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ルイス④
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「本当にいいのか」
「はい。あなたを信頼しています」
「信頼してるかどうかも大切だろうが、ちゃんと具合が悪くなる前に言ってくれよ? お前の症状を悪化させたくない」
「はい」
「いくぞ」
「はい、準備はできてます」
フィンはそんなルイスを見ながらカメラを目の近くまで持ち上げた。それだけでルイスは歯を食いしばりながら体を強張らせる。ぎゅっと目も閉じている。準備なんてできてないだろうとフィンは思う。
「なぁ、アメリカの反応訊いたか」
ファインダーを覗く事なく、カメラを持ったままフィンは話しかけた。ルイスは固く閉じていた眼を薄っすら開いてフィンを見る。カメラは手にあるが動いていない。ほっとして応える。
「すごく評判がいいんです。監督もスタッフもみんな喜んでました。公開地域も増やそうと言う話も出ていて」
「頑張ったよな、俺」
「はい! それこそ自信をもってください」
「お前も頑張ったよ。ど素人だった俺をビシバシしごいてくれて、ほんと感謝してる」
「それ、嫌みで言ってます?」
「そんなわけない。お前がいたからやってこれたんだ。体調管理もセリフの練習相手も演技指導も、発音指導も。感謝してる」
素人と思えぬ度胸と演技力と表現力を発揮したのはフィンの方だとルイスは思った。でもこうして真っすぐに褒められるのも悪くなかった。
「お互い、頑張りましたよね」
フィンと色々なことを学び、一緒に成長してきたと思う。彼のマネージャーをすることができて良かったとルイスは改めて思った。途中シリルの過去を知り、あまりのショックに一週間逃避する事件を起こしてしまったが、トラウマも克服しつつあり、大スターの大きな一歩を手伝えた。映画は大ヒットの予感しかしないし、これから全世界にフィン旋風を巻き起こすのだ。
「あなたのマネージャーになれて光栄です」
「え?」
「これからは世界のフィン・リーですね」
誇らしげにそう微笑むルイスの顔を、フィンが不意打ちでパシャリと切り取った。
「いい顔してたよ」
そういって撮った画像を見せた。
ルイスは初めて自分の顔が邸の玄関に置いてある曾祖父によく似ていると思った。愛おしいものを見るような優しい瞳。自然と零れる笑み。
「僕じゃないみたいです」
「お前だよ」
「こんな笑顔初めて見ました」
「俺もだよ」
ルイスの瞳を覗くようにフィンは顔を近づける。ルイスは何度も瞬きをした。
「あ、あの……」
「うん?」
フィンの顔がどんどん近くなる。これ以上近づくっていうのは、近くなるってことは……。
ルイスの耳がどんどん真っ赤に染まっていく。
これ以上目を開けていられないと目を閉じて覚悟をした時、
「カシャ」
またシャッターが切られた。
「お前、カメラ大丈夫かもな」
フィンがそういって顔の前に持ってきたカメラを指差した。
ルイスはフルフルと肩を震わせる。何かに期待をした自分がとても恥ずかしくていたたまれなかった。
「今日はもうおしまいです!」
いきなり怒り出したルイスを見てフィンは開いた口がふさがらなかった。
「俺なんか悪いことした?」
「何も!」
「怒ってんじゃねぇかぁ。なぁ」
「疲れてるんでしょ! もう寝てください!」
ルイスはしばらく不機嫌なままだった。
「はい。あなたを信頼しています」
「信頼してるかどうかも大切だろうが、ちゃんと具合が悪くなる前に言ってくれよ? お前の症状を悪化させたくない」
「はい」
「いくぞ」
「はい、準備はできてます」
フィンはそんなルイスを見ながらカメラを目の近くまで持ち上げた。それだけでルイスは歯を食いしばりながら体を強張らせる。ぎゅっと目も閉じている。準備なんてできてないだろうとフィンは思う。
「なぁ、アメリカの反応訊いたか」
ファインダーを覗く事なく、カメラを持ったままフィンは話しかけた。ルイスは固く閉じていた眼を薄っすら開いてフィンを見る。カメラは手にあるが動いていない。ほっとして応える。
「すごく評判がいいんです。監督もスタッフもみんな喜んでました。公開地域も増やそうと言う話も出ていて」
「頑張ったよな、俺」
「はい! それこそ自信をもってください」
「お前も頑張ったよ。ど素人だった俺をビシバシしごいてくれて、ほんと感謝してる」
「それ、嫌みで言ってます?」
「そんなわけない。お前がいたからやってこれたんだ。体調管理もセリフの練習相手も演技指導も、発音指導も。感謝してる」
素人と思えぬ度胸と演技力と表現力を発揮したのはフィンの方だとルイスは思った。でもこうして真っすぐに褒められるのも悪くなかった。
「お互い、頑張りましたよね」
フィンと色々なことを学び、一緒に成長してきたと思う。彼のマネージャーをすることができて良かったとルイスは改めて思った。途中シリルの過去を知り、あまりのショックに一週間逃避する事件を起こしてしまったが、トラウマも克服しつつあり、大スターの大きな一歩を手伝えた。映画は大ヒットの予感しかしないし、これから全世界にフィン旋風を巻き起こすのだ。
「あなたのマネージャーになれて光栄です」
「え?」
「これからは世界のフィン・リーですね」
誇らしげにそう微笑むルイスの顔を、フィンが不意打ちでパシャリと切り取った。
「いい顔してたよ」
そういって撮った画像を見せた。
ルイスは初めて自分の顔が邸の玄関に置いてある曾祖父によく似ていると思った。愛おしいものを見るような優しい瞳。自然と零れる笑み。
「僕じゃないみたいです」
「お前だよ」
「こんな笑顔初めて見ました」
「俺もだよ」
ルイスの瞳を覗くようにフィンは顔を近づける。ルイスは何度も瞬きをした。
「あ、あの……」
「うん?」
フィンの顔がどんどん近くなる。これ以上近づくっていうのは、近くなるってことは……。
ルイスの耳がどんどん真っ赤に染まっていく。
これ以上目を開けていられないと目を閉じて覚悟をした時、
「カシャ」
またシャッターが切られた。
「お前、カメラ大丈夫かもな」
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「俺なんか悪いことした?」
「何も!」
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「疲れてるんでしょ! もう寝てください!」
ルイスはしばらく不機嫌なままだった。
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