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第八週「オムレツ」
(35)同じ関西でも微妙に言葉は違う
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「聞こえませんでしたか。あの陸サンの美人は、九条院家のご当主様が溺愛なされていた三男坊。侯爵所縁の方々からは『マーキス・クジョウインの寵児』とか呼ばれている、何かと有名な人物なのですよ」
赤岡の根城である医務室は存外狭いが、中尉の動揺は外に漏れなかったようだ。
悲鳴を上げかかった中尉の好奇心にトドメの冷や水を浴びせてやるべく、赤岡はすかさず畳み掛けるように付け足す。
「ですから、あの陸サンの坊っちゃんには今後一切関わらない方が身のためだと言っているのです」
「え、え、あの? く、九条院家って……あの?」
「そうですよ。何かと有名なのですがね。九条院侯爵が外で作った三男は」
九条院侯爵の三男。
その一言で全てを察した中尉は、サッと顔を青ざめさせて自身の口を塞ぐ。おそらく、無用心なことが口を吐いて出ることを防止するためでもあったのだろう。
九条院家といえば、旧清華の流れを汲んだ公家華族の侯爵家。最近とみに乱造されているにわか華族とは一線を画する、まさに名門中の名門の家系だ。
現在の当主は外交官として英国大使や外務大臣を歴任する傍ら、貿易で莫大な財産を築いた大物だったはず。その当主は昨年の末に引退を表明したが、それでもその影響力は計り知れない。
そんな人物を実父に持っていて、しかも今の養父が陸軍省次長。
瀧本がとんでもない奴と喧嘩していたことを悟った中尉は、蒼白を通り越えて真っ白になった最悪の顔色で震える声を絞り出す。
「そ……そんなことが、侯爵のお耳に入ったりなどすれば……」
「ま、当然のことながら瀧本大尉は無事では済まされぬでしょうね」
あっけらかんと言い放った軍医長を前に、上官だということも忘れて中尉は叫びそうになった。
軽い調子でさらっと言ってくれているが、それがどれだけ重大な不祥事なのか判っているのだろうか。判っていたら、止めて然るべきはずだ。
「と、止めないのでありますか!?」
「あの陸サンの坊っちゃんも、瀧本大尉も中学生じゃあるまいし。もう良い歳こいた大人ですから、お互いの問題はお互いで解決させるでしょう。外野が首を突っ込んで騒ぎを大きくしたら、その分だけ泥沼になるだけですよ」
中尉のすっとんきょうな叫び声にも動じず、赤岡は淡々と答えるだけ。目を剥いてひっくり返りそうになっている中尉を尻目に、赤岡はまたケロリとした表情を崩さずに手元の手紙に目を通す。
「私だって、嫌ですよ。第三者が干渉したせいで泥沼になって事態が長引くのは」
「で、ですが軍医長!」
「比較的速やかに彼方にはお引き取り願いたいのは私も同じですよ。なにせ、こんな下らないことが外部に漏れたら私も九条院家の次男坊に怒られるので」
「えっ?」
再び赤岡の口から飛び出てきた単語に出鼻を挫かれ、中尉はポカンと口を開けて固まった。
九条院家の次男坊、がなぜ赤岡に対して怒るのだろう。赤岡の生家は新潟の医師の家系で、とてもじゃないが公家華族の侯爵家の次男坊と面識があるとは思えないのだが。
中尉の言い分も最もだろう。彼が困惑した理由に気付いた赤岡は、やんわりと説明してやりながら目で文字を追いかける。
そう、その九条院家の次男坊から届いた手紙を読みながら。
「あの坊っちゃんの兄上とは面識があるのでね。ほら、九条院家の次男のことですよ。彼とは同じ帝大の医学部を卒業しているので、少々ばかりか交流があっただけです」
少々どころか手紙を交わすくらいの深い交流があったのだが、その辺りは綺麗に伏せておいた。後々の面倒事を避けるためである。
九条院家に息子は三人いるが、父親と同じ外交官の道に行ったのは長男だけ。三男はあの調子だが、次男は帝大医学部を受験して医者の道を歩んでいた。なので、赤岡と九条院家の次男坊は、同じ帝大を卒業した先輩と後輩の仲なのだ。
「なにせ狭い医療業界なのでね。研究分野が似たり寄ったりでしたら、顔を会わせる機会も多くなるというだけ。次男坊は軍人になった弟が心配で、何か情報が得られないかと軍医をやっている私に声をかけてきたのがきっかけで話すようになっただけです」
「え……ですが、あの坊は……」
