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第九週「鯉こく」
(41)高度な幻覚は時に現実をも上回る
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「──おれに同情してくる奴は山ほどいたけどな。おれの背中どついて発破をかけてきたんは、後にも先にもあんただけやったで。赤岡さん」
あの時からどれくらいの月日が流れたのだろう。昭和六年三月、重巡洋艦「古鷹」の一室にて。睦郎は机を挟んだ向こう側で何かの書類の束を読み込んでいる赤岡に向かって呼び掛けた。
「……突然、何を言い出すのですか」
「いやぁ、急に昔のこと思い出したから」
と思いきや、こんなことを言い出すではないか。いつも急に話題を変えてくる睦郎だが、今日は本当にどうしたのだろう。
「過去の話はもうしないと言っていませんでしたか」
「うん、せやったな。おれとしたことが、ついうっかり」
ケラケラと笑い飛ばすが、禁じ手であったはずの過去の話を出したことに変わりはない。
咎めるように赤岡が書類からスッと顔を上げ、睦郎の方をじっと見る。途端に睦郎は慌てたように表情を引っ込めて真面目そうな顔を作った。
「なぜ急にそのような話になったのです」
「昨日の軍事郵便で弟から手紙が来たから」
「弟、」
「下のド阿保。千晴の方な」
「ああ、三男でしたか」
耳で聞く分だと女子と間違うかもしれないが、睦郎が言う千晴というのは彼の弟の方である鷹山家の三男のことだ。そう、現在は東京の歩兵第三連隊で連隊長附き副官をやっている、あの鷹山千晴歩兵大尉のこと。
親と兄の後継を巡って行われた静かなる修羅場。それを六歳で見てしまったトラウマからか、とにかく家を出ることを目標にしていた睦郎の下の弟である千晴。
睦郎と同じかそれ以上の面倒くさがりで怠惰である彼だが、言ったことを実行する能力だけは高かった。兄である次男にシレッと後継の座を押し付けていく一方で自分は幼年学校に入ってお鉢が回ってくるのを防ぐという、一見単純だがその実難易度がべらぼうに高い作戦を決行して見事に成功させていたのだから当たり前だろう。
陸軍幼年学校というものは、言うならば陸軍の付属中学校。中学の同期の中で一番か二番の成績の者でさえ、その中学が田舎の中学なら幼年学校の中では最下位の成績になることなどざらにある。それくらいの秀才や天才が、全国から集まってきていたのが幼年学校なのだ。
睦郎の弟である千晴はその幼年学校の中でも、名古屋に並んでバンカラが多くて荒っぽいと言われる大阪幼年学校に通っていた者である。
「前々から思っていたのですが、アナタが散々阿保と扱き下ろす弟さん。なぜ、あの大阪幼年学校を何事もなく卒業できたのですか」
「いやん。あいつ、争い事を察知して逃げる能力も高いねん。まるで鰻みたいに人間関係の間をすり抜けていきよるから怒るに怒れん。要領がエエさかいに処世術上手すぎんねん」
睦郎としてはその処世術とやらが羨ましいようで、何度も解せないような表情をしている。その弟が持つ、中々掴ませてくれない鰻のような処世術を少しでも身に付けていれば、家との折り合いもこれほど悪くなってはいなかったのではと。
「ところで、その弟さんとやらが手紙を送ってきた理由を聞いていませんが」
「赤岡さんが本題から反らしてんやんか。というか、いくら赤岡さんでも、個人的な手紙のやり取りの内容を話すなんて……」
「私の思い違いでしたかね。アナタ、非常に聞いてほしそうだったのですが」
「…………」
黙った。図星のようだ。
そうだ、話したくないのなら最初から手紙の話など出さずにうじゃむじゃにお茶を濁して会話を終了させれば良かっただけ。なのに睦郎はわざわざ弟からの手紙の件を口にした。
話をしたくないのなら、睦郎は口にしたりしない。それが彼だからだ。
「……うん、まあ。ちょっとな。赤岡さん覚えてますやろか」
「何を」
「前にいっぺん、千晴に広幼に通っとった同期がおったん話したこと」
「そういえば、そんな話もしましたね」
それは去年の年末の話。広島産の牡蠣の話からなぜか飛んで、睦郎の弟である千晴の同期の話をしたのを覚えてるだろうかと問いかける。
「広島幼年学校から陸士に来て、そして広島の工兵第五連隊が原隊やったその同期のことな」
(ん……? 広島……)
とここで、赤岡はふと何かに気付いた。なぜだろう、この経歴をどこかで見たことがあるような気がするのは。
(広島……工兵……)
最近、この単語の組合せが合致する人間を話題に上げていた気がするのだ。気のせいではない、断じて。確実にこの口から誰かに話した記憶がある。
広島で、工兵。陸軍全体で工兵将校の数などそれほどいないのだから、すぐに言い当てられそうなものを。
(……ん?)
