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ドキュメンタリー
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アンディは気分が乗らず翌日のワイナリーの見学は結局断った。シリルの憂いを知った今、どうにかしてあげたかったが直ぐに思いつく策もなく、呑気にこの場所で楽しそうにする気分にはなれなかった。ルイスとシリルに自分の連絡先を渡し、些細な事でも話したくなったら遠慮無く連絡する様にと二人に伝えるとシリルは話してしまった事を後悔している様な、でも秘密を共有してくれる人が出来てどこか心持ち陰りを薄くした様な、はに噛んだ笑みを返して御礼を言った。
夜を超えて自分の知らない間に距離を縮めた二人を見てルイスはシリルを問い詰めた。彼もまたシリルを心配していた。
ジョシュは遅くに帰って朝早く出てしまったらしく挨拶が出来なかったが、レナにくれぐれも宜しく伝えて下さいとおもてなしに感謝をし、三人に見送られてアンディはパリに戻った。
*
その日予定していた恋人ミシェルとのデートも断り一人ホテルの部屋で互いを気遣い合う二人の少年のこれからにアンディは考えを巡らせた。
シリルがルイスの側に居る限りシリルはルイスを守ろうとする。彼は誰かがルイスに手を出そうとする度に自己犠牲を払おうとするのだからルイスから引き離すのがいいのか。だが引き離して万が一ルイスに何か起これば自分が守らなかった所為なのだとまた自分を責めるかも知れない。留年でもしない限り彼が先に大学に入ってしまうのだから、どの道離れてしまうだろうに、いつまでルイスを守るつもりだろう。もしかして本当に一生を棒に振るつもりなのか?いやそんな馬鹿なと頭を振るが、自分の体さえ明け渡してしまう程ルイスが大事なのだ、やり兼ねない。どうすればいいんだと逡巡する思考を遮る様に電話が鳴った。
「なに」
『アンディ、仕事です。ドキュメンタリーを撮りたいとフランスのTV番組からオファーが来ました。出来ればロングスパンで撮りたいと言ってます。男性モデルでここまで有名になった人も珍しいし、アンディ・クローの一年という設定だから長期に渡る密着取材になります。ギャラは申し分有りません。一年を通して仕事をしながらだからプライベートにもカメラが入りますが大きな仕事です、受けますか?』
アンディは飛び付いた。
「それだよ!」
『えっ?』
「受けるよ、喜んで!」
『わかりました』
ルイスを守れて、シリルに犠牲を払わせない方法。これだ。マネージャーからの仕事を二つ返事でOKし、この滅多にないチャンスを使って二人を護る計画を立てて実行に移した。
*
間も無くして撮影が始まるとカメラが仕事の度にアンディに付いて回る様になり休日にも撮影が入った。レナ達に許可を貰いフランスに居る時はルイス達を頻繁に訪れた。ワイナリーが映像に入ることもあり、それは彼らにとっても良い宣伝となるので有り難がられた。
ルイスに撮影現場を見てもらう事でこの業界に興味を持ち続けてもらうという相乗効果も期待できるこの目論見はうまく進んだ。彼等の周りに業界の人間が長期間に渡り彷徨くことでいつ撮影されているのか判らないと言う不安を、ルイスを取り巻く連中にしっかりと植え付ける事ができたからだ。カメラマン達や取材のディレクター達にはアンディの親戚としてシリルとルイスを紹介し、未成年である事から二人を決して映さないと約束させ、特にルイスはカメラを向けられると卒倒するから気をつける様に注意を払った。彼らと一緒に休暇を過ごす場合カメラは結局中には入り込めず遠巻きに常に人が周りにうろつく事になり、ルイスに変なちょっかいを出す者も居なくなっていた。撮影クルーは美しいものに慣れているし、アンディの親戚と言われてルイス達に変な気を起こすものは居ない。寧ろ撮影がうまく運ぶ様にと彼らを見守る役割を担ってくれた。
