オッドアイの守り人

第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

一人で

「よくもまぁ一人でノコノコと。舐められたもんだな。…さぁ、仕事は終わりだ。これからは俺のお楽しみの時間だ。」

　男は恍惚として言った。

「おい、ジェシカを離せ！それが条件だろう！」

「誰が解放してやるって言ったんだ？子供は連れて行くんだよ。この契約書の確認が取れるまでな。」

「約束が違うだろう！！？」

　くそっ！やっぱりそんなに簡単には行かないか。

「クックックッ、約束なんてして無いね。俺は依頼主に頼まれた事をするだけだ。今回の仕事は楽しいぜ。子供は契約が正式に締結するまで手は出せないが、お前みたいな綺麗な顔した人間をズタボロに出来て大金貰えるんだからなぁ…。俺には良い事づくめだ。恨むなら俺を雇った血も涙もない企業を恨むんだな。何せお前はこの国に存在しない人間らしいから、俺達も気兼ねなく楽しめるってもんだ。」

「——何故それを！？俺の事を調べたのか？」

「あぁ、どう調べても、大使館で名前を聞いても渡航履歴はないらしいじゃねぇか、密入国でもしたのか？まぁ関係ねぇけど、俺達の邪魔になるんだから消してしまう事に変わりはない。それにお咎めなしの存在となりゃこんな楽な事はねぇ。死体の後始末も海に掘り投げたら終わりだ。」

　そう言ってどこからか取り出した鋭いナイフの先を指先で確かめて、刃をゆっくり撫で、手下に持って来させたイスに座った。俺が近づかない限りサイという男を洗脳するのは無理だ。

　男が座ると同時に俺を挟む様に三人駆け寄りそれぞれに腕を捕らえられ広げられると、もう一人は背中から俺を羽交い締めにした。

「痛みに悶える姿が好きでな…。少しずつ、その綺麗な顔が目を背けたくなる程グチャグチャになって行く様を見たい…。まずは鬱憤が溜まっている部下達の相手をしてもらおうか。」

　羽交い締めにされた俺の目の前に手下の一人がサバイバルナイフを持って立ちはだかり、俺のシャツの胸元に刃を当てると、ビリビリとそのまま手前に引っ張って破っていった。