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第二週「肉じゃが」
(7)肉じゃがは海軍発祥の料理?
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「肉じゃが……」
それは現代でもお馴染みの料理。ほくほくの馬鈴薯に甘辛く炊かれた牛肉の旨味が沁みる一品。
実はこの料理、海軍が発祥とされているのだ。
「あぁー……そっか。肉じゃがは元帥が無理ゆうて作らせたモンが元になっとったんやっけ」
睦郎の脳裏に浮かんだのは、日露戦争の英雄である某元帥。海軍軍人の憧れ、生ける軍神……など、数多の呼び名を持って今なお讃えられる東郷平八郎元帥のことだった。
ちなみに日本では“元帥”は称号であるため、日本の軍人が与えられる最も高い階級は陸海共に“大将”までだ。なお、この“大将”の階級は陸海共に兵科将校(海軍は機関科将校も含めるが、機関科出身の中将が大将になった例は無い)のみに親任される階級なので、主計科や軍医科の将校が登り詰められるのは“中将”までである。
あくまで日本での話なので、諸外国ではまた事情も違うのだが。
「元帥はビーフシチューが食いたくて注文したんだけどなぁ。まさか、自棄で適当に調味料をぶっこんだ和製ビーフシチューもどきが、あんな旨い料理に変身するなんざ元帥もびっくりだっただろうなぁ」
「明治時代にあれを作れと料理人に無茶振りする元帥も元帥ですが、それを手元にある材料だけで再現しようとした料理人の努力も凄まじいものです」
「料理しとる側としての意見やけどな。その人はもっと讃えられてもええと思うで」
肉じゃが、という料理は。東郷元帥がある時、留学先の英国で食べたビーフシチューの味を恋しく思い、料理人に無茶振りして作って貰った料理が元になっている。
元帥も人の子。旅先で食べたものを想うことだってあるのだろう。
しかし、その当時は維新の風さえまだ遠退いていなかったような時代。ビーフシチューなるものを知らなかった料理人は、東郷元帥から聞いた話を元にして手元にあった材料だけでなんとか再現しようとした。
いや。再現しようとしたのだが、手を加えれば加えるほどまったくの別物になっていき……そうして出来上がった料理は、醤油と砂糖を使って味付けした馬鈴薯と牛肉を煮込んだもの。どう考えてもビーフシチューとは大きくかけ離れたものであった。
ところがこの料理、当たりかハズレかで言うと大当たりだったのである。
馬鈴薯と牛肉が入ったこの料理は栄養価としても満点。それに加えて醤油と砂糖で甘辛く煮たことで、まだ西洋食に慣れていない日本人の舌にも合うよう自然と改良されていた。さらに言えば、煮込み料理なので一度で大量に作って提供することさえできる。
兵食として、これ以上無いほど優秀な料理が誕生した瞬間だ。
東郷元帥が遠く離れた留学先に思いを馳せて作らせた和製ビーフシチュー。これこそが、後に肉じゃがの原型となる料理である。
────とまあ、これが肉じゃが発祥にまつわる都市伝説の概要だ。
実はこの一連の話は、東郷元帥に纏わる伝説の一種なのである。というのも、その当時には既にビーフシチューは日本に伝わり、洋食屋などで提供されていたからだ。
これを東郷元帥に料理を提供するような料理人が知らないはずがない。なので、肉じゃががビーフシチューの代用として産み出されたという説は成り立たなくなるのだ。
そもそもの話、現在「海軍の肉じゃが」として伝えられている料理は、当時は「甘煮」と呼ばれる料理だった訳で……少なくとも昭和五年の時点で「肉じゃが」に該当している料理は「豚肉と馬鈴薯の蝶煮」と呼ばれるもの。つまり豚肉を使用していたものであり、ビーフシチューの代用としては矛盾が生じてしまう。
なので、肉じゃがはビーフシチューの代用説は成り立たない。
では、いったいどこからそのような話が出てきたのだろうか。
ユーモアと法螺話が大好きな海軍のことだ。大方どこからともなく自然発生した噂話が、人から人へ渡っていく際に雪だるま方式で大きくなっていき、最終的にそのような都市伝説が作られたのだろう。