休みは週末に限らず平日の時もある。そんな時は彼らを迎えに高校へも意図して顔を出した。勿論撮影クルーも一緒に行動するから、沢山の学生達が集まり先生達も出てきてどうしたのかと事情を聞かれる。実は親戚なんですよ二人とも、とクルー達についた同じ嘘を話しそして心酔してくれそうな先生を捕まえると僕の可愛い弟分の二人をどうか頼みますとアンディはしおらしくお願いした。ルイスはその美貌をやっかまれて虐められ、シリルはルイスを守りたくていつも奮闘しているのですと密かに説明すると先生も思い当たる節があるようで、ここぞとばかりに目を輝かせて協力を惜しまないと言った。アンディは営業用スマイルを思い切り振り撒き二人の周りにどんどん味方を増やして行った。しばらくするといじめや嫌がらせがなくなったとルイスが話した。
いつクルーが撮影しに来るか分からないと言う状況はルイスへ邪な考えを持つ者を遠ざけてシリルは生き生きとしだした。まるで繋がれていた仔犬が自由を与えられて庭を駆け回る様にシリルはルイスを心配せずに出かける様になった。シリルがルイスの傍に居なくても誰も彼を虐めたりしない、そしてシリルも体を張ってルイスを守る必要もなくなっていた。メディアの力は絶大だった。
『ねぇアンディ、シリルは今週もパリへ行ったんだよ』
ルイスは電話越しに愚痴った。
「良い事だよ、ずっと田舎に居たんじゃこれから入る大学で皆の話についていけないかもしれない。少しは都会に出て遊ばないと」
アンディは電話でルイスを宥めたが実は内心同じように寂しかった。秘密を知られているのだから気後してしまうのかもしれないが、パリにいるのにシリルに頼られないのは何だか避けられているような気分だった。
『僕もシリルと一緒にパリで遊びたい』
ルイスは単純にシリルと居たいだけなのだけれど、シリルにとってそれは心労の始まりとなってしまう。アンディはやんわりとそれを抑止した。
「僕の所へおいで、色んな所へ連れて行ってあげる」
『本当?!それ最高!』
「したい事があれば何でも言ってよ。喜んでサポートするさ、僕の可愛い弟達の為なら」
こうしてシリルと距離が出来たルイスはアンディとパリで遊ぶ事が増えた。モデル仲間達とのパーティーや撮影の現場に連れて行ったり、全然勝負にならなかったけれどチェスの相手をしたりと、沢山の時間を一緒に過ごす様になると自然と心が近づいた。それはまるで歳の離れた弟が出来た様な気持ちでもあり、どこか例えようの無いくすぐったい感覚で、庇護欲をそそられた。
撮影のクルー達も二人と仲良くなり、アンディが頻繁に田舎の彼らを訪れる理由に気づき始めていた。
「アンディ、結局あの子達を守る為に毎回此処へ来てたんだろう?」
「ははっ、バレたか。だってね、本当に二人とも大切になってしまったんだ。シリルを見て感じただろう、ルイスに近づく人達への警戒心の強さ。まるで近づくものを全て排除しそうな勢いでずっと薔薇を心配している王子様だよ、いじらしくて危なげで……二人が心配だったんだ、皆のお陰でもうそんな心配も要らなさそうだけどね」
「いい子達だけど、仕事と田舎の往復ばかりで君のセクシーなプライベートが全然取れてない。これじゃ視聴者はドキドキしないぜ。これは君のドキュメンタリーなんだ。親戚の坊やたちと戯れる映画なんて大衆は求めてない。そろそろミシェルとのデートを撮らせてよ。付き合ってるのにこんなにほったらかしじゃぁ彼女も可哀想だ。それに色恋沙汰のないノンフィクションなんて存在しないぜ」
ディレクターの言う事にも一理あり、アンディは要望に応じてミシェルとのデートの撮影許可をした。だがミシェルはデートが仕事の一環である事に腹を立てて、それが何度か続くと喧嘩になり結局別れる事になってしまった。
呆気なく振られたアンディの傍で煙を揺蕩わせながらディレクターはぼやいた。
「演技力が足りなかったな、アンディ。今の君の頭の中に彼女が居ないのがカメラ越しの俺達にも丸分かりだったぜ?そりゃ彼女も怒るさ」
「僕は彼女の事好きだったんだけどな……」
口からはそんな言葉が出たが、心の中にもうミシェルの影は無くなってしまっていた。目の離せない二人の少年の行く末ばかりが気になって、自分の事をいつも一番に気に掛けてくれなければ満足しない彼女に興味を削がれていた。自覚のなさに頭を振ってディレクターは溜息をついた。
