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第四週「味噌汁」
(19)当時のじゃがいもの値段は一キロ約六銭くらい
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日本人なら、それこそ産まれてからずっと海外で暮らしていたとでも言わない限り、味噌汁なら誰もが毎朝口にしただろう。
主計兵が海兵団教育中の教科書として使用する『海軍主計兵調理術教科書』には、具は豆腐に油揚げと昆布またはワカメを使用した場合の味噌汁の調理法が書かれていた。なので、おそらくそれが海軍の味噌汁の基本形だったと想像できる。
当然、同教科書にはそれ以外の食材を具にした場合の、調理上での注意事項なども書かれていた。なので馬鈴薯を具に入れても、ここの烹炊員なら問題なく仕上げてくるだろう。なにせ「古鷹」の烹炊員は腕が良い。以前の鯖カレーの例にもあるように、変化球の献立が来てもむしろ燃え上がってくれるだろう。
「……馬鈴薯を、味噌汁に…………?」
「えっと、赤岡さん?」
しかし、どうした。赤岡は味噌汁に馬鈴薯など想像ができなかったのか、しきりに首を傾げているではないか。馬鈴薯など、大抵の料理に合うのだから味噌汁にだって入れたことくらいあるだろうに。
赤岡のその反応、もしや馬鈴薯の味噌汁は食べたことがないのか。いいや、もしくは嫌いだったのだろうか。気を使って鶴田がそっとフォローを入れる。
「あー……もしかしてなんだが、赤岡さんは嫌いなのかい? 馬鈴薯の味噌汁」
「……いえ、別に」
嫌いなわけでも無いようだ。なら、本当に食べたことが無いのだろうか。その、意外なものを見るような顔が謎を呼ぶ。
「……滋養、という面から見るならまあアリなのでは無いでしょうか」
「あら、そう?」
「私は馬鈴薯の味噌汁など食べたことが無いので、味については保証しかねませんが」
「って、食ったこと無いんかい」
鶴田が突っ込んだ。まさか本当に、馬鈴薯の味噌汁など食べたことも無かっただなんて。
馬鈴薯と言えば、一キロ十銭もいかない庶民の強い味方。そのくせ、野菜ではなく主食に分類されていることもあってかとにかく腹に溜まる。
おまけに癖の無い味は、大体の料理に合う。なのでついつい使ってしまうのだが、あまりにも続くと不満が出てくるので要注意。
「旨いやん……旨いねんで……馬鈴薯の味噌汁……」
眉をハの字にし、いじけたように両手の人差し指の先をツンツンとつつく。睦郎が心なしか、悲しそうな声を出した。
馬鈴薯を味噌汁に入れると、なぜかワカメがトロトロになる。気のせいなのか、それとも煮すぎているだけかもしれないが。
それはそれで旨いのだからしょうがない。味噌の風味と出汁の旨味を吸って舌の上で融けていくワカメもそうだが、馬鈴薯自体も柔らかくて歯でなくとも噛めるよう。
普通に調理した馬鈴薯はどうしても水分が足らずに口の中がパサつき、それが食べにくさの原因となってしまっていた。しかし、短冊切りにした上で出汁と一緒に煮込んだことによって馬鈴薯の欠点を打ち消して、なおかつトロトロほくほくの食感と濃縮された出汁が口の中で染みてくる。味噌汁に入れた馬鈴薯が旨いのは当然だろう。先にも述べた通り、馬鈴薯は癖の無い食材であるため、味噌汁の出汁を邪魔することもない。
「別に私が食べたことが無くとも、アナタや烹炊員が食べたことがあるのなら問題など無いでしょう」
「せやね」
料理の質とは、作る者が何を食べていたかで左右されるもの。食材の産地がどうとか、調理器具がどうとか。確かにそれらも十分重要なこと。だが、結局最後は、調理した者が食べた中で、最も旨い物が再現されて出てくるのだ。
旨い料理を食べたことが無い者に、旨い料理は作れない。それが睦郎の持論だった。
「じゃあ、馬鈴薯の味噌汁は木曜日の朝に持っていきますわ」
鉛筆で該当する箇所にさらっと走り書きをしていく。
さて、出汁は何にしようか。昆布が良いか、鰹が良いか。それか合わせ出汁にしようか。魚のアラを使うのも良い。
前日に鰤の照り焼きを作って、その時に出たアラを残しておくか。軽く焙って臭みと余分な脂を飛ばし、香ばしさを付けた所で鍋の中で煮込んで出汁を取る。今の時期の鰤は旬であるから、アラであっても出てくる出汁は旨いはず。いや、旨くないわけがない。
多くは取れないし、何より手間がかかりすぎるため、これは兵員用の食事には向かないだろう。だが士官用の食事に使うのなら、問題は無かろう。
海軍の艦艇では、兵員用の食事と士官用の食事は分けられている。食事内容はもとより調理場まで士官用と下士官兵用で別れていたのだから、その徹底ぶりには一週回って脱帽せざるをえない。