いずれにしても、肉じゃがが海軍で兵食として提供されていたことには代わりない。なお、肉じゃが自体は陸軍でも提供されていたが、ここは東郷元帥に敬意を表して発祥の地は海軍に譲ることにする。
「あのー……もしかして、なんですけどね。機関長、肉じゃがの話に持っていくために艦長の武勇伝を持ち出してきはったんどすか?」
「ハハハハ! バレたか!!」
「いや、あれだけ露骨だとバレて当然ではないかと」
どうやら鶴田は肉じゃがを食べたかったようだ。そのためにわざわざ艦長の日露戦争時代の逸話を持ち出してきて、そっちの話に誘導していったのだろうと思うと呆れ果てて物も言えない。
その艦長の逸話だって、ウソかマコトかまったく判らないのだが……これについての真相は艦長本人と、彼に騙されたとされている陸軍側の参謀たちの腹の中である。
「いやぁ、冷凍庫を修理している最中にうっかり牛肉の塊があったのが目に入っちまってなぁ。そういや最近、甘辛いのを全然食べとらんと思ったから、ダメ元で肉じゃがを提案してみたんだが……」
「あー……残念ですねんけど、その牛肉はビーフシチューに使おう思とった肉ですねん」
しかし睦郎も負けてはいない。申し訳のなさそうな表情をしつつ、そう簡単には乗せられないことをやんわりと……だが、決して口を挟ませぬという態度で示した。
睦郎は「古鷹」幹部の中で最年少で、しかも主計科と機関科という違いこそあれ階級は鶴田や赤岡よりも一つ下の少佐。
だが、それでも同じ艦で科長という責務を負っているのであれば、少なくとも自らの仕事への誇りと情熱については対等な立場である。
鶴田は機関科将校として積み重ねてきた技術力への矜持が、睦郎は主計科将校として時に心を氷のように凍らせながら何者にも平等に接してきたことへの矜持があるのだ。
その矜持を自らの手で折る真似などしない。
(ああ、なんだ。まだ庇護すべき存在だとばかり思っていたら……)
物腰穏やかだが毅然とした姿勢を見せる睦郎の姿を、赤岡は薄く口を開いてじっと眺めていた。
赤岡の中での睦郎は、二十年前のあの姿で止まっている。そう、睦郎がまだ成人さえしていない十代の若者だった、あの頃のままで。
だが、人というものは必ず成長するもの。赤岡が彼と離れることとなってから二十年の歳月が過ぎた。
その間に、彼はきっと赤岡も知らないようなことを見て聞いて経験してきたのだろう。意外なほどに頼もしい一面を見て安堵する反面、少しだけそれを寂しく思ったのは許してもらいたい。
「ううむ……そうかい……むつかしいことか……」
「まあ、それはそれとして肉じゃが食いたいのはおれも同じことどすえ」
いや、結局言うことを聞くのか。と、ずっこけそうになりながらも、なんとか持ち直した赤岡は眉間に寄ってしまった皺をぐっと指先で解す。
感心した矢先にこれである。成長しても、根っこの部分は一切変わっていないようだ。逆に安心してしまった。まったくこの男は、それほどの歳月を経ようとも赤岡を決して飽きさせない。
「……睦、アナタね」
「いやん……だってさぁ…………最近食うとらんかったし、話に出てきたら余計食いとおなるやん……」
「よし、良く言った!! そんじゃあ早速……」
「でもビーフシチューは外せまへんで」
今度は鶴田がガクッとずっこける番だった。
ほくほくの馬鈴薯がほどよく出汁を含んで、甘辛い醤油と砂糖でしっかり煮られた牛肉の凝縮された旨味を引き立てる肉じゃが。
濃い味のソースでしっかり煮込まれ、とろとろになった牛肉と融けた野菜の甘味が口いっぱいに広がるビーフシチュー。
本音で言うならどちらも食べたいというのが、食の街である大阪出身の睦郎らしいというか。
相変わらず食にかける情熱は健在のようだと、赤岡は冷めた目で睦郎を見ていた。
その視線を感じていた睦郎は、内心で茶目っ気たっぷりに舌を見せつつにっこり笑って誤魔化しておく。
だが、それを二つとも実現させようとすると、どうしても避けては通れぬ問題が現れる。