「最初に私は海軍の軍医なので陸軍のことなど知らないと言ったのですがねぇ。結局、そのままズルズルと関係は続いています」
その次男から送られてきた手紙の内容は、昨年の年末に会った弟を酷く傷付けてしまったという主旨の話であった。もしも会うことがあれば、自分の名前は決して出さずに気を使ってやってほしいとも。
「そういうわけですから、下手に刺激せずに見守るだけに留めなさい」
「はい……見ざる、言わざる、聞かざる…………ですね」
声に出し、肝に命じる。中尉はいまだに落ち着かない心臓の鼓動を落ち着けようと、今一度大きく深呼吸を行った。
ところで九条院家の次男坊は、三男と何かあったのだろうか。元から三男は家族と折り合いが悪かったのに加えて、父親からの過干渉に辟易して実家から出奔したらしいが。なお、赤岡は家族の問題に首を突っ込むつもりが微塵も無いので、それ以上の言及はしないので放置する。
(おっと、これだけは言わなくては)
すごすごと帰って行きそうな空気を出し始めた中尉の姿を見て、ふと思い付いたことがあった。
この話、つまり九条院家の三男にまつわるあれやこれを耳に入れては拙い人物が赤岡とこの中尉のすぐ近くにいたことに気付く。あれは、まずいと。
「あと、言い忘れていましたが」
「ま、まだ何か……」
「主計長はあの手合いの人種を蛇蝎のごとく毛嫌いするので、間違っても坊っちゃんの話は出さないように気を付けなさい」
「は、」
まさかそこに話を持っていかれるとは思っていなかったのだろう。中尉は先程よりかはマシになった表情できょとんと首を傾げる。
主計長が、あの手合いの人間──つまり例の陸サンとこの美人のような人物を毛嫌いするとは、なぜだろう。
「は、はあ……主計長はお嫌いなのでありますか? なんでまた……」
「そんなもの、決まっているでしょう。ですが、主計長が嫌う奴がどんな人種かあえて口にするとすれば」
そこで一旦切って域を吸い込む。
なるべく小さな声で、だがしっかり聞き取れるように滑舌よく。
「恵まれた環境に産まれて来たのにそれを簡単に放り投げて、下らない理由でわざわざ実家より格下の家の養子に入る奴」
妙な沈黙が流れた。
一秒だっただろうか、それとも一分だっただろうか。固まっていた中尉が再び口を開くまでには、それなりの時間がかかったと思う。
「あの……」
「なにか」
「もしかして、なのですが。それは主計長のご実家に関係していることですか?」
若い中尉なりに考えて、それで出てきた答えを聞き届けた赤岡はスッと目を細めて解答になる言葉を探し始める。
だが、まだまだケツの青い若造。中尉は赤岡の様子に気付かないまま、じっと話を続けた。
「オレ、実家が大津なんで判るんですよ。主計長がちょっと目上の親しい相手に対して、下手に出ているときに使っているあの言葉。そりゃあ東の人から見たら京都の言葉に聴こえなくもないですが、あれはむしろ他府県の人が「京都人の言葉」を真似して出すときに使うそれっぽいエセ京都弁ですよ」
「……」
大津。それはまたマズイ場所だ、と赤岡は内心で冷や汗をかいた。
近畿地方の水源を押さえ、京都を目の先に据える滋賀県の行政が置かれている都市。問題はそこだ。大津は、京都の目と鼻の先にあるようなもの。この中尉が、そんな場所の出身だったことがマズイのだ。
これ以上突っ込まれると都合が悪くなる。と、察した赤岡はなんとかこの話題を自然に終わらせられないか探りを入れ始めた。
「……彼は大阪の出身ですよ」
「それです。前々からずっと気になっていたのですが、主計長はたぶん生粋の大阪出身では無いと思いますよ」
きゅう、と心臓を鷲掴みにされるような感覚。まさか、気付かれていたのだろうか。
睦郎が、この先一生隠しておきたい……秘密のことが。
「アナタの探偵ごっこに付き合うつもりはありませんが」
それでもなんとか平常心を保ちながら、赤岡は必死で言葉を選び続ける。当然、内心の動揺を決して悟られぬよう、ポーカーフェイスを顔面に貼り付けながら。
「参考までに聞いておきましょう。アナタ、なぜ彼が生粋の大阪人ではないと思ったので?」
「微妙に違和感があるんですよ、主計長のお国言葉。大阪弁にしては」
「ほう」
違和感とは何だろう。赤岡は新潟の産であるため、関西の方言のついてはよく知らない。正直に言えば、どれもみんな同じ言葉に聞こえる。
この中尉は、関西の中でも特に言葉の往来が激しい地域の出身なので、聞き分けがついたのだろうか。