「こりゃ重症だな。シリルはもうすぐ十八だけど、ルイスはまだ未成年、二人とも綺麗な造形をしていても男の子だよ、頭を冷やせ。このドキュメンタリーがアンディ・クローの性の覚醒、なんてタイトルになったらファンが泣くぜ」
「……馬鹿な事言わないでくれ、僕はこう見えてちゃんと大人なんだから」
そう、思っていた。
夜を超えて自分の知らない間に距離を縮めた二人を見てルイスはシリルを問い詰めた。彼もまたシリルを心配していた。
ジョシュは遅くに帰って朝早く出てしまったらしく挨拶が出来なかったが、レナにくれぐれも宜しく伝えて下さいとおもてなしに感謝をし、三人に見送られてアンディはパリに戻った。
*
その日予定していた恋人ミシェルとのデートも断り一人ホテルの部屋で互いを気遣い合う二人の少年のこれからにアンディは考えを巡らせた。
シリルがルイスの側に居る限りシリルはルイスを守ろうとする。彼は誰かがルイスに手を出そうとする度に自己犠牲を払おうとするのだからルイスから引き離すのがいいのか。だが引き離して万が一ルイスに何か起これば自分が守らなかった所為なのだとまた自分を責めるかも知れない。留年でもしない限り彼が先に大学に入ってしまうのだから、どの道離れてしまうだろうに、いつまでルイスを守るつもりだろう。もしかして本当に一生を棒に振るつもりなのか?いやそんな馬鹿なと頭を振るが、自分の体さえ明け渡してしまう程ルイスが大事なのだ、やり兼ねない。どうすればいいんだと逡巡する思考を遮る様に電話が鳴った。
「なに」
『アンディ、仕事です。ドキュメンタリーを撮りたいとフランスのTV番組からオファーが来ました。出来ればロングスパンで撮りたいと言ってます。男性モデルでここまで有名になった人も珍しいし、アンディ・クローの一年という設定だから長期に渡る密着取材になります。ギャラは申し分有りません。一年を通して仕事をしながらだからプライベートにもカメラが入りますが大きな仕事です、受けますか?』
アンディは飛び付いた。
「それだよ!」
『えっ?』
「受けるよ、喜んで!」
『わかりました』
ルイスを守れて、シリルに犠牲を払わせない方法。これだ。マネージャーからの仕事を二つ返事でOKし、この滅多にないチャンスを使って二人を護る計画を立てて実行に移した。
*
間も無くして撮影が始まるとカメラが仕事の度にアンディに付いて回る様になり休日にも撮影が入った。レナ達に許可を貰いフランスに居る時はルイス達を頻繁に訪れた。ワイナリーが映像に入ることもあり、それは彼らにとっても良い宣伝となるので有り難がられた。
ルイスに撮影現場を見てもらう事でこの業界に興味を持ち続けてもらうという相乗効果も期待できるこの目論見はうまく進んだ。彼等の周りに業界の人間が長期間に渡り彷徨くことでいつ撮影されているのか判らないと言う不安を、ルイスを取り巻く連中にしっかりと植え付ける事ができたからだ。カメラマン達や取材のディレクター達にはアンディの親戚としてシリルとルイスを紹介し、未成年である事から二人を決して映さないと約束させ、特にルイスはカメラを向けられると卒倒するから気をつける様に注意を払った。彼らと一緒に休暇を過ごす場合カメラは結局中には入り込めず遠巻きに常に人が周りにうろつく事になり、ルイスに変なちょっかいを出す者も居なくなっていた。撮影クルーは美しいものに慣れているし、アンディの親戚と言われてルイス達に変な気を起こすものは居ない。寧ろ撮影がうまく運ぶ様にと彼らを見守る役割を担ってくれた。
休みは週末に限らず平日の時もある。そんな時は彼らを迎えに高校へも意図して顔を出した。勿論撮影クルーも一緒に行動するから、沢山の学生達が集まり先生達も出てきてどうしたのかと事情を聞かれる。実は親戚なんですよ二人とも、とクルー達についた同じ嘘を話しそして心酔してくれそうな先生を捕まえると僕の可愛い弟分の二人をどうか頼みますとアンディはしおらしくお願いした。ルイスはその美貌をやっかまれて虐められ、シリルはルイスを守りたくていつも奮闘しているのですと密かに説明すると先生も思い当たる節があるようで、ここぞとばかりに目を輝かせて協力を惜しまないと言った。アンディは営業用スマイルを思い切り振り撒き二人の周りにどんどん味方を増やして行った。しばらくするといじめや嫌がらせがなくなったとルイスが話した。