なにせ、食材は有限。特に牛肉は他の獣肉に比べても高いのだ。あまり多くの料理には割けられない。
問題は、決して多いとは言えない牛肉をどうやって上手く配分するか……である。
それは現代でもお馴染みの料理。ほくほくの馬鈴薯に甘辛く炊かれた牛肉の旨味が沁みる一品。
実はこの料理、海軍が発祥とされているのだ。
「あぁー……そっか。肉じゃがは元帥が無理ゆうて作らせたモンが元になっとったんやっけ」
睦郎の脳裏に浮かんだのは、日露戦争の英雄である某元帥。海軍軍人の憧れ、生ける軍神……など、数多の呼び名を持って今なお讃えられる東郷平八郎元帥のことだった。
ちなみに日本では“元帥”は称号であるため、日本の軍人が与えられる最も高い階級は陸海共に“大将”までだ。なお、この“大将”の階級は陸海共に兵科将校(海軍は機関科将校も含めるが、機関科出身の中将が大将になった例は無い)のみに親任される階級なので、主計科や軍医科の将校が登り詰められるのは“中将”までである。
あくまで日本での話なので、諸外国ではまた事情も違うのだが。
「元帥はビーフシチューが食いたくて注文したんだけどなぁ。まさか、自棄で適当に調味料をぶっこんだ和製ビーフシチューもどきが、あんな旨い料理に変身するなんざ元帥もびっくりだっただろうなぁ」
「明治時代にあれを作れと料理人に無茶振りする元帥も元帥ですが、それを手元にある材料だけで再現しようとした料理人の努力も凄まじいものです」
「料理しとる側としての意見やけどな。その人はもっと讃えられてもええと思うで」
肉じゃが、という料理は。東郷元帥がある時、留学先の英国で食べたビーフシチューの味を恋しく思い、料理人に無茶振りして作って貰った料理が元になっている。
元帥も人の子。旅先で食べたものを想うことだってあるのだろう。
しかし、その当時は維新の風さえまだ遠退いていなかったような時代。ビーフシチューなるものを知らなかった料理人は、東郷元帥から聞いた話を元にして手元にあった材料だけでなんとか再現しようとした。
いや。再現しようとしたのだが、手を加えれば加えるほどまったくの別物になっていき……そうして出来上がった料理は、醤油と砂糖を使って味付けした馬鈴薯と牛肉を煮込んだもの。どう考えてもビーフシチューとは大きくかけ離れたものであった。
ところがこの料理、当たりかハズレかで言うと大当たりだったのである。
馬鈴薯と牛肉が入ったこの料理は栄養価としても満点。それに加えて醤油と砂糖で甘辛く煮たことで、まだ西洋食に慣れていない日本人の舌にも合うよう自然と改良されていた。さらに言えば、煮込み料理なので一度で大量に作って提供することさえできる。
兵食として、これ以上無いほど優秀な料理が誕生した瞬間だ。
東郷元帥が遠く離れた留学先に思いを馳せて作らせた和製ビーフシチュー。これこそが、後に肉じゃがの原型となる料理である。
────とまあ、これが肉じゃが発祥にまつわる都市伝説の概要だ。
実はこの一連の話は、東郷元帥に纏わる伝説の一種なのである。というのも、その当時には既にビーフシチューは日本に伝わり、洋食屋などで提供されていたからだ。
これを東郷元帥に料理を提供するような料理人が知らないはずがない。なので、肉じゃががビーフシチューの代用として産み出されたという説は成り立たなくなるのだ。
そもそもの話、現在「海軍の肉じゃが」として伝えられている料理は、当時は「甘煮」と呼ばれる料理だった訳で……少なくとも昭和五年の時点で「肉じゃが」に該当している料理は「豚肉と馬鈴薯の蝶煮」と呼ばれるもの。つまり豚肉を使用していたものであり、ビーフシチューの代用としては矛盾が生じてしまう。
なので、肉じゃがはビーフシチューの代用説は成り立たない。
では、いったいどこからそのような話が出てきたのだろうか。
ユーモアと法螺話が大好きな海軍のことだ。大方どこからともなく自然発生した噂話が、人から人へ渡っていく際に雪だるま方式で大きくなっていき、最終的にそのような都市伝説が作られたのだろう。
いずれにしても、肉じゃがが海軍で兵食として提供されていたことには代わりない。なお、肉じゃが自体は陸軍でも提供されていたが、ここは東郷元帥に敬意を表して発祥の地は海軍に譲ることにする。