「じゃあ遠慮なくここんとこ。馬鈴薯の味噌汁にしときますぅ」
「どうぞご自由に。それにしても、なぜ馬鈴薯なのでしょう」
ふとした疑問をぶつける。なぜ、睦郎はまた急に味噌汁に馬鈴薯を使うだとか言い出したのだろう。
大方の検討は付くが、それでもあえて口に出して聞いてみた。
「ああ、それやねんけどな」
「どうせ馬鈴薯が大量に余っているとか、そういう理由でしょう」
「……」
睦郎が急に何も言わなくなった。出鼻を挫かれたからだろうか。何も言えずに言葉を詰まらせている。
「無言は肯定とみなしますよ」
「……なんで判ったん……?」
「あ、本当のことだったのね」
しばらく無視されて手持ち無沙汰になっていた鶴田がトドメを刺していった。どうやら、馬鈴薯が大量に余っているのは本当のことらしい。なので、さっさと馬鈴薯を消費する献立を考えたかったのか。
「いやん……大量に余っとるんやったら、それを利用せぇへん手は無いで」
「そうですか。まあ、アナタがそれで良いというのならよろしいのでは」
赤岡は素っ気ない。いや、これはむしろ信頼なのではないか。料理のことについては、自分よりも睦郎の方が理解しているという。
「私は馬鈴薯の味噌汁など食べたことありませんが、アナタの味覚に委ねますよ」
「はぁい」
「に、してもなぁ……驚きだよ。赤岡さんあんた、馬鈴薯の味噌汁食べたこと無いんかい」
鶴田がむさ苦しい髭面でしげしげと赤岡の方を見てくる。
彼としては信じられなかったのだろうか。誰でも一回は馬鈴薯の味噌汁を食べたことがあるのだとばかり思っていたから。
「残念ながら、実家で味噌汁の具で根菜と言えば人参でしたのでね。馬鈴薯など、むしろ上京してから食べる機会が増えたとしか」
上京してから食べる機会が増えた。ということは、それ以前の……実家にいた頃の彼は、どのような食生活を送っていたのだろう。少し気になってしまうのも無理はない。
「そういや、赤岡さんのご実家って新潟にある病院やったっけ」
「ええ、そうですがなにか」
「へぇ。赤岡さんは結構良いところのお坊ちゃんだったんだな」
赤岡の生家は新潟で代々医師をやってきた家系だ。徳川幕府のころには、長岡藩お抱えの医師をしていたこともあったとか何とか。
ちなみに長岡藩とは現在での新潟県中越地方北部から下越地方西部にかけてを治めていた藩であり、後のGF司令長官である山本五十六元帥の故郷でもある。元帥の旧姓は「高野」であり、山本姓は養子に行った際に変わったものだ。閑話休題。
そんな家系に産まれたものだから、今まで良いものしか食べてこなかったのにも納得がいく。
「私は次男でしたし、上に優秀な兄がいたので後継ぎにはならなかったのですがね」
「へぇ。それで軍医に?」
「……」
今度は赤岡が沈黙する番だった。何か、言いたくないことでもあったのだろうか。
答えを言いあぐねているようで、視線を天井に向けたまま何か考え込んでいる。
主計兵が海兵団教育中の教科書として使用する『海軍主計兵調理術教科書』には、具は豆腐に油揚げと昆布またはワカメを使用した場合の味噌汁の調理法が書かれていた。なので、おそらくそれが海軍の味噌汁の基本形だったと想像できる。
当然、同教科書にはそれ以外の食材を具にした場合の、調理上での注意事項なども書かれていた。なので馬鈴薯を具に入れても、ここの烹炊員なら問題なく仕上げてくるだろう。なにせ「古鷹」の烹炊員は腕が良い。以前の鯖カレーの例にもあるように、変化球の献立が来てもむしろ燃え上がってくれるだろう。
「……馬鈴薯を、味噌汁に…………?」
「えっと、赤岡さん?」
しかし、どうした。赤岡は味噌汁に馬鈴薯など想像ができなかったのか、しきりに首を傾げているではないか。馬鈴薯など、大抵の料理に合うのだから味噌汁にだって入れたことくらいあるだろうに。
赤岡のその反応、もしや馬鈴薯の味噌汁は食べたことがないのか。いいや、もしくは嫌いだったのだろうか。気を使って鶴田がそっとフォローを入れる。
「あー……もしかしてなんだが、赤岡さんは嫌いなのかい? 馬鈴薯の味噌汁」
「……いえ、別に」
嫌いなわけでも無いようだ。なら、本当に食べたことが無いのだろうか。その、意外なものを見るような顔が謎を呼ぶ。
「……滋養、という面から見るならまあアリなのでは無いでしょうか」
「あら、そう?」
「私は馬鈴薯の味噌汁など食べたことが無いので、味については保証しかねませんが」
「って、食ったこと無いんかい」
鶴田が突っ込んだ。まさか本当に、馬鈴薯の味噌汁など食べたことも無かっただなんて。
馬鈴薯と言えば、一キロ十銭もいかない庶民の強い味方。そのくせ、野菜ではなく主食に分類されていることもあってかとにかく腹に溜まる。
おまけに癖の無い味は、大体の料理に合う。なのでついつい使ってしまうのだが、あまりにも続くと不満が出てくるので要注意。