「主計長、もしかしたら小さい頃は大阪や京都とは違う場所に住んでいたのでしょうか。それで、その後に引っ越しでもしたから、元いた地域で覚えた言葉と大阪の言葉が混ざってあんな違和感のあるお国言葉に……」
中尉がそこまで言ったその時、ちょうど医務室の扉をコンコンとノックする音が響いた。
赤岡の根城である医務室は存外狭いが、中尉の動揺は外に漏れなかったようだ。
悲鳴を上げかかった中尉の好奇心にトドメの冷や水を浴びせてやるべく、赤岡はすかさず畳み掛けるように付け足す。
「ですから、あの陸サンの坊っちゃんには今後一切関わらない方が身のためだと言っているのです」
「え、え、あの? く、九条院家って……あの?」
「そうですよ。何かと有名なのですがね。九条院侯爵が外で作った三男は」
九条院侯爵の三男。
その一言で全てを察した中尉は、サッと顔を青ざめさせて自身の口を塞ぐ。おそらく、無用心なことが口を吐いて出ることを防止するためでもあったのだろう。
九条院家といえば、旧清華の流れを汲んだ公家華族の侯爵家。最近とみに乱造されているにわか華族とは一線を画する、まさに名門中の名門の家系だ。
現在の当主は外交官として英国大使や外務大臣を歴任する傍ら、貿易で莫大な財産を築いた大物だったはず。その当主は昨年の末に引退を表明したが、それでもその影響力は計り知れない。
そんな人物を実父に持っていて、しかも今の養父が陸軍省次長。
瀧本がとんでもない奴と喧嘩していたことを悟った中尉は、蒼白を通り越えて真っ白になった最悪の顔色で震える声を絞り出す。
「そ……そんなことが、侯爵のお耳に入ったりなどすれば……」
「ま、当然のことながら瀧本大尉は無事では済まされぬでしょうね」
あっけらかんと言い放った軍医長を前に、上官だということも忘れて中尉は叫びそうになった。
軽い調子でさらっと言ってくれているが、それがどれだけ重大な不祥事なのか判っているのだろうか。判っていたら、止めて然るべきはずだ。
「と、止めないのでありますか!?」
「あの陸サンの坊っちゃんも、瀧本大尉も中学生じゃあるまいし。もう良い歳こいた大人ですから、お互いの問題はお互いで解決させるでしょう。外野が首を突っ込んで騒ぎを大きくしたら、その分だけ泥沼になるだけですよ」
中尉のすっとんきょうな叫び声にも動じず、赤岡は淡々と答えるだけ。目を剥いてひっくり返りそうになっている中尉を尻目に、赤岡はまたケロリとした表情を崩さずに手元の手紙に目を通す。
「私だって、嫌ですよ。第三者が干渉したせいで泥沼になって事態が長引くのは」
「で、ですが軍医長!」
「比較的速やかに彼方にはお引き取り願いたいのは私も同じですよ。なにせ、こんな下らないことが外部に漏れたら私も九条院家の次男坊に怒られるので」
「えっ?」
再び赤岡の口から飛び出てきた単語に出鼻を挫かれ、中尉はポカンと口を開けて固まった。
九条院家の次男坊、がなぜ赤岡に対して怒るのだろう。赤岡の生家は新潟の医師の家系で、とてもじゃないが公家華族の侯爵家の次男坊と面識があるとは思えないのだが。
中尉の言い分も最もだろう。彼が困惑した理由に気付いた赤岡は、やんわりと説明してやりながら目で文字を追いかける。
そう、その九条院家の次男坊から届いた手紙を読みながら。
「あの坊っちゃんの兄上とは面識があるのでね。ほら、九条院家の次男のことですよ。彼とは同じ帝大の医学部を卒業しているので、少々ばかりか交流があっただけです」
少々どころか手紙を交わすくらいの深い交流があったのだが、その辺りは綺麗に伏せておいた。後々の面倒事を避けるためである。
九条院家に息子は三人いるが、父親と同じ外交官の道に行ったのは長男だけ。三男はあの調子だが、次男は帝大医学部を受験して医者の道を歩んでいた。なので、赤岡と九条院家の次男坊は、同じ帝大を卒業した先輩と後輩の仲なのだ。
「なにせ狭い医療業界なのでね。研究分野が似たり寄ったりでしたら、顔を会わせる機会も多くなるというだけ。次男坊は軍人になった弟が心配で、何か情報が得られないかと軍医をやっている私に声をかけてきたのがきっかけで話すようになっただけです」
「え……ですが、あの坊は……」
「最初に私は海軍の軍医なので陸軍のことなど知らないと言ったのですがねぇ。結局、そのままズルズルと関係は続いています」
その次男から送られてきた手紙の内容は、昨年の年末に会った弟を酷く傷付けてしまったという主旨の話であった。もしも会うことがあれば、自分の名前は決して出さずに気を使ってやってほしいとも。