いつクルーが撮影しに来るか分からないと言う状況はルイスへ邪な考えを持つ者を遠ざけてシリルは生き生きとしだした。まるで繋がれていた仔犬が自由を与えられて庭を駆け回る様にシリルはルイスを心配せずに出かける様になった。シリルがルイスの傍に居なくても誰も彼を虐めたりしない、そしてシリルも体を張ってルイスを守る必要もなくなっていた。メディアの力は絶大だった。
『ねぇアンディ、シリルは今週もパリへ行ったんだよ』
ルイスは電話越しに愚痴った。
「良い事だよ、ずっと田舎に居たんじゃこれから入る大学で皆の話についていけないかもしれない。少しは都会に出て遊ばないと」
アンディは電話でルイスを宥めたが実は内心同じように寂しかった。秘密を知られているのだから気後してしまうのかもしれないが、パリにいるのにシリルに頼られないのは何だか避けられているような気分だった。
『僕もシリルと一緒にパリで遊びたい』
ルイスは単純にシリルと居たいだけなのだけれど、シリルにとってそれは心労の始まりとなってしまう。アンディはやんわりとそれを抑止した。
「僕の所へおいで、色んな所へ連れて行ってあげる」
『本当?!それ最高!』
「したい事があれば何でも言ってよ。喜んでサポートするさ、僕の可愛い弟達の為なら」
こうしてシリルと距離が出来たルイスはアンディとパリで遊ぶ事が増えた。モデル仲間達とのパーティーや撮影の現場に連れて行ったり、全然勝負にならなかったけれどチェスの相手をしたりと、沢山の時間を一緒に過ごす様になると自然と心が近づいた。それはまるで歳の離れた弟が出来た様な気持ちでもあり、どこか例えようの無いくすぐったい感覚で、庇護欲をそそられた。
撮影のクルー達も二人と仲良くなり、アンディが頻繁に田舎の彼らを訪れる理由に気づき始めていた。
「アンディ、結局あの子達を守る為に毎回此処へ来てたんだろう?」
「ははっ、バレたか。だってね、本当に二人とも大切になってしまったんだ。シリルを見て感じただろう、ルイスに近づく人達への警戒心の強さ。まるで近づくものを全て排除しそうな勢いでずっと薔薇を心配している王子様だよ、いじらしくて危なげで……二人が心配だったんだ、皆のお陰でもうそんな心配も要らなさそうだけどね」
「いい子達だけど、仕事と田舎の往復ばかりで君のセクシーなプライベートが全然取れてない。これじゃ視聴者はドキドキしないぜ。これは君のドキュメンタリーなんだ。親戚の坊やたちと戯れる映画なんて大衆は求めてない。そろそろミシェルとのデートを撮らせてよ。付き合ってるのにこんなにほったらかしじゃぁ彼女も可哀想だ。それに色恋沙汰のないノンフィクションなんて存在しないぜ」
ディレクターの言う事にも一理あり、アンディは要望に応じてミシェルとのデートの撮影許可をした。だがミシェルはデートが仕事の一環である事に腹を立てて、それが何度か続くと喧嘩になり結局別れる事になってしまった。
呆気なく振られたアンディの傍で煙を揺蕩わせながらディレクターはぼやいた。
「演技力が足りなかったな、アンディ。今の君の頭の中に彼女が居ないのがカメラ越しの俺達にも丸分かりだったぜ?そりゃ彼女も怒るさ」
「僕は彼女の事好きだったんだけどな……」
口からはそんな言葉が出たが、心の中にもうミシェルの影は無くなってしまっていた。目の離せない二人の少年の行く末ばかりが気になって、自分の事をいつも一番に気に掛けてくれなければ満足しない彼女に興味を削がれていた。自覚のなさに頭を振ってディレクターは溜息をついた。
「こりゃ重症だな。シリルはもうすぐ十八だけど、ルイスはまだ未成年、二人とも綺麗な造形をしていても男の子だよ、頭を冷やせ。このドキュメンタリーがアンディ・クローの性の覚醒、なんてタイトルになったらファンが泣くぜ」
「……馬鹿な事言わないでくれ、僕はこう見えてちゃんと大人なんだから」
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