オッドアイの守り人

第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

あの人

会話を聞いてジェシカの血の気が引いていく。リーダー格の男は彼らを一喝した。

「書類が手に入るまで手ェ出すなって言ってんだろうが！これはお前らの遊びじゃなくて大金掛かった仕事なんだよ。あの人の怖さ知ってんだろうが！万が一交渉に失敗でもしたらお前らだけじゃなくて俺まで海の底だ！」

　あの人と言われて男達の空気が張り詰める。

「でも…あの人偵察だけして後は俺らに任せきりだぜ？今日もどこ行ってるんだか。人質の交渉は全部あの人がするけど、自分の手は汚さねぇんだから、俺たちに少しお零れがあってもいいよな？」

「止めとけって。」
　もう一人の男も止めようとするが聞かなかった。

「あの人が来るまでに元に戻しておけば良いんだろう？丁度スカート履いてんだし、口も目も塞いである…バレねぇよ、なぁ？」

　男はイスから立ち上がり、ジェシカへ少しずつ近づいた。

　ジェシカはジリジリ近づく悪い予感に震えが止まらない。目隠しされている布から涙が流れ、苦しそうに呼吸した。

「そんなに泣かなくても大丈夫だって。いい子にしてたら生かして貰える様に言っといてやるから、な？」

　一人の男が座っているジェシカの腰を持ち、柱に沿って立たせると後ろ姿を上から下まで舐め回す様に眺めた。

　そしてスカートの下の膝から太ももを素手で嫌らしく撫でると、目をギラギラさせた。悍おぞましい不快感にジェシカは声にならない声で叫ぶ。

「ウグゥッ！ンンンンッ！ンンッ！」

　叫ぶ声が倉庫内に響き渡るとほぼ同時に、西側の前方のドアが開いた。

　ドアがギィと開き、バシンッと閉まると何人もの足音がした。

「あの人だ、止めろ…。」