名前が判らない謎の工兵。手紙。広島。工兵第五連隊。
カチカチと脳内で何かの針が動いてキリキリと歯車を回していっている音がした。
ちなみにここでは工兵第五「連隊」になっているが、史実においての工兵第五連隊が連隊に昇格したのは昭和十一年のことだ。それまでは工兵第五「大隊」だったので、昭和六年現在の工兵第五連隊は工兵第五大隊とするのが正しいのだろう。
しかしここではあえて工兵第五「連隊」とする。理由はお察し願いたい。大人の事情というやつである。閑話休題。
(あっ)
その瞬間、赤岡の中で全てが繋がった。
工兵は陸軍の中でも、決して数が多いわけではない。陸士を卒業した将校全体でも、工兵はわずか七パーセントしか存在しなかった。そのためか彼らは「工兵一家」と呼ばれ、工兵同士での結束は非常に固かったと言われている。
そんな数の少ない工兵の、それも広島の第五連隊が原隊だった、睦郎の弟と同期である広幼出身将校。
いた、該当者が一名。それも赤岡の知っている存在が。
(まさかとは思うが……まさか本当に?)
その時、赤岡の頭の中に浮かんだのはある男の名前。
糞気にくわないと睦郎の中でただいま絶賛酷評中の、灰色の瞳の陸軍将校こと尾坂仙。
陸軍省次長の養子で九条院侯爵が溺愛していたとかいう、その他にも三流雑誌の小説欄にさえ出てこないような盛りに盛りまくった経歴の持ち主──そして赤岡の帝大の後輩である九条院家の次男坊が心配していた件の陸軍将校だった。
(いや、そんなまさか)
世間は予想以上に狭かった。赤岡の帝大の後輩の弟が、睦郎の弟の同期だったとは。いやはや運命とはよく判らないものである。
「それでな……赤岡さん?」
「……聞いていますよ」
気にせず続きをと促したら、睦郎は不思議そうに首を傾げながらも口を開く。
「前に手紙で聞いてみてん。その同期ってどんなヤツやって。せめてハンモックナンバーが判ったらある程度調べられるんやけど」
「……」
ハンモックナンバーとは、海軍で卒業時席順を示す単語である。
陸軍では「陸軍大学を出ているかどうか」が重要視されていたが、海軍ではこのハンモックナンバーが重要視されていた。
たとえ海大を出ていようとも、食事の時の席順に変化は無い。あくまでハンモックナンバーのみに従って厳正に決められる。
席を決めて食事を用意する側としては楽だが、それは裏を返せば「一度でも順位が確定すれば二度と出世は望めない」という厳しい現実でもあった。
海軍士官はハンモックナンバーが全てだ。しかし、たとえハンモックナンバーが下でも「古鷹」艦長のように出世するやつは出世するのだが。
「あいつ、まーだその同期のこと完全に伏せとるわ」
「やっぱり高度な幻覚だったのでは? その弟さんの同期とやら」
ちょっとした期待を込めて、そっと呟いてみる。が、無情にも睦郎は首を横に振った。どうやらその弟の同期とやらは、幻覚でも何でもなく実在する人物らしい。
(やはりあの坊っちゃんか……)
となると、最有力候補になるのはあの灰色の瞳の陸軍将校。この世の真理に一人だけ気付いてしまったような気分になって、赤岡は複雑な思いを飲み込んだまま閉口するしかなかった。
あの時からどれくらいの月日が流れたのだろう。昭和六年三月、重巡洋艦「古鷹」の一室にて。睦郎は机を挟んだ向こう側で何かの書類の束を読み込んでいる赤岡に向かって呼び掛けた。
「……突然、何を言い出すのですか」
「いやぁ、急に昔のこと思い出したから」
と思いきや、こんなことを言い出すではないか。いつも急に話題を変えてくる睦郎だが、今日は本当にどうしたのだろう。
「過去の話はもうしないと言っていませんでしたか」
「うん、せやったな。おれとしたことが、ついうっかり」
ケラケラと笑い飛ばすが、禁じ手であったはずの過去の話を出したことに変わりはない。
咎めるように赤岡が書類からスッと顔を上げ、睦郎の方をじっと見る。途端に睦郎は慌てたように表情を引っ込めて真面目そうな顔を作った。
「なぜ急にそのような話になったのです」
「昨日の軍事郵便で弟から手紙が来たから」
「弟、」
「下のド阿保。千晴の方な」
「ああ、三男でしたか」
耳で聞く分だと女子と間違うかもしれないが、睦郎が言う千晴というのは彼の弟の方である鷹山家の三男のことだ。そう、現在は東京の歩兵第三連隊で連隊長附き副官をやっている、あの鷹山千晴歩兵大尉のこと。
親と兄の後継を巡って行われた静かなる修羅場。それを六歳で見てしまったトラウマからか、とにかく家を出ることを目標にしていた睦郎の下の弟である千晴。
睦郎と同じかそれ以上の面倒くさがりで怠惰である彼だが、言ったことを実行する能力だけは高かった。兄である次男にシレッと後継の座を押し付けていく一方で自分は幼年学校に入ってお鉢が回ってくるのを防ぐという、一見単純だがその実難易度がべらぼうに高い作戦を決行して見事に成功させていたのだから当たり前だろう。
