オッドアイの守り人

第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

ドラマ

海「ワンさんの部屋のドアには無理やりこじ開けた形跡はなかったから、奴らがきた時にジェスが知らずにドアを開けたんだろうと思う。

無防備な彼女を拉致して、火事騒ぎをその後起こせば、皆んな消火活動に必死になってジェスを連れ去られる所を誰にも見られずに済む。

裏側の店舗での火事側に人が集まれば表から堂々と逃げる事が出来る。火事だから口を抑えていても不自然じゃないしな。だから誰も彼女が連れ去られる現場を見て居ないんだ。」

　カイの推理は的を得ていた。火事の時系列から言って間違い無いと思う。


　フ「火事を起こさせるのが目的じゃなくて始めからジェスが目的だったのか？」

　海「いや、火事もきっと住人やワンさんを怖がらせる手段の一つなんだろうが、ジェスを人質に取って一気にこのビルの契約を締結させるつもりだろう。ですね、ワンさん？」


　昨日から動かなかったのはこれを予想していたからか…。まさか誘拐されているとは思わなかった。なんて事だ…。

　ワンさんはうんうんと絶望した顔で頷き、自分がメモ書きした紙を震える手でカイに渡した。

　海「この住所、港のコンテナ置き場ですね…。」

　フ「どういうことだ？」

　王「ここにサインした契約書を持って今日を含めて三日以内に来いと言われたんだ…ジェスの命と引き換えだと…。」

　フ「何だって？！早く警察に連絡を！」

　王「駄目なんだ、警察に連絡したら娘を殺すと言われた…。カイ、力を貸してくれないか…。このビルはどうなってもいい、ジェシカを無事に取り戻したい。」

　海「勿論です、ワンさん…。命に代えてもジェスを連れ戻します。」

　フ「おいっ！待てよ！警察に連絡する以外ないだろ？火炎瓶を投げてくるような奴らだ、危険だ。しかも誘拐なんて、どう考えても俺らじゃ太刀打ちできない！」


　海「だからだよ。嫌がらせをしてきたのはこのビルを買い取りたいという業者だろう。火炎瓶なんて危険なものを使うって事は人が怪我する事なんて何とも思ってない証拠だ。誰がやったか丸わかりなのに、ジェスまで誘拐して契約を急がせている。

指揮を取っている奴は気が短かそうだが、ジェスの誘拐を誰にも見られずに実行するほどの手管だ。既に犯罪に手を染めている奴か、この道のプロが実行していると思う。

そうなるとジェスの事も単なる脅しで済むとは思えない。警察に連絡をする事は避けるべきだ。」



　言われた事の深刻さに衝撃が走る。本当にそんなテレビドラマみたいな事が現実に起こるのか？これは何かのドッキリなんじゃないか？殺すだの、どうのって…。