「あのー……もしかして、なんですけどね。機関長、肉じゃがの話に持っていくために艦長の武勇伝を持ち出してきはったんどすか?」
「ハハハハ! バレたか!!」
「いや、あれだけ露骨だとバレて当然ではないかと」
どうやら鶴田は肉じゃがを食べたかったようだ。そのためにわざわざ艦長の日露戦争時代の逸話を持ち出してきて、そっちの話に誘導していったのだろうと思うと呆れ果てて物も言えない。
その艦長の逸話だって、ウソかマコトかまったく判らないのだが……これについての真相は艦長本人と、彼に騙されたとされている陸軍側の参謀たちの腹の中である。
「いやぁ、冷凍庫を修理している最中にうっかり牛肉の塊があったのが目に入っちまってなぁ。そういや最近、甘辛いのを全然食べとらんと思ったから、ダメ元で肉じゃがを提案してみたんだが……」
「あー……残念ですねんけど、その牛肉はビーフシチューに使おう思とった肉ですねん」
しかし睦郎も負けてはいない。申し訳のなさそうな表情をしつつ、そう簡単には乗せられないことをやんわりと……だが、決して口を挟ませぬという態度で示した。
睦郎は「古鷹」幹部の中で最年少で、しかも主計科と機関科という違いこそあれ階級は鶴田や赤岡よりも一つ下の少佐。
だが、それでも同じ艦で科長という責務を負っているのであれば、少なくとも自らの仕事への誇りと情熱については対等な立場である。
鶴田は機関科将校として積み重ねてきた技術力への矜持が、睦郎は主計科将校として時に心を氷のように凍らせながら何者にも平等に接してきたことへの矜持があるのだ。
その矜持を自らの手で折る真似などしない。
(ああ、なんだ。まだ庇護すべき存在だとばかり思っていたら……)
物腰穏やかだが毅然とした姿勢を見せる睦郎の姿を、赤岡は薄く口を開いてじっと眺めていた。
赤岡の中での睦郎は、二十年前のあの姿で止まっている。そう、睦郎がまだ成人さえしていない十代の若者だった、あの頃のままで。
だが、人というものは必ず成長するもの。赤岡が彼と離れることとなってから二十年の歳月が過ぎた。
その間に、彼はきっと赤岡も知らないようなことを見て聞いて経験してきたのだろう。意外なほどに頼もしい一面を見て安堵する反面、少しだけそれを寂しく思ったのは許してもらいたい。
「ううむ……そうかい……むつかしいことか……」
「まあ、それはそれとして肉じゃが食いたいのはおれも同じことどすえ」
いや、結局言うことを聞くのか。と、ずっこけそうになりながらも、なんとか持ち直した赤岡は眉間に寄ってしまった皺をぐっと指先で解す。
感心した矢先にこれである。成長しても、根っこの部分は一切変わっていないようだ。逆に安心してしまった。まったくこの男は、それほどの歳月を経ようとも赤岡を決して飽きさせない。
「……睦、アナタね」
「いやん……だってさぁ…………最近食うとらんかったし、話に出てきたら余計食いとおなるやん……」
「よし、良く言った!! そんじゃあ早速……」
「でもビーフシチューは外せまへんで」
今度は鶴田がガクッとずっこける番だった。
ほくほくの馬鈴薯がほどよく出汁を含んで、甘辛い醤油と砂糖でしっかり煮られた牛肉の凝縮された旨味を引き立てる肉じゃが。
濃い味のソースでしっかり煮込まれ、とろとろになった牛肉と融けた野菜の甘味が口いっぱいに広がるビーフシチュー。
本音で言うならどちらも食べたいというのが、食の街である大阪出身の睦郎らしいというか。
相変わらず食にかける情熱は健在のようだと、赤岡は冷めた目で睦郎を見ていた。
その視線を感じていた睦郎は、内心で茶目っ気たっぷりに舌を見せつつにっこり笑って誤魔化しておく。
だが、それを二つとも実現させようとすると、どうしても避けては通れぬ問題が現れる。
なにせ、食材は有限。特に牛肉は他の獣肉に比べても高いのだ。あまり多くの料理には割けられない。
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