陸軍幼年学校というものは、言うならば陸軍の付属中学校。中学の同期の中で一番か二番の成績の者でさえ、その中学が田舎の中学なら幼年学校の中では最下位の成績になることなどざらにある。それくらいの秀才や天才が、全国から集まってきていたのが幼年学校なのだ。
睦郎の弟である千晴はその幼年学校の中でも、名古屋に並んでバンカラが多くて荒っぽいと言われる大阪幼年学校に通っていた者である。
「前々から思っていたのですが、アナタが散々阿保と扱き下ろす弟さん。なぜ、あの大阪幼年学校を何事もなく卒業できたのですか」
「いやん。あいつ、争い事を察知して逃げる能力も高いねん。まるで鰻みたいに人間関係の間をすり抜けていきよるから怒るに怒れん。要領がエエさかいに処世術上手すぎんねん」
睦郎としてはその処世術とやらが羨ましいようで、何度も解せないような表情をしている。その弟が持つ、中々掴ませてくれない鰻のような処世術を少しでも身に付けていれば、家との折り合いもこれほど悪くなってはいなかったのではと。
「ところで、その弟さんとやらが手紙を送ってきた理由を聞いていませんが」
「赤岡さんが本題から反らしてんやんか。というか、いくら赤岡さんでも、個人的な手紙のやり取りの内容を話すなんて……」
「私の思い違いでしたかね。アナタ、非常に聞いてほしそうだったのですが」
「…………」
黙った。図星のようだ。
そうだ、話したくないのなら最初から手紙の話など出さずにうじゃむじゃにお茶を濁して会話を終了させれば良かっただけ。なのに睦郎はわざわざ弟からの手紙の件を口にした。
話をしたくないのなら、睦郎は口にしたりしない。それが彼だからだ。
「……うん、まあ。ちょっとな。赤岡さん覚えてますやろか」
「何を」
「前にいっぺん、千晴に広幼に通っとった同期がおったん話したこと」
「そういえば、そんな話もしましたね」
それは去年の年末の話。広島産の牡蠣の話からなぜか飛んで、睦郎の弟である千晴の同期の話をしたのを覚えてるだろうかと問いかける。
「広島幼年学校から陸士に来て、そして広島の工兵第五連隊が原隊やったその同期のことな」
(ん……? 広島……)
とここで、赤岡はふと何かに気付いた。なぜだろう、この経歴をどこかで見たことがあるような気がするのは。
(広島……工兵……)
最近、この単語の組合せが合致する人間を話題に上げていた気がするのだ。気のせいではない、断じて。確実にこの口から誰かに話した記憶がある。
広島で、工兵。陸軍全体で工兵将校の数などそれほどいないのだから、すぐに言い当てられそうなものを。
(……ん?)
名前が判らない謎の工兵。手紙。広島。工兵第五連隊。
カチカチと脳内で何かの針が動いてキリキリと歯車を回していっている音がした。
ちなみにここでは工兵第五「連隊」になっているが、史実においての工兵第五連隊が連隊に昇格したのは昭和十一年のことだ。それまでは工兵第五「大隊」だったので、昭和六年現在の工兵第五連隊は工兵第五大隊とするのが正しいのだろう。
しかしここではあえて工兵第五「連隊」とする。理由はお察し願いたい。大人の事情というやつである。閑話休題。
(あっ)
その瞬間、赤岡の中で全てが繋がった。
工兵は陸軍の中でも、決して数が多いわけではない。陸士を卒業した将校全体でも、工兵はわずか七パーセントしか存在しなかった。そのためか彼らは「工兵一家」と呼ばれ、工兵同士での結束は非常に固かったと言われている。
そんな数の少ない工兵の、それも広島の第五連隊が原隊だった、睦郎の弟と同期である広幼出身将校。
いた、該当者が一名。それも赤岡の知っている存在が。
(まさかとは思うが……まさか本当に?)
その時、赤岡の頭の中に浮かんだのはある男の名前。
糞気にくわないと睦郎の中でただいま絶賛酷評中の、灰色の瞳の陸軍将校こと尾坂仙。
陸軍省次長の養子で九条院侯爵が溺愛していたとかいう、その他にも三流雑誌の小説欄にさえ出てこないような盛りに盛りまくった経歴の持ち主──そして赤岡の帝大の後輩である九条院家の次男坊が心配していた件の陸軍将校だった。
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陸軍では「陸軍大学を出ているかどうか」が重要視されていたが、海軍ではこのハンモックナンバーが重要視されていた。
たとえ海大を出ていようとも、食事の時の席順に変化は無い。あくまでハンモックナンバーのみに従って厳正に決められる。
席を決めて食事を用意する側としては楽だが、それは裏を返せば「一度でも順位が確定すれば二度と出世は望めない」という厳しい現実でもあった。
海軍士官はハンモックナンバーが全てだ。しかし、たとえハンモックナンバーが下でも「古鷹」艦長のように出世するやつは出世するのだが。
「あいつ、まーだその同期のこと完全に伏せとるわ」
「やっぱり高度な幻覚だったのでは? その弟さんの同期とやら」
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