「そういうわけですから、下手に刺激せずに見守るだけに留めなさい」
「はい……見ざる、言わざる、聞かざる…………ですね」
声に出し、肝に命じる。中尉はいまだに落ち着かない心臓の鼓動を落ち着けようと、今一度大きく深呼吸を行った。
ところで九条院家の次男坊は、三男と何かあったのだろうか。元から三男は家族と折り合いが悪かったのに加えて、父親からの過干渉に辟易して実家から出奔したらしいが。なお、赤岡は家族の問題に首を突っ込むつもりが微塵も無いので、それ以上の言及はしないので放置する。
(おっと、これだけは言わなくては)
すごすごと帰って行きそうな空気を出し始めた中尉の姿を見て、ふと思い付いたことがあった。
この話、つまり九条院家の三男にまつわるあれやこれを耳に入れては拙い人物が赤岡とこの中尉のすぐ近くにいたことに気付く。あれは、まずいと。
「あと、言い忘れていましたが」
「ま、まだ何か……」
「主計長はあの手合いの人種を蛇蝎のごとく毛嫌いするので、間違っても坊っちゃんの話は出さないように気を付けなさい」
「は、」
まさかそこに話を持っていかれるとは思っていなかったのだろう。中尉は先程よりかはマシになった表情できょとんと首を傾げる。
主計長が、あの手合いの人間──つまり例の陸サンとこの美人のような人物を毛嫌いするとは、なぜだろう。
「は、はあ……主計長はお嫌いなのでありますか? なんでまた……」
「そんなもの、決まっているでしょう。ですが、主計長が嫌う奴がどんな人種かあえて口にするとすれば」
そこで一旦切って域を吸い込む。
なるべく小さな声で、だがしっかり聞き取れるように滑舌よく。
「恵まれた環境に産まれて来たのにそれを簡単に放り投げて、下らない理由でわざわざ実家より格下の家の養子に入る奴」
妙な沈黙が流れた。
一秒だっただろうか、それとも一分だっただろうか。固まっていた中尉が再び口を開くまでには、それなりの時間がかかったと思う。
「あの……」
「なにか」
「もしかして、なのですが。それは主計長のご実家に関係していることですか?」
若い中尉なりに考えて、それで出てきた答えを聞き届けた赤岡はスッと目を細めて解答になる言葉を探し始める。
だが、まだまだケツの青い若造。中尉は赤岡の様子に気付かないまま、じっと話を続けた。
「オレ、実家が大津なんで判るんですよ。主計長がちょっと目上の親しい相手に対して、下手に出ているときに使っているあの言葉。そりゃあ東の人から見たら京都の言葉に聴こえなくもないですが、あれはむしろ他府県の人が「京都人の言葉」を真似して出すときに使うそれっぽいエセ京都弁ですよ」
「……」
大津。それはまたマズイ場所だ、と赤岡は内心で冷や汗をかいた。
近畿地方の水源を押さえ、京都を目の先に据える滋賀県の行政が置かれている都市。問題はそこだ。大津は、京都の目と鼻の先にあるようなもの。この中尉が、そんな場所の出身だったことがマズイのだ。
これ以上突っ込まれると都合が悪くなる。と、察した赤岡はなんとかこの話題を自然に終わらせられないか探りを入れ始めた。
「……彼は大阪の出身ですよ」
「それです。前々からずっと気になっていたのですが、主計長はたぶん生粋の大阪出身では無いと思いますよ」
きゅう、と心臓を鷲掴みにされるような感覚。まさか、気付かれていたのだろうか。
睦郎が、この先一生隠しておきたい……秘密のことが。
「アナタの探偵ごっこに付き合うつもりはありませんが」
それでもなんとか平常心を保ちながら、赤岡は必死で言葉を選び続ける。当然、内心の動揺を決して悟られぬよう、ポーカーフェイスを顔面に貼り付けながら。
「参考までに聞いておきましょう。アナタ、なぜ彼が生粋の大阪人ではないと思ったので?」
「微妙に違和感があるんですよ、主計長のお国言葉。大阪弁にしては」
「ほう」
違和感とは何だろう。赤岡は新潟の産であるため、関西の方言のついてはよく知らない。正直に言えば、どれもみんな同じ言葉に聞こえる。
この中尉は、関西の中でも特に言葉の往来が激しい地域の出身なので、聞き分けがついたのだろうか。
「主計長、もしかしたら小さい頃は大阪や京都とは違う場所に住んでいたのでしょうか。それで、その後に引っ越しでもしたから、元いた地域で覚えた言葉と大阪の言葉が混ざってあんな違和感のあるお国言葉に……」
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