めてやりたくなった。
だが、縛られた腕ではそれはできない。
「んっ!! ひぅ……っ」
「っあ!?」
ブルッと彼の体が震える。と、同時に搾り取られるかのような動きを不意打ちで食らった零士も、耐えきれずに仙のナカに精を放った。
艦の中での禁欲を強いられる生活で、溜まっていた事もあったのだろう。大して持つことも無く、なんの躊躇もなくたっぷり吐き出した。常人より量も多くて濃厚なそれを胎の奥で受け止めた仙が、ぎゅっと目を瞑って胎を熱い精で犯された感覚に耐える。
「ぁ………いぃ……」
彼はぷるっと小さく震えて、管の中に残った分まで搾り取ろうとするかのごとく軽く腰を揺すった。その感覚にさえ欲情しそうで焦りながら、零士息を整えようと荒く呼吸を繰り返す。
「ぐすっ……ぅう…………」
「お……おい…?」
ずるっ……と自分の男根を包んでいた肉の感触が離れていった。名残惜しげに絡み付く粘膜の感覚にまた魔羅を刺激されて勃たせそうになってしまったがどうにか堪え、心の中で念仏を唱えながら「鎮まってくれ」と祈る。その祈りが通じたのか、なんとか落ち着かせることには成功した。
仙はしばらくの間横でへたりこんでいたが、やがて軍衣を肩にひっかけたまま無言で立ち上がってそそくさとその場を去っていってしまう。
「ちょ……これ、外して行けって…」
呆然としたまま仙の姿が向こうに消えるところまでを見守って、ようやく我に帰った零士は慌てて両手首の拘束を解こうと奮闘する。冷静になってみれば簡単に外せる拘束だった。手首を捻れば簡単に抜け出せる。太い革帯でゆるく結んだだけであったのと、拘束されていたのが両の手首だけだったため思いのほか早く立ち上がることができた。だが、妙な胸騒ぎがする。
「……おい?」
赤くなってしまった手首をさすり、寛げられていた褌と軍袴の前を閉め直しながら……嫌な予感を覚えて恐る恐る仙が消えた方向に向かう。
どうやら、眠っていたらしい……寝る前に何をしていたっけ、と考えてなんとか思い出そうとろくすっぽ働かない脳を回転させる。
たしか……そうだ。かつての喧嘩相手だった男と思わぬ再会を果たし、相手から酒を飲まないかと誘われたんだった。
珍しく二日酔いのような頭痛を感じながら連鎖的に寝る前の出来事を思い出そうとする。山の中腹でポツンと寂しげに建つ一軒家が下宿先と聞いたときには驚いた。聞いたところによると、かつて尾坂家の所有だったのを管理する代わりに貸してもらって独り暮らしをしているそうだ。
それで肝心の酒の方はどうだったかと言うと、まあ馬鈴薯が原材料とは思えないほどスッキリした飲み心地と香りだったとだけ。仙の方も相当飲んでいたはずだが、零士の記憶があやふやになりだした頃になっても顔色ひとつ変えずに涼しげな表情のままで飲んでいた気がする。
酒には強い方だと自負していたつもりだが、素直に敗北を認めたくなるほど仙は酒に強かった。
じゃあ、自分は仙の下宿先で酔っ払って眠ってしまったのだろうか。そういえば途中からそのアクアビットとかいう北欧の芋焼酎に加えてウォッカやらウイスキーやら度数の高い酒も出てきた気がする。前後不覚になるほど飲んだ経験は無いが、恐らくそうなのだろう。
そう結論付けた零士は、迷惑をかけてしまったことを詫びようとして息を吐いた──その時だった。
「ッ……ごめ……ごめんなさっ……」
声が聞こえる。どこかで聞いたことがあるような……
いや、待てよこれは…仙の声じゃないか?
「っ!!?」
その考えに至った瞬間、酔いも眠気も一気に覚めた。カッと目を見開いて慌てて起き上がろうとしたが、しかしそれは叶わない。なぜなら自分の両の腕が頭上で縛られていたためだ。感触からして革帯だろうか。次いで暗闇の中、視界の確保をしようと正面に目を向け必死で目をこらす。
「瀧本ぉ………ッ、ごめん、なさ………あうっ………許し、てぇ……」
「なっ、おま!?」
ようやく視界が暗闇に慣れ、目に入ってきた光景に仰天してしまった。
月の明かりに照らされて、艶かしい肢体が淡く照らされる。
ほど良く色付いた白い肌に玉のような汗が滴り、丁寧に整えられていたはずの少し長い髪は汗で額に張り付き乱れていた。甘い吐息と共に漏らされた許しを乞う言葉にゾクゾクっと加虐心を刺激されて、否が応でも興奮するのが自分でも判る。
「ひッ、ぐぅ……おっきぃ…………」
血液が魔羅に集中したせいか、ただでさえナカをみっちり埋め尽くしていた杭が限界を超えてミチミチと肉壁を圧迫した。カリの部分がふっくらとしたしこりをコリっと刺激する感覚。たちまち悲鳴のような嬌声が上がった。
陰茎の裏側、前立腺を小突いてしまったのだろう。過敏になっていたそこを抉られて、きゅぅっと奥が締まった。亀頭をねっとり捏ねられるような刺激に射精しそうになったが歯を食い縛って耐える。その時腰を突き上げたがため、更に奥を刺激する事になった。ゴリゴリと肉鞘を蹂躙しながらつるんと滑って、バチンと肌を打つ音を立てながら最後まで納めきる。きゃん、という仔犬のような声が上がると同時に充血したひだが吐精を急かすように全方向から弱い部分を攻め立てた。
蚯蚓千匹、とんでもないギヤナイスだ。ともすればこれが本来排泄器官ということを忘れてしまいそうなほど。
───ここで奥にぶちまけてやったら、どれほど気持ちが良いのだろう。
誘惑が零士の理性を飛ばしかけた。好き放題に快楽を貪っているこの男の奥の奥まで精を擦り付けて、征服してやりたい。自分の膝元に屈服させて、そして──
「いや、いやいや! ちょっ、待てっ!!お前、まっ、ちょっと待て!!」
いや、そんな事よりどうして軍衣一枚羽織っただけの仙が、自分の上に跨がって腰を振っているのだ!?
