ピンクピッグファーム正直者にしか見えない発情期

結城空

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プロローグ

ピンクピッグファーム

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ピンクピッグファームに勤める大江レンはピンクのシャツ。
八ヶ岳山麓のサービスエリアでホワイトピンクの目立つ車から降りる。

若いフェロモンを嗅ぐわせる女性ファンが駆け寄る。

「レン！
そっちは見ないで。真っ直ぐ歩く！！」

フェアリーは、いつも煩いうるさい。
でも、ひきこもりから引きあげてくれたのは彼女だ。
この数ヶ月、ピンクの妖精はいつも近くにいる。

基本、レンはビジネスのため目立たなければならない。
しかし、ピンクファニーの言われるまま。レンはファンに軽い挨拶だけ。
ファーム以外のヒトは無視しなければならない。

彼の愛車は世界のT社を代表するコンパクトカーとして知られているツバイ。
これがセクシーラインにピンクカラーだから、やたら目立つ。

元ひきこもりだから人気をマネーに結びつけるのは納得しているが、レンには不満もありそうだ。

大江レンの所属するファームの代表『未姫さん』はドイツのレーシングカーで有名なポルシ社の918に乗っている。

レンの仕事へのモチベーションはファームのオーナーがピンクの車で走る姿である。
その塗装はピンクピッグ。切れ味のいいファームブランドをあらわす。

未姫は口癖のように言う。
「ファッションとクルマは幸せのイメージを運ぶものよ。
しかし、幸せは見つけるものでなく、作り出すものだよ」

ファームとファッションやクルマは一見関係がないように見える。
しかしヒトは脳で、農場のブランディングランクが高まると認識すると、
食べるときにファームで育成したブランド肉の味のランクまで高まるという。
これは姫が委託している大学との共同研究で明らかになっている。

そのドイツのピンクピッグデザインを模倣したピンクの社用車がレンの愛車。

ピンクファームのアイドル達のヒップに似せた丸みのコンパクトカーが人の欲情をそそる。
むしろレーシングスタイルより、可愛い妖しさの方が日本人好みであろう。

妖しく美味い肉の部位がきれいに判別できる。
外観と、シックな内装のアジワイのギャップもよい。

「うーん、レン。
キクー・・・」

レンは昨日の車内での声を思い出す。
車内はショートカウンセリングでの、インナートリップの場にもなる。

星が降る夜、農場から下界を見下ろす夜景は、あれをする場所にもいい。
ピンクの花芯が潤っていた夜。
お土産のシミは後で取らないといけない。

少し話がズレたが、このファームのアイドルに似た丸みのコンパクトカーがファームのシンボル。
カッコイイ『食』。リアルでアピールできるフリーウェイは効果的な宣伝の場だ。

薄ピンクの裸体色はピンクピッグファームのブランドカラーだ。
ホワイトに近いピンクはサブカラーであるブラックのラインに映える。

ちなみに車体のブラックは点線で肉の部位ブロック分けのラインで使われている。
肉は全ての人の幸福度を高くする。アレとコレ、両方の欲が満たされる。

ファームのピンクピッグカーは一台として同じ塗装はない。
赤系から青みががったピンクまでピンク好きのファームのメンバーが塗装して人気度を勝負する。

毎年、世界のトップデザインカーにはミリオン単位の褒賞金が出る。
そして部位の分割も視点によって異なりインスタ映えする。

レンの人気はファームの種付けプロフェッショルとしての成長が、女性誌からサクセスストリーとして紹介されたためだ。

レンによる、心のひきこもり者への講演会は一年先まで予約満杯。

「レン？次の予定はいつ？・・」

マダムからの打診が途切れることがない。

そこではピンクカラーからのイメージトレニングで女性の心の隅を突く方法を実演する。
講演後はワークショップで心のチューニングをレンと一緒に試すこともできる。

もちろんリアルのひきこもり者やマイノリティの参加も多い。

女性は赤やピンク系にときめく。その深層真理の解明に、ピンクフェアリー（妖精）達の高音域の声が役立つ。
ボイストレーニングのように、下腹部をピンクファニーの音響に合わせることで適齢期の淑女はエクスタシーに浸れる。

数千のファームの淑女、レディの体験例。シークレットだったノウハウが公開され認知された。

大江レンが種付けのプロフェッショナルとして執筆した生活のコツ。若い女性向けの著書は１０冊に及ぶ。
キャッチは「ひきこもり若い女性に安全な絶頂へ」「未来志向S E X 心と身のバランス」など。

レンの鞄には一年先の予約まで埋まった種付けと講演予定が詰まったスケジュール表。オタクやオネエ系のファンも多い。

女性の未来への期待感を膨らませた彼の仕事は、ひきこもり大国の救世主としての期待もある。その激務へのプロローグを、大江レンのニート時代、ファーム人事による面談シーンから紹介しよう。

小さなピンクファニーたちが支えたピンクピッグファームの変革。
それは、レンのひきこもりの小部屋から始まった。