「旨いやん……旨いねんで……馬鈴薯の味噌汁……」
眉をハの字にし、いじけたように両手の人差し指の先をツンツンとつつく。睦郎が心なしか、悲しそうな声を出した。
馬鈴薯を味噌汁に入れると、なぜかワカメがトロトロになる。気のせいなのか、それとも煮すぎているだけかもしれないが。
それはそれで旨いのだからしょうがない。味噌の風味と出汁の旨味を吸って舌の上で融けていくワカメもそうだが、馬鈴薯自体も柔らかくて歯でなくとも噛めるよう。
普通に調理した馬鈴薯はどうしても水分が足らずに口の中がパサつき、それが食べにくさの原因となってしまっていた。しかし、短冊切りにした上で出汁と一緒に煮込んだことによって馬鈴薯の欠点を打ち消して、なおかつトロトロほくほくの食感と濃縮された出汁が口の中で染みてくる。味噌汁に入れた馬鈴薯が旨いのは当然だろう。先にも述べた通り、馬鈴薯は癖の無い食材であるため、味噌汁の出汁を邪魔することもない。
「別に私が食べたことが無くとも、アナタや烹炊員が食べたことがあるのなら問題など無いでしょう」
「せやね」
料理の質とは、作る者が何を食べていたかで左右されるもの。食材の産地がどうとか、調理器具がどうとか。確かにそれらも十分重要なこと。だが、結局最後は、調理した者が食べた中で、最も旨い物が再現されて出てくるのだ。
旨い料理を食べたことが無い者に、旨い料理は作れない。それが睦郎の持論だった。
「じゃあ、馬鈴薯の味噌汁は木曜日の朝に持っていきますわ」
鉛筆で該当する箇所にさらっと走り書きをしていく。
さて、出汁は何にしようか。昆布が良いか、鰹が良いか。それか合わせ出汁にしようか。魚のアラを使うのも良い。
前日に鰤の照り焼きを作って、その時に出たアラを残しておくか。軽く焙って臭みと余分な脂を飛ばし、香ばしさを付けた所で鍋の中で煮込んで出汁を取る。今の時期の鰤は旬であるから、アラであっても出てくる出汁は旨いはず。いや、旨くないわけがない。
多くは取れないし、何より手間がかかりすぎるため、これは兵員用の食事には向かないだろう。だが士官用の食事に使うのなら、問題は無かろう。
海軍の艦艇では、兵員用の食事と士官用の食事は分けられている。食事内容はもとより調理場まで士官用と下士官兵用で別れていたのだから、その徹底ぶりには一週回って脱帽せざるをえない。
「じゃあ遠慮なくここんとこ。馬鈴薯の味噌汁にしときますぅ」
「どうぞご自由に。それにしても、なぜ馬鈴薯なのでしょう」
ふとした疑問をぶつける。なぜ、睦郎はまた急に味噌汁に馬鈴薯を使うだとか言い出したのだろう。
大方の検討は付くが、それでもあえて口に出して聞いてみた。
「ああ、それやねんけどな」
「どうせ馬鈴薯が大量に余っているとか、そういう理由でしょう」
「……」
睦郎が急に何も言わなくなった。出鼻を挫かれたからだろうか。何も言えずに言葉を詰まらせている。
「無言は肯定とみなしますよ」
「……なんで判ったん……?」
「あ、本当のことだったのね」
しばらく無視されて手持ち無沙汰になっていた鶴田がトドメを刺していった。どうやら、馬鈴薯が大量に余っているのは本当のことらしい。なので、さっさと馬鈴薯を消費する献立を考えたかったのか。
「いやん……大量に余っとるんやったら、それを利用せぇへん手は無いで」
「そうですか。まあ、アナタがそれで良いというのならよろしいのでは」
赤岡は素っ気ない。いや、これはむしろ信頼なのではないか。料理のことについては、自分よりも睦郎の方が理解しているという。
「私は馬鈴薯の味噌汁など食べたことありませんが、アナタの味覚に委ねますよ」
「はぁい」
「に、してもなぁ……驚きだよ。赤岡さんあんた、馬鈴薯の味噌汁食べたこと無いんかい」
鶴田がむさ苦しい髭面でしげしげと赤岡の方を見てくる。
彼としては信じられなかったのだろうか。誰でも一回は馬鈴薯の味噌汁を食べたことがあるのだとばかり思っていたから。
「残念ながら、実家で味噌汁の具で根菜と言えば人参でしたのでね。馬鈴薯など、むしろ上京してから食べる機会が増えたとしか」
上京してから食べる機会が増えた。ということは、それ以前の……実家にいた頃の彼は、どのような食生活を送っていたのだろう。少し気になってしまうのも無理はない。
「そういや、赤岡さんのご実家って新潟にある病院やったっけ」
「ええ、そうですがなにか」
「へぇ。赤岡さんは結構良いところのお坊ちゃんだったんだな」
赤岡の生家は新潟で代々医師をやってきた家系だ。徳川幕府のころには、長岡藩お抱えの医師をしていたこともあったとか何とか。
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