一瞬でパニックになった零士は何がなんだか判らない内に絶叫していた。
しかも、自分の下腹部に感じる快感……これはもしかしなくても、仙が自分の魔羅を自らくわえこんで快感を得ているんじゃないか。
たとえ突っ込む側であったとしても、無理矢理犯される事に対する屈辱は半端な物ではない。だが不思議な事に男同士という事に対する嫌悪感は無く、それどころかむしろこの倒錯的で背徳的な行為に対して自分でも引くほど昂っていくのが判って愕然となった。
今までどんなに美しいエスを抱いてもこれほどまでに興奮した事などなかったのに。それこそ、少尉任官後のガンルーム会で純潔を捨てた時よりも手に終えない衝動が腹の内で暴れまわって手綱を握るだけで精一杯になったほど。
頬を上気させてだらしなく半開きになった口から赤い舌がちろりと覗き、快楽に融けた灰青色の瞳が欲情を誘う。そんなの、どう言い繕っても快楽に飲み込まれているという事実を誤魔化しきれないだろうに。
だがあのプライドが高い仙が、自ら男に跨がって雌の快楽を得ているだと?あり得ない!
あまりの出来事に理解が追い付かなり、次第に平静さを失いつつある零士は必死になって仙を制することしかできなくなっていた。
「っあ!? 馬鹿、止めろ!!! おい、聞いてんのか!? やめっ……」
「ひっぐ…ごめんなさい……ごめんなさ………許してぇ……」
パタタッ、と頬に冷たい感触。一瞬で、混乱状態に陥っていた思考が停止した。
───泣いている?
懸命に腰を振って悦楽を追いかける仙の顔が、あの日の彼の泣き顔と重なる。
明け方の海をそのまま写し取ったかのような、綺麗な綺麗な暗い青色の瞳。そこから止めどなくあふれでる、透明な水滴。
仙は泣いていた。
彼と実質最後に出会ったあの雪の日のように。あの日のように大きな声こそ上げていなかったが、嗚咽を漏らしながら謝罪の言葉を繰り返すその姿は痛ましくて見ていられなかった。
思わず、抱き締めてやりたくなった。
だが、縛られた腕ではそれはできない。
「んっ!! ひぅ……っ」
「っあ!?」
ブルッと彼の体が震える。と、同時に搾り取られるかのような動きを不意打ちで食らった零士も、耐えきれずに仙のナカに精を放った。
艦の中での禁欲を強いられる生活で、溜まっていた事もあったのだろう。大して持つことも無く、なんの躊躇もなくたっぷり吐き出した。常人より量も多くて濃厚なそれを胎の奥で受け止めた仙が、ぎゅっと目を瞑って胎を熱い精で犯された感覚に耐える。
「ぁ………いぃ……」
彼はぷるっと小さく震えて、管の中に残った分まで搾り取ろうとするかのごとく軽く腰を揺すった。その感覚にさえ欲情しそうで焦りながら、零士息を整えようと荒く呼吸を繰り返す。
「ぐすっ……ぅう…………」
「お……おい…?」
ずるっ……と自分の男根を包んでいた肉の感触が離れていった。名残惜しげに絡み付く粘膜の感覚にまた魔羅を刺激されて勃たせそうになってしまったがどうにか堪え、心の中で念仏を唱えながら「鎮まってくれ」と祈る。その祈りが通じたのか、なんとか落ち着かせることには成功した。
仙はしばらくの間横でへたりこんでいたが、やがて軍衣を肩にひっかけたまま無言で立ち上がってそそくさとその場を去っていってしまう。
「ちょ……これ、外して行けって…」
呆然としたまま仙の姿が向こうに消えるところまでを見守って、ようやく我に帰った零士は慌てて両手首の拘束を解こうと奮闘する。冷静になってみれば簡単に外せる拘束だった。手首を捻れば簡単に抜け出せる。太い革帯でゆるく結んだだけであったのと、拘束されていたのが両の手首だけだったため思いのほか早く立ち上がることができた。だが、妙な胸騒ぎがする。
「……おい?」
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